You’s World

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【存在理由】 第3話



声がした。

遠いようで でも近いようで。

反響する。


冷たく 静かに 澄んだ声が....




目が覚めると刹那はいろいろなものにつながれていた。
ため息をつく。

こうやって定期的に『殺魔族』の血を流しているのだ。
否 ふやしているのだ。
自分の中にある『殺魔族』の血を....
絶やすことがないように....


「お目覚めですか?姫」
「姫って呼ぶの やめてちょうだいっていったでしょ?紫遠先生」

さらりと流す紫遠は刹那の脈を計る。

「もう一度 ゆっくりおやすみ下さい。
 再び目が覚めたとき これはもう終わっているでしょうから」

そう言い残して紫遠は微笑んで静かにドアを閉めた。


「夢を...見たの」

また あの夢だった。
いつもの夢だった。

答えのない 夢だった....。



愛された記憶がなかった。

それを 寂しいとも思わずに育った。



「さっきから 何 泣いてんだ てめぇはよ」

声ではっとした。

ベッドの上に いつのまにか琥遠が腰掛けていた。
「な....?」
「終わってんぜ?いつものやつ」
「ぁ?ぇ...ぅん」

「で?」

聞かれたくなかった。
理由はなかったけど 聞かれたくなかった。

弱い自分を見せたくなかった....。


「てめぇ。馬鹿なんじゃねぇの?」

「は?!馬鹿って何...」

「何を無駄に悩んでんのかしんねぇけどさぁ。
 てめぇも人間なんだから いんじゃね?そぉぃぅのも。
 はけ口ぁったほうがよくね?
 俺で良ければ なってやらんこともねぇし」

にかっと笑う琥遠に アタシはいつも助けられてた。

...でも...

琥遠も いわば殺魔族に囚われの身。
アタシがいなければ 自由に 紫遠先生と 別の道を
幸せに 進んでいたのかも知れないと考えると。

その 

向けられる笑顔も

痛かった。

「大丈夫ょ。
 何が悲しい??何が辛い??
 私には必要のない感情よ。
 大丈夫」

琥遠の目が
辛そうに 細められたような気がした。

「刹那....
 お前も人間なんだぜ??
 辛いとか 悲しいとか 寂しいだとかさ
 感じることは出来るだろうし
 感じたところで 誰も文句はいわねぇぜ??」

文句....??
違う。
文句を言われるとかじゃないのょ。

驚いたことに 私は笑っていた。

「人間??
 その前に私は殺魔族なのよ。
 そんな感情....」

邪魔なのょ。

口にすることで
やっと 結論が出たような気がした。

「...じゃぁさ...??」

「さっきの涙は何だったんだょ」


私はベッドから身体を起こすとドアへと移動した。
琥遠はただ 私をとめず
視線で追うだけだった。

振り向き様に 琥遠に私はそっと 呟いた。

「悲しくなくても 涙はでるでしょう??」


琥遠は それ以上 何も言わなかった。


夢を見た。

闇の中 冷たい声が響く。

刹那は....刹那は....



「私が人間...??はっ...馬鹿にされた気分だわ」


「キーパ いるんでしょう??」
刹那は何もない空間に呼びかけた。
すると 何もない空間が 歪んだ。

「呼んだか??刹那」

「話があるのょ」

そこにはいつものような 蛇の姿の龍 キーパはいなかった。
代わりに 銀髪の長髪を束ね それと同じ色の少し つり上がり目の
年齢で言う 20代前半の出で立ちの男性が立っていた。

「用があるのか??」

「じゃなきゃ 私から呼んだりしないわょ」

「...ん。
 どうした??」


「殺魔族について 聞きたいことがあるの」

それ以上 キーパが何も言わなかったのは
刹那の瞳が....

人を狩るときの



殺魔族の瞳に なっていたから.....


街灯の下。
月明かりも届かぬ 闇。

広がる...闇。


街灯の光だけが存在を立証していた。


闇に融けるような 漆黒の髪。
風に舞う。

クスクスと
笑みをこぼした。

「刹那....逢いに来たわ」

ずっと逢いたかった

その少女は

血で輝く拳を 強く握り
愛おしそうに 眺めた。



刹那の瞳に
暗闇が表れた。

「どうしちまったんだ??あいつ」

琥遠は自室に戻り 先ほどの刹那の瞳について 考えていた。

「ぉゃ??どうしたんだい??琥遠」

なにやら深刻な顔をしているねと
紫遠がカルテから顔を上げた。

「ぃゃ...てかてめぇ 何で俺の部屋で仕事してんだょ」

「大事な弟とのスキンシップ時間だからね 今は」

「そぉかょ」

にっこりと微笑む紫遠は いつも余裕そうで...
時々 悔しくなる。
俺には余裕なんて どこにもねぇのに。

「さて どうしたんだぃ??
 そんな顔 どうもなくできるようなもんじゃないだろう??」

「ん....あぁ。
 ぃゃ...」

「姫のことかい??」

「なっ....!!」

驚いて 顔を上げるとそこにはやはり 余裕の笑みがあって...
「君が思い悩むときはたいてい 姫のことだからね」
僕らは兄弟で
いつも一緒にいたから わかるんだょと

何もかも 見透かされている...

「刹那...が なんか...変わったような...」

「どんな風にだい??」

「よくわかんねぇんだけど...
 なんか 殺魔族っぽいってか...」

「姫は元より 殺魔族だろうに?」

「それは...そうなんだけどょ」

何だか 腑に落ちない。

「そろそろ 時期なんじゃないのかな??」

「時期??」

紫遠はふっと笑うと
琥遠の頭をポンッと軽く叩くと

「君にもわかる時が来るさ。
 だけど 忘れちゃいけないよ。
 姫は 殺魔族 なんだ。
 普通の人間のようには生きることが出来ないんだょ」

「でも 刹那は人間だ!!」

ついカッとなった。
こいつの 俺を見透かした態度も
何もかもを分かっているような 余裕の表情も
嫌だと 思った。


「姫は 人間にはなれないさ」

「てめっ!!マジでいってんのか?!」

紫遠は少し 困った表情になり
小さく ため息をついた。

「君をそのように育てた覚えはないんだけどね」

「は??何言って....」

琥遠の言葉は最後まで続くことはなかった。
紫遠の拳が 鳩尾(みぞおち)に入ったのだ。
「...ぐはっ」

「考えすぎだょ 琥遠。
 しばらく休んで 整理すると良い。
 我々は 殺魔族に仕える身であることも忘れちゃいけない」


紫遠の顔に 不適な笑みが浮かんだのを

琥遠は 見ることは出来なかった。



「殺魔族は私 1人ではないでしょう??」

「どうしてそう思うのだ??」

刹那の瞳には 相変わらず 闇が広がっていて...
表情も 読みとれない。


「夢を見るのよ。
 声がする夢よ。
 父上でも母上でもない声」

声が聞こえる。

闇に凛と響く 冷たい声。

『憎むべきは 人。
 喰らえ 薄汚れた人間どもを。

 お前も殺魔族であるならば』

『殺魔族が 天下を取ろうぞ。
 お前の力は最強である。
 あやつの力は無敵である。
 さぁ 殺魔族が天下を取ろうぞ』

反響する。
浸食する。


「誰ょ??あやつって」


「我にも分からぬ」

「確かに お前は一人っ子だと聞いているが....
 幼きとき 従姉妹にあたる者が人間により 殺されたと聞いている」


「従姉妹...」


「しっかりしろ。
 お前は殺魔族の末裔であるぞ??
 揺らぐな」

「揺らぐ...??」

刹那はまっすぐにキーパの瞳を捉えた。

そこに広がる 闇 闇 闇....


「私が殺魔族末裔でしょう?? 
 現れるのが敵であれば

 殺すだけょ」

そして 笑う。

「私は

 殺すために生きているのだから」


部屋を出た刹那の背中を見つめるキーパ。

「殺魔族の血...か」

これほどまで 濃くでたことは
覚醒したとき。

それが今 また...


繰り返されるのは 歴史であるのか。


私の存在理由。
それは

人を殺すこと。


「誰よ・・・」
私の心の中に居座り続ける人。

笑う人。



「・・・・で?アンタゎ?誰?」

刹那は窓際に視線を向けた。


三日月の淡い光が

漆黒の髪に 王冠を宿していた。

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