「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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関西オフ2001
No.1ホステスの名前は「マキマキうんこ」だ。
そこに、自転車板のうざいコテハンが集まった。
オレは12月8日を、そのサイトのオフに決めた。
場所は大阪。スペシャルゲストは、マキマキうんこ。
そしてマニアにはたまらない、「おおフランス」と「コビック」だ。
「こすりつけ最高」がホストを務めてくれるという。
その掲示板サイトは、オフ当日に向けて、
意味不明な書き込みが連鎖的に増幅していった。
レスはどんどん流れてゆくが、そんなことはおかまいなしだ。
犬どものテンションが最高潮に達した。
12月7日。前日。
東京からは4人参加する。春風亭、Arai、しなちく慕情、オレ。
レースを1週間後にひかえている春風亭がクルマを出し、
最初から最後まで運転してくれるという。彼は精力的だ。
オレは5時に春風亭の会社に行った。午後の仕事は休んだ。
環七も環八も渋滞で、東京インターまで1時間半かかった。
東名はスムーズに流れていた。
大和バス停で、Araiとしなちくをピックアップする。
梳いた長い髪の、細い体躯の端正な顔立ちが、暗がりから自転車を担いで現れた。
細い声で自分を「しなちく」と名乗った声を聞いたオレは一瞬、どきっとした。
女だ。
と思ったが男だ。ちょっと気の強そうでキレイな女のような顔をしている。男だ。
見知った顔が現れた。Araiは、スペシャのジャージを着て現れた。
彼は先日のオフラインレーシングで、GTの自転車を盗まれた。
盗まれた時の心境をきいたら彼は「5年付き合った女が去っていくようだった」と語った。
盗まれた翌日にスペシャを注文した彼に、去った女の未練はないようだった。
Araiだけマウンテンだ。寡黙な彼は「これでロードにもかてるよ。」
静かにそうつぶやいた。
4人と4台を積んだクルマを春風亭が運転する。目的地は、こすりつけ邸。
仕事でも遊びでも長時間長距離クルマを運転している春風亭は、
地理オタクでもあった。
一度通った場所は彼のアタマの中に正確にインプットされていて、
同乗者のオレらに、確実にアウトプットしてくれた。
「メモ帳のかわりに使えるやつだなオイ」とは後に杖レが言ったが、
地図検索ソフトより精密な語りは、とどまらなかった。
オレがi-modeで、犬どもが集まる掲示板を見る。
こすりつけが部屋をかたづけて楽しそうに待っている書き込みをしている。
車内のテンションも高まるが、大阪はいささか遠い。だれる。
春風亭は精力剤を飲む。オレはタバコを吸わせてくれとねだる。
うとうとしながら、大阪に着いた。
携帯でやりとりしながら、ようやくこすりつけ邸のそばまで来た。
ママチャリでにこにこしながら現れたこすりつけの背筋はぴんと延びていた。
ジェスチュアで、クルマのオレらに「ついてこい」と語る。
気温3度。風呂上りのようなスウェット上下にサンダルのこすりつけは、
手信号で巧みにクルマのオレらを誘導してくれた。
午前2時。着いた。
良識ある東京コテハン集団は、夜中であることを考えて歓喜の声は控えたが、
なんだかみんな、意味もなくニヤニヤしていた。
明日は100kmを越すロングツーリングの予定だ。
早く寝たいと思っている東京遠征組の気持ちを無視してこすりつけは、
酒盛りの支度をしていた。
まあいいだろう。すこしぐらい付き合ってやる。
長旅で疲れた神経を、ビールや牛乳で弛緩させた。宴会が静かに始まった。
いやがらせのように長く続くこすりつけのトークは終わらない。
しなちくとオレがひそひそと相槌をうっていると、
うつぶせで寝に入っていたAraiがむくむく起きだしてタバコをくわえた。
運転で疲れている春風亭も、寝ながら話に参加してきた。
「寝れないの?」と訊くと、「ううん、寝言寝言。」と春風亭。
静かな宴会は、午前4時に終わった。
毛布一枚づつのザコ寝状態になる。
午前4時。8時起床。明かりを消した。
突然、こすりつけが笑いだした。気が狂ったように、笑いだした。
こすりつけの笑いが止まらない。
なかなかとまらない。
どついても、とまらない。狂っている。
遠くからどたばたと階段を駆け上がる音は、布団の中で聞いた。
「朝、新しい朝♪」陽気な歌声を発しながら、
ヘアバンドをあてた茶髪が派手に登場した。
ヘアバンドは開口一番、「まずおまえら誰と誰やねん」とのたまいながら、
オレらの毛布を一枚ずつはがし始めた。
ひとりづつ「おまえは誰や」「あ、Araiです」などとやりながら彼は、
広島土産のもみじまんじゅうを配っていった。
まだ眠りたりなくて未練がましく毛布に抱きついていたオレの上に来たヘアバンドは、
下にいるのがオレとわかると、すぐさまオレの顔に尻を近づけて、
ためこんでいたであろう屁を、裂けるような音を鳴らしながら勢い放射した。
奴は杖レだった。
昨晩もオレは、屁の洗礼を浴びていた。
こすりつけはオレの目前で、パンツごとスウェットのズボンを下ろすと、
できものも毛穴も見えそうな間近から、乾いた音のナマ屁を浴びせたのだ。
おまえら、気が狂っている。くさい。
派手な杖レ登場のすぐあとに、もう一人あらわれた。
ニヤニヤしたしったり顔の黄色いやつは、BR2だ。
こすりつけと杖レからは「おい、ジャージ」と呼ばれていた。
なんだかその呼び名が気に入ったオレは、
関西風のイントネイションで「ジャージくん」と彼を呼ぶことにした。
オレは普段着のままで走ろうと思っていたが、
こすりつけに、タイツやマイヨをあてがわれた。
着替えようと後ろを向いた。オレはパンツを脱いだ。
背後に、カサカサっと速いなにかが近づく気配を感じた。
振り向く隙もなく、オレの右臀部に冷たい感触と鈍い痛みが走った。
オレの尻が、噛みつかれた。尻を、生で噛まれた。
杖レだ。
でたらめな朝だった。
今日のコースをこすりつけは、入念に練ってくれていた。
当初彼は、200キロにもおよぶ距離を走るといっていた。
途中で、どう考えても時間が足りないことに気づいて、
130キロぐらいのコース設定になった。あまり入念ではない。
大阪から、峠の県境を越えて京都市街へ。
「洗礼」と呼ばれる激坂の頂上で折り返してまた大阪へ戻る。
こすりつけは、おおまかにそう説明した。
「先頭はハゲにまかせて、ジャージとオレが風よけとケツ、交代でええやん」
「道わからんようになったらアレやからな」
杖レとジャージが作戦を練っている。
3人で、東京からの客を、走りでもてなす口裏はあわせてあるのだろう。
いいとこあるじゃないか、この気違いどもめ。
先頭はこすりつけ。2番手に杖レ。最後尾をジャージくん。
Arai、しなちく、春風亭、オレの東京組4人は、
大阪の3人にはさまれる格好で一列を形成して走り始めた。
徐々にペースが上がってゆく。先頭のこすりつけは、全く後ろを振り向かない。
早くも遅れ気味のオレは、最後尾のジャージくんにへらへら煽られている。
市街地から峠へ、断続的に少しずつ、ゆるやかなのぼり斜面。
山の入り口にさしかかったらしい。
商店や民家はまばらになってゆく。
ゆるやかにカーブしながら、舗装路は勾配をあげる。
七人一列の自転車集団の先頭は、こすりつけ最高。
登り坂でもペースは変わらない。
集団の間隔は徐々に広がってゆく。
オレは一番後ろでそれを眺めながら息をはあはあさせている。
一番先はもう見えなくなった。
50メートル先では、ピンクのウインドブレイカーのしなちくが、
春風亭を追いぬいている。
オレは春風亭を目標に定めるが、いっこうに追いつかない。
細くしなやかなフォームのしなちくはもう見えなくなった。
猛スピードのダンプが轟音と砂煙をあげて過ぎてゆく。
坂は平坦になって、そして下りはじめた。
かろうじて見える春風亭の背中に追いつこうとオレは、
下りでしゃかしゃか回した。
下りのギアがよくわからず、右のSTIをくりくりいわせた。
上げるほうと下げるほうの区別がよくわからない。
余計に空回りさせて自転車ごとふわふわしたら、あわてて逆に戻す。
昨日の酒が残っている。春風亭に追いつけない。
分岐点でこすりつけが待っていた。
こすりつけと合流した春風亭は、こすりつけにひかれてペースを上げ、
やがて見えなくなっていった。
下ったと思ったらまたのぼる。平坦になったと思ったらまたのぼる。
上りか下りかわからなくなってきた。緩やかな勾配だ。それが延々と続く。
オレはひとりで走っている。息を切らしながら走っている。
オレは坂が苦手らしい。通勤でもいつも、目白坂と御茶ノ水に苦しめられてる。
もう誰も見えなくなった。こんなに長い坂を登るのは初めてだ。
帰りたくなってきた。犬のように呼吸しながら、前方の誰かを探した。
「ゆっくりでええからな、踏むよりも回転重視でいこ」
後ろから声をかけられた。ヘアバンドの茶髪、杖レだった。
杖レは、集団からとりのこされたオレをひくわけでもなく、横につけて喋りだした。
ひとりで喋ってくれるのはかまわないが、「自転車始めたのはいつや?」
「ロードの前は何のっとったんや」などとくだらない質問を浴びせてくる。
オレはハアハアいいながら坂に苦しめられている。
「いいペースや。その調子でいこ」ともはげましてくれるから返答もおざなりにはできない。
会話を交わすが、オレの息は余計にあがってくる。
杖レの呼吸は全く乱れていない。
かなり長いこと坂を上っているような気がする。杖レのおかげで気はまぎれたかもしれない。
オレが足を緩めると、「7割はきたな。がんばりや」と杖レの檄がとんでくる。
おそらく道の分岐がなくなったあたりで杖レは、「ほんだら頂上で会おうな」といって、
急激に速度をあげた。オレは喘いでいる。オートバイのような速度で、杖レは去った。
頂上に杖レはいなかった。
見えなくなった集団は、30km/h近い速度で上っていったらしい。
オレは20km/hにも届かない。
峠にはこすりとけとジャージがいた。下りが始まる。
ゆるやかなつづら折り。クルマと併走できるほどのスピード。
ぴったりくっついて走るこすりつけとジャージのオーバードライブ。
カーブで失速するオレは、じょじょにひきはなされる。
それでも必死にくらいつく。楽しいのか怖いのかよくわからない。
市街地に入り一旦休んでも、またのぼりがやってきた。
トンネルの分岐点でこすりつけが待っている。
こすりつけはオレに声をかけるでもなく先を行く。
道を知らせるためだけのために待っていたようだ。
トンネルを出たらつづら折りののぼり。
こすりつけは、平坦を走っているようなペースでつづら折りをのぼる。
上体はいっさい動かない。力強い。
オレが下を向いて息を整えて上を見上げると、
オレの何十メートルも上のこすりつけは、オレにその走りを見せつけるように、
正しくのびた姿勢でまっすぐ前を見て、ぐんぐん進んでいる。
大型店が建ちならぶ郊外から街並みは市街地へと変わってゆく。
クルマは、左端を走っている自転車のすぐ横を荒くかすめてゆく。
前を走っていた他の連中に、信号待ちでようやく追いついた。
道をななめに横切るように這う溝は、路面電車の線路だろう。
古風なたたずまいの店が軒を連ねる。京都市街中心部に入ったようだ。
観光客を乗せるバスやタクシーは無秩序で強引だ。
派手にクラクションを鳴らしながら、幅寄せ急停車急発進を繰り返す。
いつもならまっさきに怒鳴り声をあげて怒りの感情を表現するが、
これが京都の文化かもしれないとも思い、こらえる。
歩道に観光客があふれてくる。
八坂神社の横を通った。オレは八坂神社を見ていない。
通りすぎたあとに、ジャージが教えてくれた。
自転車集団は、市街地に入ってもペースを落とさない。
先頭のこすりつけはときおり、殺人的なスピードを出して突き放す。
離されまいとする後続がくらいつく。
京都の街を、堪能させてはもらえない。
後ろでジャージが、「あれは○○やで」「これから××の前を通る」
と説明してくれていたような気もするが精一杯でよくわからない。
正午過ぎ。天下一品ラーメン本店。
「腹減ってない思とったけど、はいるな。」とはジャージ。
同感だ。さくさく入る。こってりが胃壁に浸透してゆく。
「ちょうどここが折り返し地点や」とこすりつけは言った。
「洗礼」という名の激坂へ行くには時間が足りないことに気づいたらしい。
内心安堵しながらオレは、悔しそうなそぶりを見せてみる。
川のほうに向かう。淀川だったか桂川だったか、確かそんな名前の川。
青白い空はもうオレンジ色になりそうなそんな時間。
信号で遅れる。杖レが「ひくわ」といってオレの前に出る。速度があがる。
本当にひっぱられている感覚。初めてだ。一人の時とは違う。追いついた。
川沿い。走る。オレも調子が出てきた。先頭はいつもこすりつけ。平坦は楽しい。
この景色、覚えている。嵐山。修学旅行だ。
なんだかなつかしい感じがして、止まってみたくなった。
歩道からあふれる観光客にうんざりして、やめた。
こすりつけが止まりたくなったらしい。スピードを緩めて脇道へ入ってゆく。
トイレか。集団も一息つく。このときすでに80キロ。だいぶ走った。
「あとどれぐらい?」「こっからちょうど30キロや」
川沿いの自転車道で帰る。延々とつづく平坦をあと1時間半も走ったら終了だ。
「重いのを踏むと足にくる。シャコシャコ回すと心肺機能にくるんや。
しかしな、筋肉は寝な回復せえへん。心臓は3分したら回復する。
シャコシャコ回すのがええ理由は、そこや。」
昨晩、こすりつけが語った。「それでいこう」としなちくがオレに促した。
川沿いのサイクリングロード。こすりつけも杖レもジャージも、
120回転ぐらいの速さで回しているように見えた。オレも真似してみたくなった。
Araiはいつもどおり「ぶうん、ぶうん」という具合にゆっくり回している。
先頭はこすりつけ。すぐあとにArai。その後ろにはりついてみるオレ。
シャコシャコ回す。苦しい。Araiはラクそうに、ゆったりと回している。
こすりつけの背中は余裕だと語っている。オレは苦しい。はりついている。
車止めのポールや犬の散歩や子供のために減速してまた加速するときオレは、
離され気味になる。余計にシャコシャコさせまたAraiのケツにはりつく。
同じことの繰り返し。延々と回している。道はどこまでも続く。
ふと、ラクに呼吸をできるようになった。肺の細胞が開いてきてるような感覚。
犬のようにハアハアしてはいるが、苦しくない。むしろ、気持ちがいい。
遅れると、杖レかジャージが、勢いをつけて後ろからとびでてくる。
こすりつけは振り向かない。杖レとジャージにひかれて、Araiの後ろに追いつく。
楽しい。メーターは30km/h~37km/h。シャコシャコ回す。
先頭で、こすりつけと杖レが、肩をぶつけじゃれあうように併走しはじめた。
集団も2列のドラフティングを楽しむ。かたまって、高速だ。言葉はない。
オレは笑いたくなってきた。
県境付近の国道バイパス。向かい風。ゴールは近い。
突然、大阪の3人組が、狂ったようにスピードをあげた。
Araiもそれに付いていく。すぐに見えなくなった。
「県境で負けるとむっちゃくやしいねん。だからいつもスプリントや」
後にこすりつけはそういった。
しばらく春風亭の後ろに張り付いていたが、次第に離された。
しなちくも前に出てどんどん離れてゆく。
チカラが入らない。回らない。オレはもう終わったらしい。
だらだら走りながらこすりつけと合流した。杖レとジャージはもういない。
こすりつけ邸の近くまできた。
「中村ぁ、これか?」
こすりつけはにやにやしながら、オレに向かって、
グラスを持つ形にした手を、口の前でくいっとやってみせた。
言葉を出すのもおっくうになっていたオレは、こくんと静かにうなずくだけだ。
着いた。
犬がゴールで迎えてくれてた。喜びで笑いたいオレの顔は、ひきつっている。
早く着替えてビールを飲もう。それ以外、なにも考えられない。
もうひとつのビッグイベントは大阪梅田。
スペシャルゲストを迎えての大宴会が始まる。
場所はフランス様のご意向により決定。
自転車板の暴君に、誰も逆らえない。
梅田。地下鉄を出る。プロムナードは足早な人の波。群れ。
先を案内するはずのこすりつけと杖レはきょろきょろしながらうろうろしている。
「梅田ようわからへんねん」
正面からくる人の群れとぶつかりそうになりながら雑踏を歩きにくそうにしている。
「人の流れにそってあるけよ」とオレ。
「流れにそって歩くと気持ちええなあ」とこすりつけ。
自転車とは勝手が違うらしい。
5時半。紀伊国屋書店。こすりつけがコビックを発見した。
こすりつけとジャージは、以前にコビックと会っていて知った間柄。
でかい図体に小さなリュックをちょこんとしょって現れたのはコビック。
連中は足早にコビックに近づく。
突然、奇声とともに騒ぎが起きた。
通りをゆく人はいぶかしげに騒ぎの中心をのぞきこむようにして過ぎる。
見ると、騒ぎの中心はコビックと杖レ。
杖レが、でかいコビックに飛びついて、アタマに噛み付いていた。またやっている。
痛みの奇声をあげていたのがコビック。初対面の凶暴なご挨拶。
「いきなりどうゆうことやねん」
コビックは、アタマ一つ分上にある顔の、大きな目を潤ませながらにこにこ笑っていた。
居酒屋旅籠。6時。杖レが電話しまくって予約した。
奴は凶暴なわりに、そうゆうことが得意らしい。
座敷のテーブルに着いても奴は、真ん中に陣取って、
身を乗り出すようにしてしゃべりまくっている。
マキマキうんこは、少し遅れてくるという。
オレはマキと、ある約束をしている。出会い頭にフレンチな挨拶を交わす約束だ。
両ほほを交互ふれあわせて抱擁するあれだ。少しどきどきしてきた。
おおフランスは9時に来る。
大阪のバカ3人は、笑いを競いあっている。東京組は比較的大人しい。
コビックは噛まれたり叩かれたりしている。騒がしく宴会が始まった。
こすりつけのケータイが鳴った。マキうんが梅田に着いたらしい。
瞬間、場がいろめきたった。杖レまでそわそわして落ち着かない。
こすりつけが迎えに出た。
自転車に乗る犬どもが集まるくだらない掲示板サイトがある。
マキマキうんこはそこの主催者だ。
ばかばかしい名前だが、女だ。
マキうんはいつも、卑猥で思わせぶりなトークと百戦錬磨な世渡りの上手さで、
群がる男どもを翻弄している。自転車にも詳しい。
こすりつけもフランスも杖レもコビックもオレも、
彼女に夢中になってはのぼせあがり、調子に乗りすぎて彼女の機嫌を損ね、
叱られて落ち込むようなあの、ネットでよくある苦い経験をしている。
こすりつけがなかなか戻ってこない。
コビックが少し静かになった。
「野郎、おそいな」とオレ。
「ふたりで違うとこいっとんとちゃうか?」と杖レ。
杖レが電話をする。道に迷ったらしい。
電話口からカシスオレンジのオーダー。乾杯を待たせない心遣い。
どたばたとこすりつけがもどってきた。
「あれ、彼女は?」「あとからくる」 鼻息が荒い。
ふとコビックが、入口の方を見てにたっとした。
しなちくが細い声ではっとして「あっ、マキうん・・・」
オレはどきどきしながら、後ろを振り向いた。
細くしなやかなスタイル。長い手足。小さい顔。腰つき。
「こんばんは。」元気なあいさつをしながら席についた彼女は、
「マキです。マキうんです」とひかえめに名乗った。
「フルネームでいわんかいな」と杖レ。
すると彼女は少しはにかんで、
「マキマキうんこ!」
といいはなった。
「こっからここまで全部持ってきて」
メニューの一角に書かれた20種ほどの串焼き全てを指して、
コビックが店員に無茶な注文をした。
「何本づつにいたしましょう」と店員。
「とりあえず人数分、7本づつ」
ジャージが、無茶な本数を口走った。それに全部で9人いる。人数分にもなっていない。
「それはちょっとおおすぎるとおもわれますが」
無茶苦茶な注文をするでたらめな客に店員も辟易して苦い顔をしている。
Araiは、こすりつけとコビックにはさまれている。
コビックの執拗で理不尽などつきをもらっても、ひとことふたこと言い返すだけだ。
春風亭は、2ちゃんジャージの話を切り出しにくそうにしている。
彼は酒を飲めない。酒の代わりに牛乳をたしなむ。
しなちくは、キレイな顔をしている。尻も小さい。
端のところで、細く長い足を窮屈そうに折りたたんで、静かに楽しんでいる。
オレはマキうんの隣へ移動した。正面だと見つめられて負けてしまうからだった。
話したいことはたくさんあったはずだが、思うように言葉が口をついて出てこない。
フレンチキスの約束も果たせなかった。場の流れは圧倒的に、大阪組に傾いてる。
オレはマキうんの隣で、気違いどもの狂宴を楽しんでいた。
ばらばらで滅茶苦茶な集団。オレは居心地の良さを楽しんだ。
ときおりオレは奴らの話に口をはさむ。決まってこういわれる。
「おまえは無い。あっても無い。」
何を話したかはよく覚えていない。ただ楽しかったことだけ覚えている。
こすりつけはコビックとビールの量を競い、腕相撲でも両者一歩も引かず引き分けた。
ジャージの見事なスタンディングのことを思い出した。彼は曲芸師のようなバランスで、
止まった自転車を自分のカラダの一部のように扱う。100円あげる。
マキうんは、コビックの肩に触れたり、腹をつついたりしている。
コビックはただにやぁっとしながらだれぇっとしている。恋人同士のようだ。嫉妬するオレ。
開始から2時間経ち、終了の合図。おいだされる。
12月8日8時。
杖レがフットワークよろしく精悍に働きだした。会計も集金も手際よくやっている。
店の前にたむろしているとき、コビックがシャツをめくって腹を見ろとアピールした。
杖レの歯型がくっきりとついていた。
内出血で歯型のまわりは赤く染まり始めていた。
それでもコビックは、にこにことへらへらしていて、マキうんが心配そうに、寄り添っていた。
フランスを待つために場所を移動することになった。
フランスは当初、カラオケを所望していた。
こすりつけが参加者にアンケートをとり、結果やむなくカラオケは断念。
こすりつけは、暴君の機嫌をそこねやしまいか、はらはらしていた。
フランスに、一番会いたがっていたのはこすりつけだ。
奴は、生のフランスに会いたいがために、幹事役を自ら申し出るほど、
フランスに執着し、そして愛していた。
9人の酔っぱらい集団はどこの店に入るでもなく、梅田駅周辺をうろうろしていた。
杖レは店を探しに走っている。8時に9名を入れてくれる店はなかなか見つからない。
トイレにいきたくなった。ジャージがひょろひょろと「トイレならこっちあるで」と案内した。
オレより先に、こすりつけがトイレに入った。しばらく待つ。なかなか出てこない。
杖レがAraiだかコビックだかとキスをしている。オレも刺激されて、キスをしたくなった。
正面にいたマキのところへ、小走りで駆け寄った。
両手で頬をやさしく包み、引き寄せた。目を閉じて口元を見る。
マキはすこし抗った。オレはてこずった。
刹那、コビックがオレのアタマをはたいた。杖レが、オレを羽交い絞めにした。
はやくでてこいこすりつけ。
「ちょっとここで待っといてな、探してくるから」 杖レ。
DDハウス。マキが導いてくれた。9時前。
ふと見るとこすりつけは、Araiの肩を抱いて、なにか神妙な顔をして話をしている。
Araiはまんざらでもなさそうだ。Araiはマウンテン乗りだ。
Araiの今日の走りを見たこすりつけが、ロードのよさを語っているらしい。
語りはやがて説教のような口調に変わった。と思ったらやさしく攻める。
そうしてAraiが洗脳されてゆく。Araiはロードバイクを欲しがってきていた。
こすりつけ、おまえはアムウェイか。
杖レが戻ってきて、店がとれたと告げた。
つきあたりの、贔屓屋。
コビックは白熊のようにころころ暴れていて、
こすりつけはAraiの肩を抱いて静かに語っている。
しなちくとマキは恋愛とか女のコの気持ちのことで語っている。
春風亭は牛乳がなくてしかたなくお茶をオーダーしている。
杖レは全体を見渡して悦に入っている。でも喋りは止まらない。
ジャージは船を漕いでいる。オレはマキうんの隣に座っている。
贔屓屋。
一旦トイレにいってAraiを解放したこすりつけは、
語り疲れたか、テーブルにつっぷしている。
杖レのケータイが鳴った。
コビックが、後ろのガラスにアタマをぶつけた。うれしそうに痛がっている。
フランスからだ。
フランスは、自分の情報を一切明かさない。
フランスの電話を、誰も知らない。ただ、彼からの連絡を待つだけだった。
杖レの電話を借りた。
「遅くなったから、帰るわ。すまんのう」
フランスだ。高い声で理不尽なことを喋っている。
「あ?なにそれ?それダメ。来てよ。」
とオレもカタコトだ。
マキうんに電話をまわす。マキうんは、しばらく話してケータイを閉じた。
「来ない、っていってるよ」
「なんだそれフランスあいつ?」
オレは怒りを撒き散らしながら、不快感を表すようにふてくされた。
不機嫌そうにオレは飲んでいる。こすりつけは寝ている。
ジャージもうとうとしていて、マキがジャージの鼻をくすぐったりしている。
ふとマキがジャージの鼻をもてあそぶのをやめて入り口のほうを見た。
マキマキうんこが嬌声をあげた。
「フランスさん!」
役員クラスがいた。
濃紺の背広に白いシャツ。派手目のタイを首からつるして、
肩から箱型のショルダーバッグ。袖口には金色のブレス。
あるいは、現金で商品を買い付けるような職業の側の人間。
長身だ。茶色く染まった髪を後ろに流し、鋭くもやさしそうな目つきは、
そう石橋凌によく似ている。
風体の割に意外と若そうだと思ったのは、褐色に染まった肌の色艶。
あぶらぎってはいない。
集団が、それを誰か認識するまで、しばらくかかった。
やがて歓声。地鳴りにも似た歓喜の音が沸き起こった。
集団、最高潮のテンション。
おおフランス、降臨の瞬間だ。
杖レが噛みつく。コビックがころがる。集団は、狂喜の波をうった。
「おまえらどないやねん!!」
フランスは、噛みつく杖レをふりほどきながら、ニヤニヤ靴を脱いでいる。
「まず座らせろや!!わしの席はどこやねん!!」
あのまんまだ。
フランスは、同い年だというコビックの隣に座った。
集団の視線はそこに集中する。
こすりつけは、寝ている。
「誰が誰だかあててみて」とマキ。
フランスは、
「まずマキうんやろ」
「ほんで、春風やんな」
「そんでおそらく、ちゅうや」
Araiを指して「ちゅう」と呼んだ。荒井注にかけているのだろう。
「しなちくおまえキレイな顔しとんなあ」
「コビックはわかるがな」
「杖レおまえは嫌いや」
テーブルにつっぷして寝ているこすりつけを指して、
「このおっさんはあれやろ、こすりつけ」
杖レがジャージを指して、
「これはむつかしいでぇ、まだ書き込みしてへんからな」
するとフランスは、
「あれやろ、BR2やろ」
全員正解だ。
最後オレの番になった。
フランスと目が合った。
フランスは言った。
「おまえは無い」
フランスは期待を裏切らない。
ジャージが目を輝かせ、矢継ぎ早にフランスへ質問する。
「どこ住んどん?」
「フランスや!!」
フランスは、フランスに住んでいるといってきかない。
「自転車なに乗っとん?」とジャージ。
「ドロップハンドルや!!」
ドロップハンドルとはあまりいわない。
「麻生澪て、フランスか?コビクはちがうゆうとんで」杖レがわって入る。
「知らん!!自作自演は一度もしたことない!!昭以外はな!!」
いつもどおりのレスが返ってくる。しかも生でだ。
オレもちょっといじりたくなってきた。
「Bとはどうなのよ?」とオレは言った。
Bとは名無しBのことだ。
フランスはかつて自転車板で、名無しBと壮絶なバトルを繰り広げていた。
「うるさい!!関東弁でしゃべるな!!さぶいわどっかいけ!!」
散々ないわれようだ。
実は名無しBも、マキうんが主催する掲示板サイトに出没しているが、
フランスとBは、未だ、会話を交わしたことがない。
「Bとはどうよ?バトルやんないのかよ」
オレは食い下がった。
「知らん!!あいつは嫌いや!!」
そしてフランスはこうたたみかける。
「表でフツウに会話して、裏ではオレの追放運動やってんねん!!
ま追放されてもかまへんけどな!!」
と言い放ち、素手で刺身をつまみ醤油に浸し、
笑いながら口へ運んだのだった!!
12月。寒空の下へほうりだされても、
オレらのまわりは夏のような熱気を帯びていた。
こすりつけはトイレで寝たままかたまって起きない。
一番フランスに会いたがっていたやつが、
最後までフランスと話すことはなかった。
こすりつけを介抱する杖レの代わりにジャージが、
オレら東京組を、こすりつけ邸まで送ってくれるという。
感謝は言葉であらわせない。
柔軟で情に厚い、奴ら3人の連携プレー。
自転車でも笑いでも、3人は競い合っている。
オレは少し、奴らがうらやましい。
集団は、別れを惜しみながら梅田駅へ向かう。
オレはコビックと手を繋いで歩いていたマキに駆けより、
もう片方の手をとって横並びに歩き始めた。
そしてオレは前ににいたフランスを呼び止めてその手をとった。
すると誰かが「みんなで手をつないで歩こう」と言い出した。
みんながみんなの手を繋げるようにいれかわりたちかわり入り乱れた。
ジャージは、しきりに照れながらマキと手をつないでいる。
一列になって歩道橋を上り、ペデストリアンデッキでは輪になった。
コビックにのっかったり、Araiをどついたり、マキと抱擁を交わしたりしている。
フランスが「おまえら最高や!!」を連発した。
祭りの熱狂を胸に刻み込もうとみんなが、羽目をはずして暴れた。
梅田駅改札。
フランスとコビックは、まだ飲み足りないといっている。
マキはみんなを見送ってから帰るといった。
東京組はジャージに、こすりつけ邸まで連れて行ってもらう。
オレはマキに近づいた。そして果たせなかった約束の抱擁を交わした。
口説こうと思ったが、やめた。
フランスだかコビックと、再会を約束する固い握手を交わしそして、別れた。
別れを惜しんだ。
そうして祭りは、終わっていった。
おまえら、最高だ。
~おしまい~
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