入院しているときに看護師さんに聞いた話
### 第1章:夜勤の始まり
看護師のAさんは、とある病院で夜勤をしていました。この病院は古くからある建物で、多くの患者を見送ってきた。Aさんにとっては、ただの職場でしたが、夜の病院には特有の静けさと、時折漂う不気味な空気がありました。
ある夜のこと、Aさんは夜間巡回をしていました。廊下は静まり返っており、たまに聞こえるのは遠くの部屋からの患者の寝息や、時計の秒針の音だけでした。そんな中、彼女は廊下の突き当りにある車椅子を見つけました。誰も座っていないその車椅子は、いつも通りに静かにそこに置かれていました。
しかし、Aさんがその場を離れようとしたとき、何かがおかしいことに気づきました。その車椅子が、さっきまでとは違う位置にあるように見えたのです。最初は自分の記憶違いかと思いましたが、不安がよぎりました。病院内での移動は厳格に管理されており、夜中に車椅子が勝手に動くはずがなかったのです。
Aさんは勇気を出して、車椅子に近づきました。しかし、近づくにつれ、彼女の中の不安は確信に変わっていきました。車椅子は明らかに、さっきよりも廊下の中央に近づいていたのです。そして、その車椅子からは、かすかに冷たい空気が漂っているように感じられました。
不気味さに耐えかねてAさんはその場を離れ、看護師室に戻りました。しかし、彼女の頭からはその車椅子のことが離れませんでした。その夜、何度か巡回をしましたが、車椅子は動いていませんでした。それでも、彼女は心の奥底で、何かがおかしいと感じていました。
その夜、Aさんは不安な気持ちを抱えながら眠りにつきました。しかし、夢の中でもその動く車椅子のことが頭から離れませんでした。まるで、車椅子に何かが宿っているかのように……。