COOL!ダウン 妄想エキスプレスへようこそ

COOL!ダウン 妄想エキスプレスへようこそ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

ヤンスカ

ヤンスカ

Calendar

Favorite Blog

もうすぐ検査入院! New! モグちゃん8704さん

ゆっくりと、のんび… ♪みずきママ♪さん
ダウン症児の育児ブ… 派遣のヒロさん
SUZUKA☆SMILE suzumam0717さん
なっち&るんのおうち momoko8655さん

Comments

ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.08.12
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
珍しく、ウー様がお母上なるヤンスカ様とご一緒に、サロンカーでくつろいでいらっしゃる。

ウー様のシッターであるマリアは、夏季休暇中。
盆休み、ではない。彼女はカトリックであり、
8月15日の聖母被昇天祭を故郷で過ごすための休暇なのである。

まあ、子供というものは、見ていて退屈しない。
が、思いもよらぬ行動に出られるもので、私としては緊張も強いられている。

「おとーさん」
ウー様に、呼びかけられて、仰天する私。
「カーステアーズ、ごめんなさいね、この子は、大人の男性をみると、


私は、実は、ウー様のお父上を存じ上げない。
ヤンスカ様から、聞きだした情報から、想像するだけの存在である。
なんでも、ウー様は、お父上にそっくりなお顔なんだそうだ。


ヤンスカ様が、まだ結婚生活を続けていらっしゃった頃。
その時代にも、私はこの妄想鉄道を運営し、数々の旅をご一緒してきたものだ。
しかし、今のような関係には程遠いものだった。

「カーステアーズ、聞いて。今度、この子は彼に会うのよ、父親に」
「さようでございますか。ウー様もお喜びでしょう」
「とっても、久しぶりに話をしたのだけどね、
 彼は、相変わらず魅力的だったわ」

どう、答えろと?


「私はね、初めて彼を見た時に、絶対この人と結婚するんだわと感じたのよ」
「そんな、確信が持てるものなんですか?」
「空から降りてきたのよ、カーステアーズ。確信がね」
「で、本当になったのでございますね」
「私にとっては、わかりきっていた、未来だったのよ」


ヤンスカ様が、私をにらみつける。
「ずいぶんと、意地悪ね、カーステアーズ」

だって、おかしくないか。
最後には傷つけあって、別れに至ったお二人である。
そんな、過去の男に、まだ魅力など感じるものなのか。

「あの人、とても可愛い人だったわ」
そう、ウー様のお父上は、年下だったはず。
ヤンスカ様のことだから、せっせと母鳥のように向き合っていたのだろう。

「色々なことがあったわね、最近は。嵐が去ってみて、
 私の心が静まっている状態で、彼の声を聴いてみたら、
 純粋に懐かしさと、あの頃抱いた思いがよみがえってきたのよ」

「まだ、思いが残っているということでございますか?」
「ちがうのよ、カーステアーズ」

そういって、ヤンスカ様は微笑む。
「今思っているのではなくてね、そう感じていたあの頃が、愛おしいという話よ」

「あの人はね、旅人」
「あなた様も、そうでしたね」

ヤンスカ様は、懐かしそうに思い出し笑いをなさる。
「私たちは、趣味も興味もバラバラだった。
 普通にしていたら、絶対に交わらなかった人よ。
 でも、旅というキーワードで、二人は繋がって、お互いを知ったの」

「いいところも、たくさんあったのよ、カーステアーズ。
 何と言っても一緒に暮らしたのですからね、この私が家庭をもってね」

こればかりは、全くもってヤンスカ様の奇跡に違いない。
かなり女性としてはアレで、無頼で、たいていの男性ならば
あのお方を恋愛対象外の箱に入れるはず。
または、異性の友人として、面白おかしくつきあう仲間の箱に入れるか。

「あなた、この間、言ったわね。過去を慈しむ思いで眺めることができる日がくると」
「ええ、さようでございましたね」
「私は、今回の失恋で、思わぬものを手に入れたわ」
「と、申しますと?」
「今さらながら、ウーの父親への色んな思いよ。
 二人の一番末期の姿でなく、本当に幸せだった日が存在したことに対する、感謝」

ヤンスカ様は、身を乗り出して、私に向き合う。
「ねえ、聞いて、カーステアーズ。私ね、一番愛されているなと感じた出来事があったの。
 それは、二人で京都に出かけて、インド料理を食べた後にね、
 ちょっと、感じのいいカフェで腰かけていたのよ。
 お洒落なお客が、映画のワンシーンのようにくつろいでいたわ。

 でね、私、急に気分が悪くなったと思った瞬間、
 その場でマーライオンになってしまったのよ」

かの、マーライオンですか!
あの、お口からビュウ~っと噴いてるアレでございますか!


「店中が、一瞬にしてどよめき、私は気づいたら、自分もテーブルも
 とんでもないことになっていたのよ」

私は、顔色を変えぬようにしながら、うなずいて聴く。

「彼はね、さっと動いて、店の人を呼び、私を労わりながらも、
 笑顔のままで手早く掃除をし、周囲に謝り、
 私をふいてくれて、ごく自然に外へ連れ出してくれたわ。
 すれ違う人が、私の姿をじろじろ見ようが、私の手を取り
 いつも、これが当然だといわんばかりで、新しい洋服を買ってくれたわよ」

たしかに、素晴らしいホスピタリティだ。

「ちらりとも、嫌悪感を示さなかったわ。茶化しも叱りもしなかった」

ヤンスカ様は、ウトウトしているウー様の頭をなでながらおっしゃる。

「今思えば、たいした人だったのよ、彼は」

もしかしたらと、私は案じる。
再び、お二人が寄り添うこともあるんだろうかと。

「カーステアーズ、お馬鹿さん」
「何がでございます?」
「あなた、私がまだ未練でいっぱいだって、思っていて?」
「そのように、とれないことも、ございませんね」
「ちがうわね」

さあ、飲みましょうとヤンスカ様がグラスに向かって顎を上げる。
ウズベキスタンの赤ワインである。
「あの人の、数年前のお土産よ、カーステアーズ」

「私や彼のような人種はね、近寄りすぎてはいけないのよ。
 ふっと、たまに会うとね、それはそれは、魅了されるのよ、お互いにね」

「一緒に舞台に立つのはいいのよ、でも、舞台裏でまで過ごすのはダメな相手よ。
 結婚生活は、舞台裏だらけでしょう?
 こうして離れてみて、忘れていた彼の良さを、再評価できるようになった、
 ただ、それだけ」

「しかし、それは、やはり惚れ直したということでは?」
「あなたは、友達に惚れたりしないの?カーステアーズ、人として、よ」

残念ながら、私は結婚したこともなく、今後もするつもりもなく、
ましてや、わがオーナーの独特な価値観が、たまに理解不能なんである。

「わからないのね?カーステアーズ」
「はあ、なんとも不可解なのですよ。あなた様は、あんなに悲しまれて、
 苦しんでいらっしゃいました。私は、はやく元気になっていただきたかった。
 タオルミーナへお連れしたのも、そういう理由でした」
「訣別しろと、あなたは言ったわね」
「ええ、あなた様には、自由でいらしていただきたいから、
 笑ってお過ごしいただきたいからです」

「だからよ、カーステアーズ。あなたのおかげで、新しい恋にもぶつかり、
 そして、壊れて、やっと、やっと、スタートラインに立ったのよ」

だから、どうしてそれが、ウー様のお父上の再評価につながるのか。

「恨みつらみを、脇においてみたらね、
 ああ、この人は家庭の中に波乱万丈な風を運んでも仕方がない、
 なんだか、スッキリと認められたのよ。
 優しい人よ。ルックスも気前もいいの。
 エスコートが、素敵で、デートするのが楽しかったものよ。
 きっと今もモテているはず。
 舞台裏にいる時には、それが私を苦しめたけれど、
 今はまたどちらも舞台でしか会うことはないわ。
 だからこそ、素直にあの人の好さを懐かしく思えるのよ」

なるほど。私はまだ微妙な気持ちではあるが、一応納得した。

「ウーには、いつまでもステキなお父さんの幻想を与え続けてほしいの。
 そこだけは、誠意のある人だと思いたいの。
 で、あの子の前では、私たちは、どちらも、ウーを心から愛していると
 表現しつづけるわ」

「でも、また、ウー様はお父上と離れ離れになるでしょう?」
「カーステアーズ、この子はね、旅人の息子よ。
 いつも、ウーは彼と会って別れる時に、また父親が遠くへ長い時間旅に出た、
 そう、受け止めているのよ」
「悟っていらっしゃるのですね」
「ええ、お父さん、またお仕事に行っちゃったって、言ってるわ」
「いつか、ウー様が、ご両親の眺めた世界の光景を、
 ご覧になれたらよろしいですね」
「いつかね、父親と二人で旅に出してやりたいというのが、私のひとつの夢よ」

私がグラスに口をつけないものだから、
ヤンスカ様は、再度うながす。

あなた様は、これから、どんな夢を求められるのでしょうね。
相変わらず、ささやかな一目ぼれと、気まぐれと、大騒ぎに満ちた時間を
私は、あなた様の傍らから見つめ続けるのでしょうか。

「ワインって素敵ね、カーステアーズ。時間とともに味わいが変わるんですものね」

何が、変わるんですものね、だ。
私は、変わらない。何があろうと、ヤンスカ様への見方は変わらないのに。

「カーステアーズ、何を怒っているの?」
「いえ、何も怒ってなどおりませんよ」
「まるで、私の男みたいに、拗ねるのねえ~」

ヤンスカ様が、立ち上がって私に近づいてくる。
私の腕をとり、私の好きな、ちょっとだけ低めの声でおっしゃる。
「お願いがあるのよ」と。
動揺を隠しながら、わがオーナーのお顔を見つめると

「さあ、景気づけに、エールをきってちょうだい!」

落胆なんて、してないぞ私。
これでいいのだ、これでこそ、わがオーナー。
「腰が入ってないわ、カーステアーズ!甘いのよ」
ちがう甘さを期待した私こそ、甘うございましたですとも。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.08.12 20:45:00
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: