インディー(68)



と、言ったものの
なんだか気が重い

犯罪の臭いが薄い仕事とは言え
ヤクザの下請け仕事である

しかも、交通費、その他、一切出ないばかりか、配当すらない

ヤベの尻ぬぐいか?仕方ないわな
と言い聞かせてみても

当の本人は
ベッドの上でのんきにMDを聴いてやがる

少し腹が立って来た


こんな時は、一杯ひっかけるに限ると
梅田の地下街の立ち飲み屋でビールとドテ焼きを注文した。


それでも、まだ、気分が乗って来ない。

誰か、連れでもいればなあと心細くなる。

気分が乗って来ないのは、うっとうしい天気のせいかも知れない


大阪ヒルトンのトイレに入って鏡の前で、いろいろ表情を作ってみる。


怖い顔でいかんとあかんなあ
とか思いがら


御堂筋線で心斎橋まで


大丸地下で缶ビールを買い、歩きながら飲む


カフェに入り、カプチーノで時間を潰す。


ブルゾンのポケットから、店のリストを取り出して眺める

どこらへんから行こうか・


店が多すぎて
迷ってしまう


そろそろ7時か・


取り敢えず近場の店から攻めることにした


酔っ払ってるふりして店に入ろう

声のデカさなら自信がある

雑居ビルに入り、明かりの付いている店のドアを開けた。


ドアからは想像できないくらいピカピカの店。

「いらっしゃいませ!」

和服をパリッと着込んで化粧もバッチリ決めたママが、あいそよくお絞りを出してくれた。


わざと酒臭い息をママに吹きかけながら
「取り敢えずビール!」


「もう、お食事は済ませてきはったんですか?」
とあいそをするママを無視してコップに注がれたビールを飲み干す。


(どうやら用心棒のボーイとかは店内にいないようだ。他の子もまだ出勤前)


(そろそろ、かまさないと・)


「この店、なんか臭いで・」
ボソリと言う。

「エッ!」
と驚くママ。


「こんな小便臭い店で飲んどられへんわ!」

「ほかで飲み直しや!」

威勢よく立ち上がってドアをあけて出た


鉄砲玉を食らったような目をしたママの顔がおかしかった。


店を出た後は、走って逃げた。

逃げる必要なんてあっただろうか?


やったぁ
というようなイタズラ小僧が、はかりごとを成功させたときのような気分。


なんだか高揚感がこみ上げて来た。


誰かに報告せずにはおられない気分。


ヤベではなく、2号に電話し



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