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2011年07月01日
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悲しみのミルク



まず、ペルーという国について。

南米大陸のアンデス山脈の中腹に、かつて栄えたインカ帝国。

この国は、1万年以上も前にアジア大陸からアメリカ大陸に渡った人々の子孫が築いた古代国家。

そのインカ帝国を滅ぼしたのが、スペイン。

征服者ピサロを指導者としたスペイン侵略軍は、武力で1532年にインカ帝国を滅ぼし、インカの王を殺害し、先住民を奴隷としてこき使った。

スペイン軍は、インカの民を服従させ、黄金を略奪し、以来、白人が先住民を支配し収奪する社会が、その後4世紀以上に渡って続いた。

インカの中心地は、その後、1821年、ペルーとして独立する。

が、白人が権力を握り、先住民を支配する構図は変わらなかった。

ここに、1964年に、革命集団「センデロ・ルミノソ(輝く道)」という極左暴力集団が結成される。



彼らは中国の毛沢東主義者で、「南米のポル・ポト」と呼ばれ、1980年代に武装闘争を開始し、「農村から都市を包囲する」と農村地帯でゲリラ戦を始め、従わない者は、女性であれ、子どもであれ、殺害するという残忍集団であった。

この革命集団「センデロ・ルミノソ」と、ペルーの政府軍との内戦状態となっていく。

映画は、その内戦で、翻弄された、村人たちの物語である。

いきなり、死に瀕した母親が、現地の民族語で、自分がレイプされた有様を、小さな声で具体的に歌いながら、傍らにいる娘ファウスタに話す場面から始まる。

母親は死ぬが、娘は、その亡骸を、ふるさとの村まで運んで埋葬しようとする。

しかし、多額の費用がかかるので、娘は裕福なピアニストの家の家政婦を務めることでお金を貯めようとする。

この当り、実にのんきな話である。

死体をミイラのように包んではいるものの、お金がたまるまでおよそ1ヶ月あまり、その死体と一緒に暮らすというのであるから・・・。

これが、この物語りの全体なのである。

つまり、最終的に、母親の遺体をふるさとの村に運び、その過程の中で、娘がどう変化するか、という話なのである。

娘は、病気を抱えている。

「恐乳病」というのだそうな。

極左組織によってレイプされ、大変な恐怖を味わった母親から、母乳を通じて恐怖心が娘にも伝わってしまった、という病気らしい。



医者からは、子宮がはれている、すぐにジャガイモを性器から出すべきだと診察を受けるが、彼女はそれを拒む。

ジャガイモは、芽を出し、女性器から外に顔を出す。

娘は、芽が伸びてくると、ハサミでその先を切り落とすのである。

たった一人で観た映画館で、このシーンは、アンビリーバボーの世界だった。

ペルーではジャガイモは特別な物である。



そして、ジャガイモは、干からびたように見えても、また、芽を出す、再生の象徴ともいえる植物だ。

だから、結婚式で、妻になる女性が、ジャガイモの皮を長く剥いて、幸せかどうかを占ったりもする。

そのあたりは、映画をしっかり御覧なさいませ。

さて、この映画、ペルーの社会的背景としての歴史の傷跡を描くとともに、ペルー社会の未来への希望を、アンデスの美しい映像とともに、我々に伝えてくれる。

ペルーで何百年にわたって虐げられてきた先住民が、自らの力で、これまでの自分に課せられていた手かせ足かせを自らはずし、自分の力で立ち上がろうとしている。

このことを監督のメッセージとして受け止めた。

日本での民衆の勝利も、いずれ、必ず、果たせねばならない。





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最終更新日  2011年07月28日 21時58分18秒
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