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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.08.06
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カテゴリ: カテゴリ未分類
そう、神様って、気まぐれ。

突然、私に恋を押し付けて、
ためらいながら、私がそれに応えたら、
あっという間に、とりあげておしまいになるのよ。

何のために、あの人に出会ったのか。
つかの間の夢を、見せたかっただけなの?

「カーステアーズ、あなたに話があるのよ」
「なんでございますか」

あら。私が話す前から、口元がこわばっているわ。


「私、今夜、失恋しました」
「……」



見事ね、カーステアーズ。
あなたには、動揺するということが、ないのね。

「ヤンスカ様、それは、誠でございますか?」
「ええ、彼の口からはっきりと、妻帯者だと言われたの」

さすがに、カーステアーズは、胸元で十字をきるしぐさをする。

「あなた、カトリックだったかしら、カーステアーズ」
「いいえ、私は英国国教会ですが、今、私に必要で、なおかつ
 心の状態にぴったりなアクションは、これしか浮かびません」

「ごめんなさいね。あなた、この列車をものすごく改造したのよね」

「出発する前で、よかったわ」

カーステアーズは、珍しくソワソワしていて、意味なく客室の端から端まで動き回る。

「ヤンスカ様、くわしくお聞かせ願えませんか?」
「出会った時には、彼の背景が全くわからなかったのよ。
 でも、私に素敵な言葉を贈ってくれたり、私をときめかせたわ」

「そんなこと、必要じゃなかったのよ。
 理屈じゃなくて、ガツンと恋に落ちたんですもの」

カーステアーズは、天を仰ぎみて、手のひらをヒラヒラさせる。

「あなた様の、その単純さが、時にうらやましく思いますよ」

私とあの人は、ゆっくりと距離を縮めて、
おだやかに、進んでいける。
本当に、そう、思っていたの。
もう、私はあせらずに、一歩一歩、踏みしめていきたかった。
これから、始まるというところなのに、あの人は言ったの。

実は、妻がいるのだと。

「カーステアーズ、あなたは私を誇りに思っていいのよ。
 私、できる限り、冷ややかな笑顔で、彼を見据えて、
 くるりと向きをかえたわ」

「ヤンスカ様…」

私は、必死に逃げたわ。
でも、それは、気持ちだけで、実際には体中が震えて、
息が止まりそうだったのよ

「あの人はね、もし、君と先に出会っていたら、
 なんて陳腐な言葉を口にしたわ」
「私なら、運命の女性に出会ったのだとわかれば、
 多くの人を傷つけても、その人を、わが手にするでしょうね」

カーステアーズは、目線を床に落とし、咳払いをする。

「昔、私にも天からの賜りもののような恋人がいたのです」
「それは、いつのこと?」
「私が、CIAのエージェントをしていた頃の話ですよ」
「お相手は?」
「敵国のスパイの愛人でした」

んまあ!ベタな展開ねえと思わないでもないけれど、
そういう事ってあっても不思議じゃないですものね。

「彼女を張り込んでいたのですが、悲しげな表情をたたえた緑の目と
 怒りの炎を思わせる赤毛の女に、すっかり魅せられたのです」
「その方は、愛人でいらっしゃることを楽しんでいるようではなかったというの?」
「ええ、いつも、窓の外を眺め、何度も同じレコードをかけておりました。
 たまに、彼女の男があらわれると、時にはひどい暴力を受けることがあったのです。
 それで、私は、捜査員としてのあやまちを犯してしまったのです」
「もしかして、彼女を助けに行ったの?」


ああ、カーステアーズの、お馬鹿さん。
だからこそ、私は、彼を必要としているのだけれど。

「彼女は、最初、私の事を警戒しておりました」
「それは、そうね」
「しかし、私は、あなたを救い出したいのだと、懸命に伝えたのです」
「その方に、伝わったの?」

カーステアーズは、耳の付け根まで赤くなったわ。

「いつしか、彼女は私を信じ、彼女の男から離れて逃げたいと言ったのです」
「まあ、それって、カーステアーズと一緒にということ?」

「私だって、ルールを犯した身ですから、組織にはおられません。
 まずは、ケイマン諸島に飛ぼうと計画したのですよ」
「そんなドラマティックなことが、あるのね」
「彼女の男が、留守にするという情報が入り、
 いよいよ、脱出の日が来ました。
 私たちは、無事にたどり着いたマイアミ空港のロビーで、
 ささやかな乾杯をしたのです」

カーステアーズは、ここで、大きく深呼吸をして続けたわ。

「シャンパンの前に、あなたを」
カーステアーズの瞳がうるんでいる。
「そういって、彼女は、私に口づけたのです」

この男に、そんなロマンスがあったなんて。

「私は、愛する女性を勝ち得た喜びで、頭の中が真っ白になり…

 そうして、目をあけると、マイアミの湿地帯の中に縛られて
 転がされていたのですよ」

「まあ!睡眠薬をしこまれたってこと?」
「ええ、彼女はまんまと、自分の男と逃亡に成功したのですよ」
「よく、ワニに食われなかったことね、カーステアーズ」
「たいした、女性でしたよ、まったく」

「つらかったわね、カーステアーズ」
「あの頃は、自暴自棄になりましたとも、ヤンスカ様」
「どうやって、あなたは、心の穴を埋めたの?」
「手当たり次第に、目の前の女性と付き合ったこともございました。
 または、私が、そんな相手になったこともございましたね」

私は、顔をしかめて、彼を見たけれど、
すました顔をしているわ。

「それで、解決できたの?あなたは」
「いいえ」
「じゃあ、どうしたの?」
「私、ある時に、やっと、涙があふれてきたのです。
 失ったばかりの時には、泣けなかったのですよ。
 顔をひきつらせて、笑ってばかりいたのです。

 ですが、過ぎ去りし時のことを、憎しみではなく、
 哀しみと、慈しみの思いで手にとることができた時に、
 私は、やっと、感情を露わにすることができたのです」

「私には、まだ、無理ね。心は大泣きしているのに、
 涙が出てこないわ」

カーステアーズは、私の前にひざまづいて、
私の両手を握りしめる。強く、しっかりと。

「あなた様のお手をとる無礼をお許しくださいませ。
 ヤンスカ様、つかの間の恋にせよ、あなた様の輝きは本物でございました。
 永らく失われていた、快活で、楽しいあなた様が
 しばらくぶりにあなた様自身の身体に戻られたのですよ。

 この出来事は、あなた様の復活の序章に過ぎません。
 むしろ、私などは、あなた様に灯りをともしたその方に
 お礼を申し上げたいくらいですよ」

たしかに、そう。
私は、何年も開いたままの心の穴を、
この恋で閉じることができたのだわ。

毎日がどんなに、キラキラと輝いて見えたことでしょう。
あの方の存在に、どれほど、慰めを得たことでしょう。
こんな思いを、感じられるようになったこと自体が奇跡だったのよ。

「あなた様は、これから、その方にとって取り逃がした忘れえぬ女性に
 おなりなさいませ。どんどん、進むのですよ。追いつかれぬように」
「カーステアーズ、あなたは、最高の人ね」
「イワンにも、そう、おっしゃるのでございましょう?」
「今日のところは、あなたが、一番よ、カーステアーズ。
 ねえ、教えて、あなたの忘れえぬ緑の瞳の方の名前をね」

「ああ!まったく類まれな麗しのエレノア!
 それが、私の心の中の小部屋の肖像画の女性ですよ」
「カーステアーズ、私も、しばらく、あの方の肖像画を飾るかもしれないわ、
 でも、ごく小さなものをね」

私たちは、握り合っていた手をはずし、
シャンパンを掲げる。

「エレノアに乾杯!」
「いいえ、類まれな、麗しのエレノア、でございますよ」

明けない夜はないわ。
私の旅は、これからなのですもの。





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Last updated  2012.08.07 05:23:20
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