山ちゃん5963

山ちゃん5963

四十、信長と寧々



信長殿

ここに記すのはあの織田信長から寧々に宛てた手紙の写しじゃよ。時期としては西暦千五百七十年代のものである。

おほせのことく、こんとハこのちへはしめてこし
けさんニいり、しうちゃくに候、
ことにみやけ色々うつくしさ、中々めにもあまり、
ふてにもつくしかたく候
中略
それのみめふり、かたちまて、
いつそやみまいらせ候折ふしよりハ、十の物二十ほともみあけ候、
藤きちらうれんれんふそくのむね申のよし、
こん五たうたんくせ事候か、いつかたをあひたつね候とも、
それさまほとのハ、又ニたひかの
はけねすみあひもとめかたきあひた、
これよりいこハ、みもちをようくわいになし、
いかにもかみさまなりにおもおもしく、
りんきなとにたち入候てハ、しかるへからす候、
たたし、おんなのやくにて候あひた、
申もの、申さぬなりにもてなし、
しかるへく候、なをふんていに、
はしハにはいけんこひねかふものなり、又々かしく、

対訳…
このたび安土城を初めて訪ねてくれてとても嬉しかった。
持ってきてくれた色々なみやげの品はたいへん美しく、
文章でも言葉でも表現できない。
(中略)
その方も前にあった時に比べて
倍くらい美しくなっている。
藤吉郎秀吉がなにか言っているが、
言語道断。どこを訪ね歩いても、
あの禿ねずみには、
その方のような女性は見つからない。
これから先は陽気にふるまい、
奥方らしく心を大きく持って
やきもちなどは妬かないように。
夫を立てるのが女の役だから、
慎み深く世話をしてやるように。
この手紙は羽柴にも見せること。かしこ

なんと『鬼神織田信長』の真っこと人間的な一面を見る手紙ではないかいのう。これは、信長が彼の部下木下藤吉郎秀吉の嫁、寧々をいたわり、思いやる上司の手紙なのだわいなあ。ほんものじゃよ。

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