「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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10万打記念フリィ小説 【続1】
これは【夏の泡】の続編です。
【夏の泡】をお先にお読みください。
僕を救っていたのは彼女の弱さでした
+紺碧+
空が青かった。
空気が澄んでいた。
鳥が穏やかに鳴いていた。
気が付けばいつも伝えたかった。
それなのに人を裏切った。
そう言葉にしたら、自分がいよいよ最低な人間だと自覚した。
なんて軽さで裏切ったと。
口にするのはこうも簡単なものなのかと。
強く握り締めた右手に血が滲んだ。
「傷、また開いてるよ」
暗がりの中、薄く笑うような声がする。
物音も無く現れたのは、見慣れてしまった銀髪の青年だった。
どうして僕の忠告を聞かないかなと青年は小さく溜息を吐く。
しかし、もとより自分が彼の忠告を聞くはずもなく、青年側も本格的に自分を咎めたことは一度も無かった。
「余り長い間完治させないでいると癖になるよ」
「あんたの腕が悪いんだろ」
「言うね」
ククと青年は小さく笑うが、反応する気はまるで起きない。
静かで薄暗い屋敷の中、彼の声だけが反響し続ける。
「弱さに浸るのは楽しいかい?」
銀髪の青年が喉の奥で低く笑う。
「いっそどん底まで墜ちると良いよ」
そうしたら下も見えなくなる。
小さな呟きは自嘲だろうか。
青年の視線が窓の外へ向けられる。
小窓の外に広がるのは、酷く澱んだ空だった。
ただそれなのに
それですら
「目が眩む」
耐え難い眩しさに目が眩む。
彼女の弱さはきっと似ている。
彼女の弱さは自分の理解の外にある。
それでも彼女のその弱さは。
その弱さが。
きっと自分を繋いで救っていた。
きっと今も
思い出すのはあの夏の日。
最初で最後の懐かしいはずのあの夏の日。
彼女があんなふうに笑ったのを久々に見た。
隣で熱心に何かを探す彼奴の視線の先を目で追って、あぁそうかと。
きっと初めて気がついた。
予感も何も無かったけれど、勿体無い程のそれを拾い集めようと前を向いた。
サイダーの泡が弾け飛ぶ。
昇る泡がキラキラと光を反射した。
いつか気が向いたらきっと一緒に
本当にそうだったら良いと思ったのと、頷いたら笑うだろうかと思ったのと。
だから何度も頷いて、同時に弱さも探していた。
もしかしたら、ただ声を聴いていたかっただけなのかもしれないけれど。
忘れたふりは想像以上に簡単で、想像以上に難しい。
噛み締めるような笑顔を見せたのは彼女の方だったけれど、それを噛み締めたのはきっと自分の方だった。
相槌を打って、何度も何度も噛み締めた。
だから
自分にはもう十分だから
「さよならなんだ」
相槌を打ち続けたのは、そんな理由。
あの夏の日にはもう逢えない。
side SASUKE - 紺碧(こんぺき)
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香稚 ハル様
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