関本洋司のblog

9LOVE沖縄レポート・メモ


9LOVE主催の沖縄を考えるシンポジウムより抜粋。
パネラー:石垣金星さん(文化伝承者)、石垣昭子さん(染織作家)、辻信一さん
(文化人類学者、環境運動家)
司会:藤岡亜美、まやラミス

~西表島の石垣金星さんの紅露工房のビデオを見ながら話をした三人で話をした
後、沖縄西表島から来た金星さんが八重山の歌を歌い終わる。(拍手)


●金星さん「あのー、最近沖縄の歌がよく歌われるんですが八重の歌とは別です。
~沖縄の歌とどう違うかというと、沖縄の歌は時の権力者に奉納するために歌う、
八重の歌は神様たちに捧げる。神に捧げる歌があるんですが、楽器や手拍子は入れ
ない。もっと歌うんですが。酒があれば(笑)」
●辻さん「しつこいですね(笑)。次にリゾートの話に行きたいのです、リゾート
ですね。前にスローツーリズムについて話しましたが。紅露工房のある地域は何と
言いましか?」
●金星さん「上原」
●辻さん「上原はバランスのとれた場所で、美しい浜が広がります。それが工房と
すぐ先のところですよね、そこで大型リゾートが始まります。さっき昭子さんの創
った衣服について、宇宙を見に纏う(=コスメティック)と言いましたが、浦内川
はその大動脈だと思います、その聖なる浜です。リゾートの建設をめぐってどう考
えているか金星さんにうかがいたいと思います」
●金星さん「今、二年前に突然木が伐採されて、何が起こったかというと島の人間
に何の相談もなく工事が始まりました。その後、裁判を起こし、私は原告です。町
長が2001年に日本一の金持ちになったユニマットの社長を神様と勘違いして、何が
何でも誘致する、住民の言うことを聞かないそういうむちゃくちゃな開発を始めま
した。その後二期三期工事を強引なやり方で行ない、開発を続けました。
実は先月(8月)の28日にあった町長選挙でリゾート開発を薦めて来た村長は見
事落選いたしました。それは島の人の良心が勝ちました。私は環境に負担のかから
ないエコツーリズムを行なうべきだと23年間、言い続けています。七年前から西
表エコツーリズム協会をつくって活動しております。地元が中心に沖縄県、環境庁
もそれに賛同したその時期に、時代遅れの計画が持ち上がったのです。
開発に反対するのはどうしてかというと、私にとって自分の仕事が汚される、とい
うことと西表島にとっては浦内川は特別な場所です。神様が毎年8月15日になる
と集まるとされる場所です。神と人間が一晩だけ一緒にいることが許される。現
在、観光地で有名になっていますが、8月15日になると人と神様が集まり、提灯
が並べられます。そこでは欲に絡んだことをそこでしてはいけないと言われていま
す・・・。開発計画は今回で四回目です。・・・全部失敗するのは明らかです。そ
れは島の文化を無視しているからです。
それから、浦内川を日本魚類学会が30年間調査していますが、何と360種類の
魚類が棲んでいる。世界でトップクラスです。四万十川でも120種類です。それ
と鳴き砂があります。綺麗な鳴き砂です。~これらは私たちだけのものではなく子
供達に代々残さなくてなならない。ですから開発を待ちなさいということで裁判を
起こしています。インターネットで調べれば詳しいことは判りますし、できれば原
告に加わって下されば幸いです*」
(*注:当日配ったカードの中に原告団のwebのURLがあります。)
 http://www5e.biglobe.ne.jp/~irimira/
●辻さん「実は僕も原告のひとりにさせていただいているのですが、金星さんのお
っしゃった言葉で印象に残った言葉があります。大型リゾート開発にはいろいろな
問題がありますが、金星さんはまず、外の時間が持ち込まれる、島の時間が壊れ
る、ということをおっしゃっていたでしょう。僕の言葉で言えば<スロー>という
ことになりますが、そのことを説明してくださいます?」
●金星さん「リゾートで土地が買い占められたのは1972年からで、一坪一セン
トという煙草一個の値段で土地が買収されていきました。一番心配しているのはリ
ゾートによって島の時間が壊されて行くことです。人口1000人の島に2000
人の従業員がやってくる。私の仕事では西表のゆったりしたリズムがいいのです。
私の仕事では、すべて自然のリズムでないと仕事が出来ない。日が昇って日が沈
む。月が上がって月が沈む、ゆったりした暮らし、これが西表の暮らしです。
島の文化を守らなかったかつての開発計画は全部失敗しています。今度も失敗する
でしょう。
別にリゾートホテルをやっつけてやろうという気持ちはありません。ただ、あなた
たちは間違っていますよ。バチが当たらないうちに帰りなさいと言っているだけで
す。いずれバチが当たるでしょう、と私は思っています」
●辻さん「その、リゾートを今作っている人の問題もありますけど、我々のような
本土から出かけて行く人間達がそのリゾートを使わなかったら、そのリゾートは成
り立たないわけですね。で、僕自身も原告になっていろいろ考えるわけですけれ
ど、やっぱりリゾートっていう快楽っていいましょうか、ある種の快楽を求めに僕
ら行くわけですよね。沖縄は返還以降、もの凄い勢いで海岸という海岸が買い占め
られて、リゾート開発されていきましたよね、そしてその波が時間はかかったけれ
どいよいよ何度か形はあったわけですけどああいう形で西表にも上陸したってこと
なんだけれど。そこには利権にすがる人々の快楽、そういう人の快楽もあると同時
にやっぱりそういうリゾートを求める我々の快楽の感覚も同時に問われているなと
思います。
で、今ここでも聞いていただいたし、金星さんも歌を通じてみなさんも一端に触れ
ていただいたんだと思うんだけど沖縄には豊な暮らしが残っている・・・。
われわれは今、二種類の快楽の間で選択を迫られているんじゃないか、という気が
するんです。
実は僕今日は9月9日、9という一つのキーワードでここに集まっていただいてい
るわけだけれども、なにか経済成長だとかお金、物質的な豊かさの前では、何か本
来の家庭の、地域の安心だとか社会の平和だとかそういうこともだんだん色褪せて
あんまり魅力的だとは思えなくなって来ている。僕らの社会では、そういうことが
起こっているじゃないのか。
そして西表に行く度に、その対極にある豊かさっていうんでしょうか、しかも何百
年何千年おそらく続いて来た、はやり言葉でいえば持続可能な快楽が、そんなもの
がそこにまだの残っていると感じます。まあそういうことを感じたりします。え
ー、そろそろ次の話に移らなければならないと思うんですけれど、僕がこの8月ち
ょうど半ばに西表島におじゃましていた最中に、米軍ヘリの墜落という象徴的なニ
ュースがありました。
沖縄のテレビではそれを長時間に渡って解説していましたけれど、東京に帰ってく
ると、オリンピックにかき消されて記事がすごく小さいんですね。その後どうなっ
たのか探すのも難しい、そういう状態でした。
それが司会者からも紹介があった普天間のへリ墜落、そして丁度今日、辺野古沖の
ボーリング検査が始まったという急な展開につながっている訳ですけれども。
ではその模様のビデオを見てみましょう。金星さん昭子さんにも見ていただいて話
しをうかがいたいと思います」

~ここで辺野古沖ボーリング調査反対のビデオ(24分)を見る(このビデオには
座り込む人達の冷静な対応、歌や勉強会の模様、さらに機動艇で辺野古沖の砂浜に
上陸する米軍の姿などが映っている)。米軍基地移転の下準備のアリバイ作りのた
めのボーリング調査がとうとう始まったという辺野古沖の現地からの電話によるレ
ポートの後で。

●辻さん「何か昭子さんの方からありませんか?」
●昭子さん「今あの浜辺にが機動艇がダッと上がって来て、戦争さながらの光景を
見て、すごくつらいっていうか胸が痛いですね。その何十倍もの戦車とあれ
は・・・そんな話はしたくない、したこともありませんけど今日は平和について考
える会ということなのではじめて話しますけれど、あの映像を見て衝撃でした。
昔、あれとおなじような兵隊たち、あれと同じような戦車がずらっと囲んでいまし
た。沖の方からポンポンポンポン雨のように光が跳んで来た中を、母につれられ
て、隠れたこと覚えています。
ただ(辺野古沖のビデオの)あの光景を見ると戦争、闘いさながらですね。今平和
の中でそれを見るととても痛いですね、あの戦車を見ると。そういう現実があると
同時に、沖縄にはもうひとつまた豊かな唄や三線が、手仕事が残っている。二面性
をもっている。歴史の中で次に伝えものが残っている。昔のあれに戻る。あるひと
は『大和が沖縄に復帰すればいい』と言っています」(会場から拍手起こる)
●辻さん「ああそうか」
●昭子さん「いろんな面で、憲法にしても文化にしても人の生き方にしても豊かな
ものが沖縄には残っている・・・」

このあと、昭子さんから、物がなく紙がないために砂浜の砂に五十音の字を書いて
教育を受けた時代の話や、辻さんから今の社会が開発かそれとも昔ながらの暮らし
かという「前か後ろか」の二者択一を迫っていることの欺瞞性と危険性の指摘があ
り(「このままだと『・・仕方ないよね、ジュゴンも可哀想だけどしょうがない
ね』というところに僕達はまた行ってしまっていまうんではないかな、という気が
しています」)、最後は金星さんの歌によるカチャーシーで賑やかに会は幕を閉じ
た。9パンを買う人や、話し合う人たちでいつまでも会場は活気があった。
環境と暮らしを考える人々のこの熱気が、辺野古で座り込みをしている人達のもと
に、いや世界の人達に届いて欲しいと願わずにはいられない。

参考サイト: 

リゾート原告団
http://www5e.biglobe.ne.jp/~irimira/

西表エコツアーで石垣夫妻にお会いし今回スタッフに加わった「よんな~」の
web
http://www.k2.dion.ne.jp/~iriomote/

9LOVE
http://www.9love.org

辺野古、ジュゴンの海に関する取材をした、
 フリーペーパーシナプス
  http://www.synapse-fp.jp/

文責:関本
(なお、イベントのはじめに、日本国政府の強制退国処分に抗議して国連
大学前で座り込みをしているクルド人家族のアピールがあり、温かい拍手
で迎えられたことを追記しておきます。)


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