インディー(136)



「そしたら?」

「私は、なんでも素早く食べてしまう癖があるだとさ」

「それで?」

「私は、最近は毎日のように花ズッキーニを食べているが、根がエッチなので、めしべだけは、ゆっくり味わいながら食べるようにしてやるって言ってやったよ」

「そしたら?」

「大笑いしてやがった」

「ふうん」

「そこから、いろいろ、蘊蓄話が始まって、お茶漬けの茶は、静岡産でないといかんとか、うだうだ話しやがるの」

「それで?」

「なんでかって聞いたら、和食にはミネラルが欠乏しているから、潮風の当たった茶葉で補ってやる必要があるんだとさ!」

「なんだか、付き合いにくそうな人ね」

「おだてりゃ、乗って来るよ。」

「そう」


「関西のタウン情報誌とかにも太いパイプ持ってるしね」

「そう。放送作家の伊原さんは、どんな人?」

「藤沢常務の腰巾着」

「子分なんだ」

「そうそう」

「役に立ちそうなの」

「新人の女の子が好きでねえ」

「なんかヤバイカンジ」

「デブだし、記憶力抜群だし、そこそこ切れるから、関西版秋元康コジンマリバージョンていったとこかな」

「ふうん」

「あたしさ、仕事をネタに口説くヤツって大嫌いなんだよね」

「口説きに来たら、一発、蹴りを入れてやれば、イイジャン!」

「アハハッ!そうする」

「組長は、ユキのことは口説かなかったんだね」

「あいつホモだからね」

「しかも、デブ専の」

「エーッ、なんで知ってたの?」

「ヤベから聞いたよ」

「あいつ、なんでもしゃべるヤツだなあ。あたしが売れ出したら、過去のこととか、しゃべりまくるような気がしてヒヤヒヤだよ」

「心配いらないよ。あいつは、そんなヤツじゃない」

「でも、あたしが風俗で働く代わりに、組の仕事を買って出てくれたけどさ、結局、あたしの顔に泥を塗るようなことをしてくれたじゃん!」

「でき心ってものも、あるさ。ヤベの話すんの、やめとこうか?」

「そうね」


電車は、ようやく淡路に近づいていた。淡路で地下鉄に乗り換えだ。


藤沢常務からの電話。
「伊原と連絡取れたから」

「ありがとうございます」

「それじゃ、9時にBONOでね!」

と言って、また一方的に切ってしまった。


(つづく)



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