You’s World

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エド×ウィンリー



揺らぐ事なき信念。

どこか 人を寄せ付けぬような

そんな色。


不意に見せる 弱り切った微笑み。

アタシは。

何をしてあげられるのだろうって

すっかり暗くなった部屋で 窓の外の

貴方と同じ色の月を見ながら

考えるの。


『根拠』

「あぁもぉ!!!また派手に傷つけちゃって!!
 この間 言ったばっかでしょぉ?!最近は材料費だって馬鹿にならないんだからぁ」
傷だらけの機械鎧。
破損した部分。
毎日のように戦っているんじゃないだろうかと思わせる。
だけど
疲れなど 微塵も感じさせないように常に気を張って頑張っているのだと
一緒に旅をして アタシにも分かった。
「悪かったって。だけどしょうがないだろぉ??
 俺の進む道に 争いは絶えないんだよ」

それほど

進むべき道は

簡単なものではない。

「アルも。傷だらけね」
兄のエドの向かい側のソファに腰を落ち着けている
全身 鎧の弟 アルの体にも無数の傷が走っている。
「うん。痛くはないから平気なんだけど
 もろくなっちゃったら困るからね。
 兄さんの腕も壊れちゃったから メンテナンスに寄ったんだ」
ごめんねって 空っぽの鎧の中から少しだけ響いて聞こえる声は
まだ幼くて。
なのに しっかりしてる。

そんな声に ふっと漏れる苦笑。

「いいのょ。アタシの仕事だしね?
 にしても ひどい壊し方してくれたわね?エド?
 あんた アタシが丹誠込めて整備している機械鎧をなんだと....」
「だぁからっ!!!!悪かったって!!!壊すつもりはなかったんだょ!!」
そっぽを向くエド。

弟より子供っぽい兄は

アタシ達の前じゃ 本当に 子供だ。

「根が子供なのよね~...」
「なんだとっ?!」
「あぁもぉっ!!!動くなっ!」
思わず手に取ったスパナで頭を小突いた。
「ぐぁっ!!!」

どうやら 小突いた程度ではすまないらしい。

「まぁ 大人しい方がかえってしやすいしね」

「ウィンリー それは言い訳に似て...」
「何?アル」
「ひっ...いえ 何も」

こんな時間が アタシは 大好きだ。


「じゃ 動かしてみて?」
整備し終わった機械鎧を身につけている体は
少し 細いけど
やっぱり 男の子だって思わせる筋肉のつき具合。
「おぉ。こんなもんじゃね?」
悪くもなく 良くもなく。

いつもの感想だから
それ以上 いい感想を望んでいるわけでもないアタシは
さっさと後かたづけを始めた。


突然に名前を呼ばれた。
「ウィンリー」

「ぇ?」

振り返ると 金色の瞳と出逢った。

「ありがとな」

ニッと笑う エドの顔は

まだあどけなさが残るから

そんな顔に ドキッとする。


『急に何よ!!!』と 本当は言ってやりたかったけど
高鳴る鼓動に飲み込まれて
ただ黙ってこくんと 頷くことしか 出来なかった。



好きだって

これが好きだという気持ちだと
アタシは気付いていた。

口に出して言えたなら
どんなに楽になるかって。


だけど

言えない。

言えなくなっちゃったんだょ。



-あの日.....

機械鎧の珍しい部品が手にはいると聞いたアタシは
買い出しに出かけていた。


エドがとってくれた宿に
夕暮れも近いため

何より エドに会いたいため
早足で 向かった。


ロビーを横切ろうとしたとき
大きな柱の影に 瞳と同じ 金色の髪の毛が見えた。

『ぉ?エド?何してんだろ...』

脅かすつもりで 後ろから忍び寄ったとき。

エドは

1人じゃないことに気付いた。

「エドワード君が 好きなの....」

頬を赤らめて言う アタシと変わらないくらいの女の子。
確か....
この街に着いたときにエドに歩み寄ってきた女の子だ。

昔 エドに助けてもらったとか言ってた。
エドも 覚えていたから それは嘘じゃない。


「根拠は?」

エドの口から発せられた言葉は 意外にも冷たいものだった。

「ぇ?...根拠なんて....」

「俺は錬金術師だ。
 一種の科学者だ。
 だから 根拠ないモンは信じらんねぇんだょ」

「根拠ならっ....」

「ごめん。
 俺の進むべき道に お前を連れ込むわけにはいかねぇから」

「過酷だから」


女の子は黙って頷いて ロビーの奥へと消えていった。


『根拠....』
アタシのこの気持ちにも きっと根拠なんかない。

だから言っちゃいけない。


そう 悟った。



「....ンリー....ウィンリー!!!」

「ぇ?」

窓辺に頬杖をついた手が ずるっと落ちた。

「お前 何やってんだょ。晩飯も食わねぇで」
「ぇ...?あぁ。ちょっとダイエットを....」
「何いってんだょ」
ブハッと吹き出したエドを横目に

アタシは 明るい気分にはなれなかった。

笑わない 反抗もしないアタシを
エドは 不思議そうにのぞいた。

「マジでどぉしたんだ?」


言えるわけもない。


「大丈夫ょ」
本当 大丈夫だから。

「嘘つけ」

「大丈夫じゃないなんて 根拠 ないじゃない」

「その涙が 何よりの証拠。
 俺が お前が大丈夫じゃないと思った根拠だよ」

泣いてた。
アタシ。


後から後から
涙は頬を伝い 床を濡らす。

まるで

言えない気持ちが

溢れ出るように。


「ごめん。今は泣かせて」

「嫌だ」

顔を上げると 薄暗いこの部屋でも分かる 金色の瞳。


「アタシ」

エドが好きなの。


「でも 根拠なんてないの」

いつも 意地を張っているエド。

だけどアタシの前で見せてくれる 弱り切った微笑み。

そんな微笑みを見て

アタシは 本当 貴方に何をしてあげられるだろうって

考えるの。

アタシは貴方に
アタシより頑張っている貴方に
何もしてあげれない。

でも 側にいたいと
頑張りすぎている貴方の側にいて
少し 貴方が疲れたときに 寄りかかれるように

側にいたいと。


この気持ちに 根拠なんかないの。


「でもね」

この気持ちにね

恋にね

根拠なんてないのょ。

人間の気持ちなんて 心理なんて

言葉じゃ説明できるもんじゃない。
言葉じゃ証明できるもんじゃない。

アタシは この気持ちを知っているから言えるの。

「だから ごめん」

アンタが必要としている根拠は アタシ 持ち合わせていないから。



気付くと
エドの腕の中。

ぎゅっと背中に回された腕にこもる力。

「ごめん」



「科学めいたことしか言えなくて ごめん」

予想外の言葉にアタシは 動けなくなった。

「長い間 錬金術師をやっていると
 面白くないことばっか言っちゃうんだな。
 何でも 根拠だとか 証拠だとかなくちゃ
 錬金術の理論は成り立たねぇし」

だけどさ

エドはそう言って一層 腕の力を強めた。

「大事な事 忘れてたみてぇだ」


「人の気持ちは 理論づけられるもんじゃねぇって俺も分かってた」

「何で?」

先ほどまで力いっぱいだった腕の力が弱まって お互いの顔を見合わせた。

「俺が ウィンリーを大事に想う気持ちに
 証拠も 根拠さえもないからだ」


私が映る 金色の瞳。

吸い込まれそうで 

でも いつもは見とれない 温かさが入り交じっているように感じた。


「ホント?」

エドは答える代わりにアタシの濡れていた頬に口づけを1つ 落とした。

それ以上 何もいらなかった。


目の前にある 貴方の微笑みを

アタシが 作ったのだと

自惚れでもいい。


そう感じた。





翌朝 早くにエドとアルは旅路に着いた。


「いってらっしゃい」

「ぉぅ」

「いってきます」

いつもと変わらない会話。


だけど 少し違うのは

貴方がアタシに向けた 微笑み。



今日も月を見上げます。

貴方と同じ色の月を見上げます。

だけど

月が放つ光は 今もまだ どこか寂しげで

何者も寄せ付けないような 感じだけれど。

あの人の瞳は
違う。


「エド....」

風がアタシの声を 遠く遠く

辛く 険しい道を

信念と根気だけで突き進むあの人に

届けてくれることを祈って....。



*********後日談********************

「兄さん ウィンリーと何かあったの?」
「は?何でだ?」
汽車の中 ゆられる兄に問う 弟 アルフォンス。

「だってさぁ 家を出るとき
 兄さん ウィンリーに微笑んでたでしょう?
 ウィンリーも心なしか 微笑み返していたような気がするし」
「なっ....!!!!//////」
見られていると知らなかったエドは 顔を一気に赤らめて 否定した。
「べっ 別に何もっ」

「嘘付けぇ」

「なっ!!!じゃ 根拠を言ってみろ 根拠を」

「だって 熟年夫婦みたいだったもん」


エドはそれ以来 ウィンリーに微笑みを向けるときは
2人だけの時にしようと

心に誓ったのだった。

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