インディー(144)


と、やっさんがワインとグラスを運んで来て、4人のグラスに注いでくれた。

まずは、乾杯!

「ここだけの話にしていただきたいんですが、ユキが所属していたのは、ヤクザ系の事務所でして・」

「事務所は大阪?」
と藤沢常務。

「はい、そうです」


「大阪ならだいたい知ってるけど・」

「外タレの呼び屋も派手にやってるとこです」

「あぁ、あそこね!」

と藤沢常務は把握してくれた。


「で、今は、縁切れたの?」

「おかげさまで」

「じゃあ、いい事務所を探さないといけないねぇ。ところで、歳はいくつ?」

「21です」

「うーん」
と常務は黙り込んでしまった。

「ところで・」
と常務。

「ユキさんと君とは、どういう関係?」

「はぁ」

「男と女の関係はねぇ」

と、また、痛いところを突いて来る。


「この業界、ねたみが渦巻く世界だからねえ。売れないうちはいいけど、一度、売れてしまうと標的にされてしまうからねぇ」

私もユキも、ことばが出なかった。


助けてくれたのは、やっさん。

またも
「ヘイ!お待ち!」

と生ハムを運んで来てくれた。

「今年は、3月から出し始めましたけど、ホラ、もう、こんなにやせほそっちゃって!」
と言いながら、大きな骨に、わずかに残った肉の塊を持ち上げて見せてくれた。


「うん、熟成が進んで複雑な味になってるなあ」
と藤沢常務。

「そうですね」と私。

「この生ハムには、La Visのシャルドネは、単純過ぎるね」

「どんな白が合うでしょうねえ」

(つづく)



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