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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.08.09
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「リーアム、素敵なインテリアだね。少し、昔風で、豊かな優しさがあって」

なぜ、イワンが私の自慢の食堂車に座り、
テーブルを共にしているのか。
しかも、私の名をウィルと呼ぶ者はいても、リーアムとは、いやはや。

ふっと、イワンの左手が私のグラスに伸びて、
次の瞬間には、口元に運ばれていて、
そうしながら、私をじっと見おろし(そう彼は長身なのだ、座っていても)
右手を素早く私の手にからめてくる。
で、ウインクを送ってくる…。


私は、女性が好きである。好きであるはずなのだが、
こういった、イワンの悪戯には、つい動揺してしまうのだ。
この猫男め!


ヤンスカ様の新たな旅立ちを盛り上げるべく、
お心を慰め、励ますために、私は晩餐会を思いついたのだ。

私ひとりの力には、限界がある。
妄想鉄道の運行にかけては、完璧だと言えるのだが、
私は、どうも、わがオーナーにとって「癒し」の担当には向かないらしい。
ただ、誠実にあの方のために、お仕えするだけ。

失恋を打ち明けた夜。
私とヤンスカ様の間には、親密な空気が、確かに流れていた。

今、私がお慕いし、そして守りたい存在は、ヤンスカ様のみ。
まあ、お守りしたいなど、決してあの方の前では口にできないが。

「カーステアーズ、あなたって最高ね」
わがオーナーの言葉が、何度も何度も胸の奥によみがえる。
私は、あの方のお手をとるのが、精一杯だったが、


「リーアム、あなたって、感情が煙のように流れて、わかりやすいね」
「は、はあ?」
イワンと一緒だと、どうも調子がおかしい私だ。
「ふふっ、まあ、いいよ、気づかなかったことにする」
「え、何の事だろうか?」
「だから、いいじゃない、リーアム。
 でさ、愛しのオーナーのためのメニューはもう決まったの?」

私は、快適な空調のなされているはずのわが車内だというのに、
汗をふきふき、イワンに説明する。

「ヤンスカ様は、昔ベルギーの警官とちょっといい思い出があっただろう?」
「ウラー!ボクは、初めて聞くね」
「ブリュッセルの、グランプラスで、わがオーナーは、石畳にヒールをはさまれて
 転倒されたのだ。その時に、馬で通りかかったのが、ムッシュ・モロだ」
「へえ、どうなったの?」
「ムッシュ・モロは、あのお方を馬に乗せて、滞在先のホテルに送って行かれた」
「ボクも、そんなことされたら、ぐっとくるね」
「あのお方は、単純だから」
「で、オトコマエだったんでしょ。ヤンスカ様ってさ、まず顔ありきじゃない?」
「イワン、言葉をつつしみたまえ」
「だってさ、ホントじゃない、リーアム。なんだかんだ言ってもね、
 あなたもボクも、ヤンスカ様の好みのタイプなんだよ」

私は、言葉がでない。

「ねえ、で、ムッシュ・モロとはどうなったの?」
「たしか、奥様を亡くされて、小さなお嬢さんと暮らしておられたのだ。
 ヤンスカ様は、例によって、勢いよく接近されたが、
 お相手は、自分の身の上を気になさってか、デートにいらっしゃらなかった」
「ああ、お気の毒な愛しのオーナー!」
「それで、我々はパリに行って、気晴らしをしようと出発の準備をしていたのだ」

気のせいか、イワンと私の距離が近い。

「ブリュッセル・ミディ駅から、動き出した私たちの目に飛び込んできたのは
 ムッシュ・モロと、その手に掲げられた赤いバラの花束だった」
「あのさ、リーアム。この列車は自由なんだから停めてあげたらいいんじゃないの?」

おっしゃるとおり。
しかし、イワン、早く君もあのお方のパターンに慣れなくてはな。

「ヤンスカ様は、劇的なのがお好きなのだ。停車して、世間話をしたら
 平凡な展開ではないか、イワン」
「でも、珍しくうまくいきそうだったじゃないか」

私は、ぶるぶると首を横に振る。

「わがオーナーは、両手を伸ばしてこうおっしゃった。
 【わたしたち、こうなる運命なのねラファエル!いつまでも、忘れないわ】」

「ははっ、それは、ウソだよね。だけど、愛しのオーナーは順調なのも怖いんだね」

ようやく、私は本題に入る。
「でだ、イワン。成功体験である、あのベルギーの日々を思い出すべく、
 パリからシェフを招いている。ムッシュ・シャロームだ」

「え!あの、ゴー・ミヨの20点満点の彼?」
「ピカルディ料理を用意する。たしか、あのお方はムッシュ・モロと
 ブリュッセルの下町のビストロで、チコリを召し上がって、
 お気に召していたからな。」
「で、わがオーナーと、君は、とても深く繋がっているから、
 今から試食に付き合ってもらい、感想が欲しいのだ」

そこへ、ウー様のベビーシッターであるマリアが
そわそわとバラを生けた花瓶を運んできた。
ちっ、目当てはイワンを観ることだ。

「やあ、マリア。こちらで会うのは初めてだね」
イワンは、相手が欲しがる表情を、きちんと提供する。
天使の祝福でも受けたかのように、マリアは赤面し、
満足げに会釈して去っていく。

「リーアム。ボクは彼女の癒しの天使だよ。ただ、それだけ。
 あなたの方が、ずっと、オーナーのことを理解しているさ」

「そしてね、ボクはあなたのことを、よく理解しているよ。
 リーアム、愛しのオーナーは、赤いバラ、苦手だよね、
 あなたは、ちゃんと彼女の好きな色のを用意してるじゃないか」

それは、夕焼けか、朝焼けか。
切ないまでの柔らかな色味を帯びたバラ。

「ボクは、そのバラの花ことばは知らない。
 でも、その名前は知ってるよ、ダーリンっていうんだよね」

じっと、正面から私の目をみつめて、そして顔中で微笑み、
さ、食べようと屈託なく私の手をとるイワン。
私はいったい、どうしたのか?






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Last updated  2012.08.10 01:45:16
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