You’s World

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【同じ空の下ならば】第3話



ぁぁ。きっと稲葉の声だ。
鬼って誰だ??

....もしかして 部長のこと もう鬼だとか呼んでやがんのか?!
下っぱのくせにっ!!

ここは師範として
一発しっかり言ってやらな。

俺はそう思って勢いよく振り向いた。

「ぶはっ」

視界をさえぎる空色のタオル。
慌ててよけると そこに稲葉の姿があった。

「てんめ 今 部長のこと 鬼っつったろ?! 」

「はぁ?? てめぇこそ何言ってやがんだ??
 鬼っつったらてめぇのことだろがょ。深愛」

そのままタオルを首にかける。

「.....は?? 俺が鬼?? 」

「たりめぇだ。
 てめぇ以外に誰がいるってんだょ。鬼」

.....なるほど。

稲葉の髪の毛は・・・・

「ぬれてんぢゃんかょ」

「汗だょ!! 汗!! ダッシュで4周だぞ?!
 乾いたのもつかの間ってやつだょ!! 馬鹿!! 」

だぁっと意味不明な雄たけびをあげると
頭をぶんぶんと振りかぶる。

「何やってんだ??」

「汗飛ばし」

俺はため息を盛大について 首にかけておいたタオルをまた稲葉の頭にかぶせた。

「な?? 」

「馬鹿。風邪ひくっつってんだろ。
 そのタオル くれてやっから それ使えっての」

稲葉はしばし無言でタオルを首元に垂れてきたタオルを眺めていたが
小さな声で

「サンキゥ」
とつぶやいた。

「てか今日はもう上がりだから。着替えてこいょ」
そんで解散。

俺もべたべたした体を早くどうにかしたい。
更衣室にひたひたと裸足で向かう。

「胴着に着替えてるってことは更衣室の場所 知ってんだろ??
 そこにいけょ。隣にシャワー室あっから」

振り向きざまに付け加えて
「んぢゃな」
と 背を向けた。

稲葉は何も言わなかった。

別にそれがどうといったわけでもねぇけどな。


シャワーを浴びて
髪の毛も乾かさず タオルを首からかけるという
鈴子曰く俺スタイルで更衣室を出た。

もちろん制服は着崩している。

女子は男子と違って着替えにもシャワーにも案外時間がかかっから
もう誰も残っていないはずだ。

というかいつも俺が最後だし。

男子更衣室の電気も消えている。

『がちゃっ』と乾いた音が
誰もいない道場の中に響き渡るのを確認したあと
渇いたのどを潤すべく 自動販売機のある中庭へと足を向けた。

小銭をポケットから取り出し自販機へ突っ込む。
昼間飲んだ柑橘系のジュースはもういい。

今はお茶がのみたかった。

迷わずお茶を選択する。

パックのお茶が落ちてきた。
俺は手に取ると 空を仰ぎ見た。

星が出ている。
なら歩いて帰るか。
ストローをさして 校門へ。

校門に人影あり。

電灯によって作り出された長い影がゆらゆらと揺れる。
いつもは気にしない。
というか 今日も気にしない。

「深愛」

影がしゃべった。

無言で顔を上げる。もちろんストローをくわえたままで。

「ん?? 何だ 稲葉じゃねぇかょ。どした?? 」

そこには胴着と学生かばんを手に 稲葉が立っていた。

「ぃゃ...別に」

稲葉は下を向いた。
はぁ?? 意味わかんねぇ。じゃなんでここにいるんだょ。
という言葉は再び口にふくんだストローに吸われた。

「んじゃ 一緒に帰るか?? 」

言うつもりもなかったことばが
口をついて もちろん ストローまでもを押し上げてでてきた。

「ぁ。ぁぁ」

稲葉は小さく答えた。

「稲葉はどっち方面なんだ?? 」

「俺?? ぁぁ COMマンションに越してきたから」

「はぁ?? マヂで?? 俺んち そこぃらだけど」

「じゃ 一緒の方向ってことで」

・ ・・なんだか会話が意味不明。

まぁ いいか。

俺らはなんとなく一緒に帰った。

「ぁ。そいえばさぁ
 稲葉 『OCEAN’S BLUE』って雑誌のモデル
 『稲葉 遼』と兄弟なんか?? 」

「ぁ?? 遼?? ぉぉ。三つ子だけど?? 」

「・・・・・はぁ?? 」

双子ならまだわかる。
よくある話じゃねぇか。

でも三つ子って珍しくね??

「三つ子って あとの一人は?? 」

「さぁ」

はい。俺的に理解不能。

「意味わかんねぇんだけど」

「小さいときに死んだって聞いた」

淡々とそのようなことを簡単に語る稲葉。

何を思っているんだろう。
俺はきっと 踏み込んではいけないとこまで踏み込んじまった。
でも ここで謝るのもどうかと思った。

「そぉか。
 でも遼って奴と稲葉 街とかで間違われね?? 」

「ん。そぉだなぁ。割と」

今のは肯定の意味なのだろうか。
それとも否定??

「まぁ 俺は絶対見分け つくけどなぁ」

パックがジューっと最期をとげた。

「へぇ。一応 三つ子だし 区別つかんと思うけど」

「は?? 何言ってんだ??
 遼ってヤロウとお前 雰囲気とか全然ちげぇし」

てめぇ ナルか?? って笑ってやった。

「....へぇ。区別つく奴の方が珍しいと俺は思うけど」

「そぉかょ。それはどぉも」

街頭の下にあるゴミ箱につぶされたパックを投げ入れる。
ナイッシュー。

「てか てめぇ そんなに話す奴だったんだな」

稲葉は少し驚いたような顔をしたような気がした。
何せもうあたりは暗くて 表情まで明確に読み取ることは不可能だったのだ。

「周りに合わせることはしねぇだけだ」

直感。
そぅ かっこよく言えばインスピレーション。

こいつは
俺と 同類だ。

「おっしゃ 同盟くんだりぃ」

「は?? てめ 何言ってんだ?? 」

「同盟だょ。ダチってガラでもなくね?? だったら同盟でいいじゃんょ」

自分でも意味不明だと思った。
だけど
なんだかインスピレーションがそう告げてた。

「お前 予測不可能のとこがぁんだな」

くくくとかみ殺した笑い声が聞こえる。

「おぉともょ」

ニッと笑い返す。

「んじゃな。俺 こっちだし」

明日 遅刻すんなょと後ろに手を振る。

「ぁ。深愛!! 」

「何だょ 叫ぶな!!恥ずぃだろがょ!!」

「・・・・お前こそ 遅刻すんなょな!! 」

「たりめぇだろ!! あほ!! そんなことでけぇ声で言うんじゃねぇ!!」

暗くなってたけど
あいつが笑ってるような気がした。


明日から
学校が楽しみだ。


.....ん?? なんでだ??







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