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今年の後半に読んだ三冊はいずれも良い内容だったように思う。田中奏多著「眠る投資」(アチー
ブメント出版)、平井正修著「老いて、自由になる」(幻冬舎)、津田雄一著「はやぶさ2最強
ミッションの真実」(NHK出版新書)、ジャンルはバラバラだが小生にとっては興味ある内容
で、新聞の広告から本の存在を知った。
心に残った言葉、内容を羅列する。
1.「眠る投資」:東京TMSクリニック院長 田中奏多著
ハーバードで研究された最強の睡眠法についてまとめた本。ただの睡眠と投資としての睡眠
とでは仕事のパフォーマンスで大きな差が生まれる。
●心と脳と身体を整え、究極の眠りを手に入れる。
●昼の生産性は夜の過ごし方で決まる。
●一流のビジネスパーソンは”動くための休み方”を熟知している。
・起床4時間後のパフォーマンスが大切
・睡眠時間と回復は比例しない
・寝る時間はバラバラでもいい
(1)パフォーマンスの鍵は脳の神経ネットワークの調整にある。
(2)睡眠・食事・運動の3つを整えることで心・脳・身体のバランスがとれる。
(3)心の波は自分でコントロールできない。身体の波が安定しているかを確認する一番の指標
が睡眠。
(4)睡眠不足はほろ酔い状態と同じくらい覚醒度が低下しエラーがおこりやすくなる。睡眠を
削ってもパフォーマンスは上がらず、むしろパフォーマンスは低下する。
(5)ビジネスパーソンがうつになる3つの原因。
・内部環境(自分の心・脳・身体)
・外部環境(解決できない仕事や家庭の問題)
・人間関係
(6)睡眠が乱れると朝起きられなくなったり、倦怠感が強くて、身体を動かしたくなくなった
りする。
(7)逆に睡眠が整うと、元気になってちょっと運動してみようと思ったり、適切な食欲が沸い
たり自然と身体が整う。
(8)忙しい現代を乗り切るために必要な睡眠は、量だけではなく質も重要。
(9)どう夜に休むかではなく、どう日中に動けるかにフォーカスした睡眠の取り方が重要。
(10)よい睡眠をつくるには、意識のない夜の睡眠にアクセスするよりも、意識がある日中
の活動にアクセスした方が実行しやすい。
(11)夜更かしをして短時間睡眠になったり、平日の睡眠不足を補うため休日寝だめして
睡眠リズムが崩れると、昼にうまく頭が働かず仕事の効率が上がらなかったり、
エラーが起きたりする。
(12)人間のいちばん頭が冴える時間は起きてから4時間後。日中の生産性をもっと高める
ために眠る投資を行う。ポイントは「時間(量)」だけでなく「質」を意識する。
(13)睡眠は「節約」するものではなく、「投資」するもの。睡眠時間を節約しても日中の
生産性は上がらない。
(14)人間は寝るために生きているのではなく、日中に活動するために生きている。
(15)睡眠は脳を休め、脳を含めた身体の炎症を抑える。
(16)投資としての睡眠は、短期的には心身を安定させて昼の生産性を高め、中長期的には
生活習慣病、認知症などの予防につながり、健康寿命を延ばす。
(17)睡眠が乱れると相手の感情を正確に認知する観察力が落ちる。
(18)十分な睡眠時間は覚醒水準の維持をもたらし、結果として自分だけでなく、周りの人
の作業が安全になされているかどうかのチェック機能の向上につながる。
(19)6時間睡眠が7日間続くと、1晩の徹夜状態と同じ脳機能の水準になる。
(20)短時間睡眠の繰り返しとともに睡眠負債が蓄積され、認知機能が低下する。
(21)うつ状態は「脳」だけが原因ではなく、食事、睡眠、運動や仕事の仕方、「ライフ
スタイル」も大きく関係する。
(22)日本では女性の5人に1人、男性の10人に1人が生涯に1度うつ病になる。うつ病
は128万人、隠れうつ病(受診をしていないうつ病)も同等数いる。
(23)ストレスはレム睡眠に表われる。「レム睡眠」では「身体」が眠り、深い眠りの
「ノンレム睡眠」では「脳」が眠る。
(24)翌日への不安が強いほど、脳が休まる深い「ノンレム睡眠」は減少。就寝前のストレス
によって浅い「レム睡眠」が増加。嫌なことを考えながら眠りに落ちると睡眠は浅く
なる。
(25)人間には、中枢と末梢の2つの体内時計がある。中枢の体内時計のスイッチは「朝の
太陽の光」末梢の体内時計は「朝ごはん」がスイッチ。
(26)朝ごはんは脳を活性化することで事故を防ぐ可能性もある。運転シミュレータを用いた
同一人物に対する事故率をみた研究では「朝食」を食べた場合と「欠食」した場合、
事故率が「朝食」を食べた時に低下する。
(27)近年、運動は体力・筋力の向上、ダイエットだけではなく、メンタルヘルスにも効果
をもたらすことが医学的にわかってきた。
(28)1日6000歩以上のウォーキング、本来であれば8000歩から12000歩が
理想。平均歩数2000歩から3000歩程度の人も多く、目標にしやすい6000
歩とした。都会では行き帰りにひと駅前で降りて15分早歩きをすると3000歩
くらいになる。
(29)人間が意思決定できる量には限りがある。意思決定するごとに負担が脳にかかる。
無駄な脳の負担を減らすためには、日常生活のルーチィン化をおこなう。
(30)重いタスクがあるときには、タスクを分けて、頭を使わないシンプルなタスクと頭
を使う集中力が必要なタスクに分ける。
(31)集中力が切れてしまった場合でも、頭を使わないシンプルな仕事をすることで、違う
脳の場所が働く。
(32)在宅で仕事をするコツは「ちょっとやってみる」なんでもいいので取り敢えず取り
掛かり始めるとだんだんやる気が出てくる。
(33)脳のCPUは1つ。マルチタスクをしていると、同時に2つや3つの仕事をしている
ように思えるが、「今、この瞬間」に考え、手を動かすことができる仕事は目の前
の仕事だけ。
(34)マルチタスクをするときは、期間を決めて時間を分割し、目の前の仕事に取り掛かる
ようにする。
(35)自分の「注意」を割ける量には限界がある。
(36)視覚以外にも聴覚や臭覚にも注意は割かれる。五感の刺激を統制するための仕事を
するときの音楽や香りを決めると、五感を用いて仕事に集中できる。
(37)「キリの良いところまでいったら休憩する」とよくいうが、休憩するなら、キリ
の悪いところがおすすめ。
(38)キリがよくなると「仕事が終わった」脳が認識して、また一から集中力を上げ直さ
なければならなくなる。

2.「老いて、自由になる。」:全生庵住職 平井正修著
臨済宗の寺の七世住職である禅宗の「お坊さん」である筆者が「生きること」「死ぬ
こと」について、”お釈迦様が最期に伝えた”と言われる『遺教経』という教えから50
項目についてわかり易くまとめたものである。
ここでは50項目のうち15項目について紹介する。
(1)「いずれ死ぬ」と知っていれば、きちんと生きていける
ー「人生100年時代」になにを信じればいいのかー
(2)あの世があると思うのも、一つの手
ーすべての人に死が訪れるからこそー
(3)死の正体
ーそれは、平等に、突然訪れるものー
(4)老いるとはなにか
ー身体は衰えるも、心は豊かになるー
(5)あなたの不安を消す
ーすべてのものは変化し続けて、元には戻らないー
(6)「今日も生きている」を実感すること
ー昨日と同じ今日はなく、今日と同じ明日はないー
(7)一人ひとりの価値観の時代
ー「個」の集まりが集団。自分以外の存在を認めることー
(8)人との関わりで心で心を乱さないこと
ー褒められたがる気持ちを、捨てようー
(9)心が調えばすべて調う
ー仏教の戒律を、今の私たちの生活にあてはめるー
(10)ビジネスでも求められる「知足」
ー形あるものでなく、自分の内なるものに目を向けるー
(11)地位や学歴よりも「智慧」が勝つ
ー目の前のものをよく観察し、自分の頭で考えるー
(12)いくつになっても真の学びを
ー常に考えることの大切さー
(13)決めた時間に早起きする
ー心と体を安定させる習慣ー
(14)よく噛む
ー食べることは、すなわち生きること。丁寧に大切に
(15)寝る前に一日を振り返る
ー寝る前にスッキリしなと、翌日も引きずることに
3.「はやぶさ2 最強ミッションの真実」:JAXA 津田雄一著
はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられ、6年50億キロの旅を経て地球に
2020年12月6日に帰還した。
地球や火星の軌道付近を回る直径1kmに満たない小惑星「リュウグウ」に2回着陸
を行い小惑星の窒素や炭素、有機物を含んでいると考えられる砂を持ち帰り数々の
「世界初」を成功させた。
ほとんどトラブルのなかった順調な飛行。これを支えたプロジェクトマネージャで
ある筆者のプロジェクトに対する考え方について抜粋した。
(1)打ち上げ成功後、正式にプロジェクトマネージャーを引き継ぐ。当時39歳。
JAXAの中でこの年齢でプロマネになったものはいなかった。
(2)自分はひとりではない。志を同じくするチームメンバーがたくさんいると思う
と急に肩の力が抜けて、頭が回り始めた。
(3)プロジェクト=工学=理学のトライアングルではやぶさ2ミッションのエンジン
となった。
(4)作りたいチームは「負けないチーム」かつ「大胆に挑戦するチーム」
大組織、大きなチームになるほど、前者は容易になるが、後者は難しくなる。
前者を実現するための社内規定は山ほどあるが、後者については何の仕組みも
なかった。
(5)「ギャンブルはしない、しかし挑戦はどんどんする」というチーム文化を作り
あげる必要があった。
(6)チームとしての解決能力を高める。個々の専門性は高めるのだが、それと同時
にコミュニケーションをよくし、互いを補うようにチームを設計する。
(7)人集めに奔走した。能力の高い人から探しても集まらない。能力の高い人に
育成することを約束して新入社員を集めたり、ポスドク、大学の研究者らに
参加をよびかけたりした。
(8)チーム作りのもう一つの重要な要素は「共通体験」。共通体験が深いと、大
人数で同じ目標に向かって走ることができる。特に重視したのが、如何に失敗
を経験させるかだった。
(9)失敗は一人では抱え込めない。失敗を経験すると、チームで分かち合い解決
しようとする。失敗の共通体験は結束を強める。
(10)「リュウグウ」の「重力」「自転軸の向き」「表面温度」の情報が極めて不確定
なことが着陸計画を難しくした。このためあらゆる場合を想定して計画を立てると
いうことが最も困難な作業だった。
(11)運用計画の策定と共に、プロジェクトチームが危機感をもって真剣に取り組んだ
のが「訓練」。水も漏らさぬ綿密なリュウグウ探査計画を立てたものの、計画が
完璧だとは全く思っていなかった。
(12)「想定外を想定しよう!」がはやぶさ2チームのスローガン。すべてを想定する
ことは不可能だが、想定外が起こることを想定するのは可能。想定外に対処する
最も効果的な処方箋が「訓練」。
(13)はやぶさ2チームが設定した訓練は2種類、「着陸点選定訓練」「実時間統合
運用訓練」。
(14)はやぶさ2の開発時に試験のために作った部品や装置を残しておき、あとで
それらをかき集めて、電気的にははやぶさ2と全く同じ動作をするシミュレータ
を作った。
(15)単にはやぶさ2の飛行状態をコンピュータ上で再現するだけだった環境シミュレ
-タに「画像再生装置」と「遅延装置」が新たに付け加えられた。遅延装置は
タッチダウン時の地球とはやぶさ2の距離3億キロメートルを模擬し、20分の
信号の遅れを生み出す装置。臨場感は劇的に高まった。
(16)訓練は実時間で行われた。多くの降下運用は24時間かかるから、訓練も24時間
かけて、本番同様、数十名による8時間交代のシフトが組まれた。
(17)シミュレータでは自由にトラブルを起こすことができる。運用を続行すべきか中止
して緊急上昇すべきか、決断を迫られる。まさにそれがこの訓練の狙いだった。
どんなに切羽詰まっても、正しい判断ができるチームになる、そのために訓練を
繰り返した。
(18)2017年中盤から2018年のリュウグウ到着直前までの1年間に行われた実時
間統合運用訓練は合計48回。そのうち「撃墜」が21回だった。
(19)どんなに忙しくてもプロマネが現場作業をやらない方がよい。リーダが現場作業を
することは大きな危険をはらむ。不測の事態が起きた時、大局的な戦略を立てる人間
がいなくなってしまう。
(20)忙殺され疲弊したメンバーを救うために出した結論が「権限移譲」だった。これまで
管制室での運用上の重要な事項はすべてプロマネの承認をとることになっていたが、
最終承認権限をフライトディレクターに譲った。管制室で一番偉い人はフライトディレ
クターにした。若手にもフライトディレクターになってもらい、フライトディレクター
とシステム担当者の間に垣根がなくなり、労力軽減になった。
(21)訓練でやってしまったことは、次にも同様に対処できるよう、記録を残し、反省点を
整理しておいた。そしてこのことが、第1回タッチダウンの成功へと繋がる大きな伏線
となった。
(22)着陸点選定作業のため「近傍フェーズ計画会議」「着陸点選定解析会議」「ミッション
運用検討会議」が行われていた。多くのメンバーはこの3つの会議を渡り歩いた。壁を
取り払わないと、答えは見つからない。皆が持つ焦燥感が自然とチームのコミュニケー
ションを良くしていった。
(23)はやぶさ2の設計上の着陸精度は50m。しかし工業製品のスペックというものは、作
った者が使う者に保証する性能で、必然的に保守的な数字になる。実力はもっと高いは
ず。「仕様」ではなく「実力」の上に着陸の方法を再構築するしか道はなかった。
(24)運用チームは、重要な判断ポイントを「ゲート」と呼んでいて、そこでのチェック項目
を全てクリアしないと次の段階へ進めないことにしていた。どの降下運用も、開始から
終了まで6つのゲートが設定されていた。
(25)第2回目のタッチダウンについて、JAXA上層部は余計なリスクをとるべきでない
というのが支配的であった。プロジェクトが筋を通し、きちんと決断を示せば理解は得
られるという手応えがあった。はやぶさ2チームは、丹念に、ひとつひとつ、JAXA
内のあらゆる層に説得、説明を続けた。
(26)絶対に「墜落」が起きないような着陸手順を、何度も何度も見直しながら、作り上げ
JAXAの組織決定が行われた。「タッチダウンが不成功になったとしても探査機を喪
失する確率は極めて低く管理されている。」「第2回タッチダウンへの挑戦の価値は極
めて高い。」という主張が認められた。
(27)工学的成果もさることながら、それを実現するチーム作りに成功したことが嬉しかっ
た。はやぶさ2チームのやんちゃなチャレンジ精神と科学への真摯さがあらわれてい
た。
(28)科学的成果は第1号成果論文に始まり、有力科学誌にはやぶさ2が見せた新たな小惑
星の世界が続々と掲載された。苦労と粘りの分析が実り、リュウグウの観測データから
水の成分を見つけ出した。
(29)リュウグウの表面の年齢は約1000万年、はやぶさ2が明らかにした数々の科学
データは、小惑星の一生、ひいては太陽系の歴史に新しい謎を投げかけている。
(30)はやぶさ2は多くの科学的な知見をもたらしたし、科学者に新たなインスピレーシ
ョンをもたらした。
(31)工学の観点では、最大の挑戦であったリュウグウ探査で、揺るぎない成果を獲得し
た。これらは、次世代の宇宙探査の土台となる。はやぶさ2の技術を踏み台にして、
次のミッションを考えられる。
(32)小惑星へ1メートル以下の精度で着陸し、複数の地点から物質を採取し、地下掘削
をし、地表探査ロボットを展開させ、軌道周回することができた。
(33)小天体を科学調査する技術という意味では、少なくとも太陽系の中の数千個の小天体
ははやぶさ2の技術で十分探査可能というレベルに達した。はやぶさ2後の世界より
ずっと遠くを見渡せるようになった。
(34)先駆者の作った道筋を継承し、継承と革新の両方の役割を果たした。
(35)はやぶさ2のような探査ミッションの面白さはその成果というよりも困難に遭遇し、
それに打ち勝とうとした挑戦のプロセスにある。
(36)「兆戦」には2つの種類がある。ひとつは「制約への挑戦」、もうひとつは「未知
への挑戦」。
「制約への挑戦」:人類の叡智を結集すれば原理的には実現できることを、お金や
人員、時間が限られた中で如何に効果的・効率的に行うかと
いうこと。
「未知への挑戦」:知らない世界をどのように既知の世界に変えるか。人類の根源的
な好奇心に応えるもの。基礎科学を前進させるのは「未知への
挑戦」
(37)人類の科学の進歩を実地に示すのが宇宙科学ミッションだから、やってる当人たちが
楽しまないと、よい成果がだせるはずがない。
(38)昨今はコンプライアンスばかり重視され挑戦が難しいと言われている。民間のメーカや
技術系企業に、この時代にどうやってそんな挑戦ができたのか?というような、技術
マネジメントの視点での質問が多くなった。