セカイのオワリとイウ名の…

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愛しの嶽本野ばら様への恋文


親愛なる嶽本野ばら様へ


こんにちは。そして初めまして。私が貴方の小説と初めて出会ってからもう2年が過ぎ去ろうとしてゐます。月日がたつのはなんて早いことでせう。


貴方の名前と著書は、以前から知っていました、しかし初め私は、あなたの小説の簡素なタイトルと装丁に、とうてい魅力を感じえませんでした。男性なのに野ばらという可愛らしすぎる名前も、私を貴方の小説から遠ざける要因の一つでした。まぁ、はっきり言うと、なんだこいつと思っていたのでした(すみません)。
でもなぜか、ある本のタイトル文字を見たとき、私とその本の間になにか惹かれあうものがあることに気づいたのです。市松模様のような表紙、こちらを見据えるような貴方の写真。


寒い寒い北国の田舎町で育った私は、もちろんロリータファッションに興味を持つこともない、お下げに眼鏡のごくごく普通の(というかダサい)女子中学生でした。私の育った町は古きを良しとする風習がまだまだ残っていて、ロリータファッションなんてもってのほか、といった感じなのでした。


そんな私がこの町の図書館で貴方の本と出会えたのは運命でせうね、いいえ、貴方が首を縦にふらずとも、私が運命だと思ったのだから仕方がありません。


タイトルを見ただけでページをパラリと繰ってみることもせずに、私がロリヰタというその本を新刊図書コーナーから借りて帰ったのは、今考えれば神が私と貴方に与えたもうた必然の偶然だったのかもしれませんね。


そしてそれ以来、私は貴方の小説を全て図書館から借りしめ毎日毎晩、繰り返し読み耽るようになったのです(この小さな図書館には貴方の著書が全てあったわけではないのですけど、私が史書のお姉さんにしつこく言い寄って月々の新刊として買わせたのです)。


おまけにロリータやパンクにも興味を持ちはじめ、町を歩く私を見た学校の人からは偏見の目で見られるようになりました。
でもそんなことどうだっていいのです。お洋服よりお友達が大事だなんてことは絶対にありえません。どんな非常事態にだって、ロッキンホースバレリーナを履くのです。スカートにはパニエを仕込むのです。アリスのグッズを集めるのです。


ほとんどいつもトップにいたテストの点も、どんどん下降していきました。担任も生徒指導の先生も驚きました。そして私に言うのです。


「悩みがあるなら言ってみなさい。」


笑止。なにを悩むことがあるというのでしょう?
私はやっと、自分の居場所を見つけたというのに。


嗚呼、貴方は男性のくせに、なぜそんなに乙女の気持ちがわかるのですか。なぜそんなに孤高で意地悪な女の子でいられるのですか。
私のほうがよっぽど乱暴で、乙女の精神が成り立っておらず、女の子失格です。
でも、貴方にだったら
「女の子失格!!!」
と罵られても良いのです。というか、寧ろ、罵ってください。貴方に罵倒されたら私、嬉しくってなんでもできちゃうやうな気がするのです。


あら、Mな私の性癖まで披露してしまいました。私ったら破廉恥な女の子です。


性癖披露ついでにいうと、私はエスです。というかバイです。今好きな女の子は、スポーツをやっていて笑顔が太陽のような、ボーイッシュな女の子なのです。だけれども、私はいつも遠くから彼女の姿をのぞくだけ・・・廊下ですれ違ったりした日はもぅ、パチ物ベルサ○チのジャケットを桃子から買ったイチゴのように浮かれてしまうのです。


貴方はヘテロですけど乙女ですから、こんな私の気持ちもわかっていただけるでしょうね。


そしてもちろん、その彼女と同じくらいに、貴方のことも大好きです。できることならミシンと蝙蝠傘子のやうに、貴方とアイロン台の上で結ばれたいです。


文庫版「エミリー」についていた小さな応募券を葉書に大事に貼り付けて、願いに願って当選した限定千個の「エミリーキティ」は私の宝物です。私は毎日それを見つめては、遠い貴方に想いをはせています。


これからも世の乙女たちのために、美しいものや素敵なもの、そして小説を発信していってくださいね、さすれば私はもっともっとロココな世界にのめりこんでゆくことでしょう。

いつまでも愛しています。

あらあらかしこ。                       


花束のばら



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