怪談「病床に現れる美少女」
入院していた私は、ある夜、看護師Aさんから耳を疑うような話を聞いた。彼女が語るには、この病院には「病床に現れる美少女」という伝説があるという。
看護師Aさんによると、数年前、ある病棟で不思議な出来事が起こった。患者Bさんは、深夜に目覚めると、自分のベッドの足元に、白いナイトガウンを着た美しい少女が立っているのを見た。彼女は無言で微笑みながら、ゆっくりと消えていったという。Bさんは翌朝、そのことをスタッフに話したが、誰もその少女の存在を知らなかった。
その後、似たような目撃談が数件報告された。目撃者はみな、少女が現れると不思議と心が安らぐと語っていた。しかし、少女が現れた病室の患者は、その後数日で亡くなることが多かった。だから、スタッフの間では、彼女は「死の前兆」とささやかれるようになった。
ある夜、看護師Cさんが夜勤中に病室を巡回していると、彼女もその少女を目撃した。Cさんは怖くなり、慌てて主任Dさんに報告した。Dさんは以前からその噂を聞いていたが、半信半疑だった。しかし、Cさんの混乱ぶりを見て、彼も不安を感じ始めた。
DさんとCさんが少女が現れた病室に戻ると、患者Eさんは深い眠りについていた。しかし、翌朝、Eさんは亡くなっていた。それ以来、その少女の姿を見た者はいないが、病院の古いスタッフの間では、今もその話が語り継がれている。
この話を聞いた時、私は身の毛もよだつような恐怖を感じた。看護師Aさんは淡々と語っていたが、その目は真剣そのものだった。私はこの話が本当に起こったのか、それとも病院内の都市伝説なのか、今でも定かではない。しかし、この話を聞いてからというもの、私は夜中に目が覚めるたび、足元に誰かが立っていないかと怯えてしまう。
