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ペトラプト・パルテプト
まきまき / その8
まきますか? まきませんか? / その8
まきますか? まきませんか? / その8
「ううぅ…。手篭めにされたですぅ。酷い凌辱ですぅ。辱められたですぅ…。
人間なんかに…。人間なんかに…。人間なんかに!」
( おい! いったい誰が人形なんかを手篭めにするんだ? )
俺は心の中で思いっきり叫んだ。
かろうじて残る少しの冷静さが声に出すのを止めた。
( そいつは言いがかりって奴だろう! くそっ! )
( それにネジ巻いただけだろ! それがどうして? )
( この程度で俺がやられるかよ! )
沈黙が続くとまずいことになる。ここで黙っていたら間違いなく負けだ。
手篭めをしたと認められるわけにはいかない。汚名は返上するためにある!
「あの…。それは誓ってございませんから…。私も一応良識ある大人ですし、それに
手篭めなどにしてない証拠にほら、翠星石様の着衣に乱れはございませんでしょう?
これでもかなり丁寧に扱いさせていただいたつもりです。まさかお動きになられるとは
思いませんでしたが、その…。」
( そうだろ! そうだろ! 立派な証拠があるってもんだ! )
「もういいですぅ! 言い訳はもう聞きたくないですぅ!
服なんてお前が私をメチャメチャにした後で、
ゼンマイを巻く前に元に戻せばどうとでもなりやがるですぅ。
私はおもちゃにされたですぅ!」
( おもちゃって、もともとお前、人形だからおもちゃじゃないか!? )
( それにお前の言うことの方がメチャクチャだー! )
くだらないツッコミを心の中でしてしまう。ヤバい、俺としたことがあせってる。
「いや、あの…。」
「お前の魂胆は見え見えですぅ! だいたいさっきからなんですか?
変な言葉ばっかり使いやがってですぅ。そんなことで翠星石の目はごまかせねーですぅ!
この卑しい人間めーですぅ! 証拠ならそこにあるですぅ。」
そう言うと、人形は俺の背後を指差した。
振り返ると、テーブルの上に一昨日買ったキューピーマヨネーズが置いてある。
もちろん包装は取ってないから包装ビニールにはキューピーの絵が描かれている。
それがいったい何を意味するのかわからなかった。
( マヨネーズがどうした? なんで証拠になる? )
「あの人形はどういうことですぅ? あの裸の人形の絵は?
お前はそういう趣味をもったやつですぅ。
この翠星石を裸にして飾っておくつもりだったでしょうけど、
そうは問屋が卸さないですぅ! 人間なんかにそう簡単にやらせるかですぅ!
それに大人ぁ?
大人ですって!?
大人だからなんだというですか?
大人のほうがいやらしいに決まってるですぅ。」
( はああああああーーーーー? あれって商標だろうが。確かに絵だけど、
あれは何十年も前からあのデザインだろ! )
言いがかりもいいとこだ。
「いや、だから…。あれって…。」
「 ほぉー!いいわけがましいですぅ。何か言い分があるですか?
こっちはそんな簡単な口車なんかに乗せられねーですぅ!
一昨日来やがれこん畜生めーですぅ。 」
「これはマヨネーズの袋に書かれた、ただの絵だ!!」
「そうやって大人はすぐ騙すですぅ。危ない危ないですぅ。」
( こ、こいつ…。こうなったらマジで…。 )
なんとかこいつを黙らせようかと思った。これ以上は許されるもんじゃない。
手を伸ばして人形を捕まえようと思った途端、頭の片隅に残った理性が何かに気づいたみたいだ。
( いや、待てよ…。なんかおかしいぞ? なんだ!? この違和感は!? )
理性が今までのやり取りの中で、通常ではありえない違和感に気づいた
「今度は黙り込みやがったですか?
ほ~ら、私が言ったことが図星だったからですぅ。
沈黙は罪を認めるですぅ。 」
俺はただ人形を見極めるようにじっと見つめた。
「な、なんですか? そんな目で睨まなくてもお前の罪は変わらないですぅ。
とっとと自白しやがれですぅ。」
( ははぁ~ん。なるほどね。『言い訳は聞かない』が『自白しろ』とは…。 )
( 矛盾しているってことはだ、こいつの目的はこれじゃないのか。 )
( 動かしちまったことはどうでもいいんだなぁ。論点がどんどんずれてるし…。 )
違和感の原因を一つ一つ検証してみる。
怒ったり、おとなしくなったり、泣いたりするように感情の起伏が激しい。
自分の発言に対する矛盾。
こちらの言葉には反応するが、主体性を持ち合わせていない点。
意思の方向が定まっていない。つまり何かをごまかしている。
極めつけはどこかオドオドしたしぐさが垣間見える。
付け加えるなら、何かを訴えるのではなく、何かを聞いてもらいたそうなところ。
( …そうか、つい俺も熱くなったが、よくよく考えてみればこういうことだ。 )
( 照れ隠し…か。まったくお子ちゃまの発想だ。 )
( じゃあかえって丁重な言葉は逆効果だなぁ。それで『変な言葉』なんだ。 )
当然だが俺には子供がいない。結婚もしてないし、彼女さえいない。
でも子供の相手ぐらい多少できると思う。こいつは人形だが子供なんだ。
( でもなぁ、女の子か…。 )
やや苦手な分野でもあるが、こうなったら仕方が無い。
できるだけ相手の調子に合わせてやるだけだ。
( それで満足しちまったら、お帰りいただこう。
せっかくの休日が無駄にならないうちにな。 )
「わかったよ…。へんなしゃべり方して悪かったな。
まぁ、俺としては精一杯の礼儀をわきまえていたつもりだったが、
お前には合わなかったわけだ。」
( 『難しすぎたわけだ』とは言わないところが偉いだろう? 言えねえけど。 )
「とうとう本性現しやがったですぅ! やっぱりお前は悪人ですぅ! 」
( そうとわかれば、こいつが何を言っても可愛く見える。
無邪気とでも言うべきか…。 )
( それに突然こんなとこに来て、可哀想な気もする。 )
( でもやっぱり口の利き方ぐらいは教えないといけないかな? )
( 人形とはいえ、これじゃあいかんだろう。 )
( よしっ! ちょっと『しつけ』てやるか!! )
( う~ん。でもな…。俺がわざわざするべきことでもないよなー。 )
悪人と言われたが、素直に否定する気にもなれなかったので、こう言い返してやった。
「あ~そうかもな。お前から見れば大人はみんな悪人だろうしね。
実際、キレイ事だけじゃ世の中を渡っていけないからな。
そんなことわかりきってるさ。でもな…。」
俺はじっと人形の目を見つめた。
見つめすぎると吸い込まれそうでヤバいんで、少々用心はしているのだが。
「心だけは失わないようにしているよ。」
自分でも意外なことを言ってるような気がする。なんか俺らしくないような…。
( でも、この際だから、さっきの復讐に説教でもしてやるか。 )
「俺だって生きてる。それにそう簡単に死ねない。
どんなに苦しくっても生き続けなくちゃならない。
それがどんなに辛くてもだ。
人形のお前にわかるかどうか知らないが、
生きるって事は死ぬことよりはるかに難しいんだ。
死んでしまうことは簡単だし、たぶん一瞬で終わるだろう。
でも生きることは永遠に似た時間を乗り切っていかなくちゃならない。
そりゃ、楽しいことも幸せなこともたくさんあって希望が持てるかもしれないけど、
苦しいことや辛い事だって同じようにあるんだ。
人生何が起こるかなんて誰にもわからない。
わからないから生き続けるためにはどんな手段でも使ってやるだけのことだ。
でないとひたすら苦しみ続けるだけだからな。
俺はもうそういうのはまっぴらだ。
それが汚いとか悪人だとかいうのは別にかまわないさ。
大人なら誰だってそういう風に生きてるんだ。
それでもな、俺は正しいと思える心だけは失って生きたくないんだ。
心を失っちまったら人間でなくなる。
それこそお前じゃないけどただの人形と同じだ。
だから、お前が俺のことを悪人呼ばわりするのは全然かまわない。
でも、俺は何ひとつ嘘をついてないし、お前が人形だからって
軽く見たつもりもまったく無い。
それよりもこうして会話ができるくらい精巧なんだろ、お前って。
なら生きているものとして俺は扱ったつもりだよ。
お前だって、ただ怒っているわけじゃないんだろ。
なにかもっと深い理由でもあるんじゃないか。
それを聞くつもりなんてないけどさ、もう少し冷静になって考えてみてもいいだろう。
今まで俺が言ったこと、今お前がここにいる状況とかさ。
このままお前に責められちゃ、俺はいったいどうすりゃいんだ?
何か目的があって言ってるのか?
それともただ俺を苦しめたいだけか?」
言葉使いを変えたら堰を切ったみたいに言葉が出てくる。
やっぱりこの方がしゃべりやすいし、自然だ。
「あぅ…。」
どうやら答えられないらしい。そんなことだろうと思った。
( こっちだって期待しているわけでもないからかまわないが、
さっきまでの強気はどうした? )
「じゃあもう一つ聞くが、おまえは何がしたい? 何を俺にして欲しい?」
( 一つ聞くと言いつつ、2つ聞くところが大人のずるさだよな…。 )
「よくわかんねーですぅ。そんなこと全然考えてないですぅ。」
だんだんと人形の声のトーンが落ちていくのを感じた。
そしてこの時、俺は勝利を確信した。
人形はもう肩を落とし、顔は下を向いている。
俯き加減でも、さっきみたいな険しい表情は消えてしまったようだ。
「わからなくていいんだよ。
そういうのを受け入れて我慢し続けるんだ。大人って奴はな。
まあいいや、無理にわかろうとする方が不自然だ。
お前の好きにすればいい。
俺にできることなら、何だってやってやるさ。
金と女の相談以外ならな。」
( そう付け加えるところが自分のせこさをあらわしてるよな…。 )
( でも、いきなり金貸してくれと言われても困るし…。 )
( さて、お人形さんはどう出ますかな…!? )
人形は俯いたまますっかり黙り込んでしまった。
沈黙だけが続く…。
( 俺ももうこれ以上は何も言わない方がいいだろう。
もとからいじめるつもりなんてなかったんだが、
少し調子に乗ってしまった。やや反省…。 )
ただ少しだけ…、この人形のぜんまいが切れることを期待してしまった。
( 微妙に肩を震わせているからそうではないみたいだが、また泣くのか!? )
( それだけは勘弁だ!! だいたい女に泣かれるのって苦手なんだよ。 )
( 友達にそれが得意な奴もいたけど、俺はダメだ。 )
( とにかくそのままゼンマイが切れてくれー! )
その思いはどうやら通じなかったみたいだ。
「おい人間! お前、名前は?」
やっと口を開いたかと思えば、名前を聞いてきた。
「あ…、名前ねぇ…。高鷲 惇(たかす じゅん)だけど…。」
なにくわぬ顔で俺は答えてやった。
( 今さら名前なんてきいてどうするんだ? )
( と言うより、やっと名前を聞く勇気が出たと言うべきか…。 )
「ジュン!? お前もジュンっていうのですか…。道理で…。」
名前のどこに反応したかわからないが、面をあげて俺を見つめる。
しかも驚きの表情だ。
( なにか名前に覚えがあるのか? それとも…。 )
よくわからんが、俺にはこんな可愛い人形に昔から係わったことはない。
( しかも喋るアンティーク人形。ありえねぇ…。 )
「んっ!? 名前がどうかしたか? 」
「な、なんでもねえですぅ…。いちいちうるさい奴ですぅ」
「だよなぁ。俺だってお前みたいなの初めて見るから…。
ええっと、翠星石だったよな。」
「えっ!? なんで私の名前を知っているですか? やっぱり…!?」
( おい!! )
心の中で思い切り突っ込む。
( お前が一番初めに言ったじゃねえか!! )
「やっぱりってなんだ? 俺はお前が自分で名乗ったから言っただけだけど。」
「そう…ですよね。そんなことあるわけがねぇですぅ。」
そう言って人形は再びうつむいた。
( う~、なんて意味深な…。わけわかんねぇ。)
「もう全然話がわからないんだけど。」
そう言ってから、窓の方を見た。
外では暑い日ざしが降り注いでいるようだ。もうすぐ昼になるんだろう。
さすがにエアコンを入れないと暑くてかなわないと思った。
人形は何か考え込んでいるかのようだ。
とりあえず、エアコンのリモコンを目で探す。
( 昨日寝る前どこにおいたっけ? )
ふと目についたタバコの箱をつかんでタバコを吸おうと思ったが空になっていた。
( そうかさっきのは最後の一本か…。しまったな。次の買ってないぞ…。 )
クシャクシャとタバコの箱を丸めてゴミ箱に捨てた。
「ジュン…。」
( えっ? 今、名前で呼ばれた? でも呼び捨てかよ。 )
呼ばれた気がしたので、振り向いた。
でも人形はうつむいたままだ。
( こいつには悪いが、ちょっと待っててもらってタバコを買いに行こうか。 )
別にヘビースモーカーというわけじゃないが、タバコがないとなんだか不安な感じがする。
( それに相手するのにも長期戦になれば、それ相応の準備というものが必要だし…。 )
「あのさ、翠星石…。」
そう言いかけた時だった。何かを決意したかの表情で人形はこう言った。
「しゃーねーですぅ。これを受け取りやがれですぅ。」
そう言いながら人形は硬く握り締めた小さなこぶしをぐっと突き出した。
そして、手を広げると薔薇の彫刻がついた指輪が乗っている。
( どういう意味だ? 受け取れって? プロポーズか? )
俺はその小さなこぶしごと握り締めて、そっと押し返した。
( 受け取れって言っても、そんな理由もなく受け取るわけにはいかんよなぁ。 )
( それに指輪だけに、なんか深い意味がありそうだし…。正直キモい )
( だいたい俺がこんなのをもらってどうするんだ? )
「せっかくだけど、受け取れないよ。」
「なぜですか?」
人形が不思議そうな顔をしている。
無理もない、たぶん一世一代の告白が覆されたのだ。
指輪だけにそんな感じだろう。
悪いことしたかもしれない。
「だってさ、もらう理由がないし、それにこれが何か意味のあることなのか?」
「契約…。」
小さい声だったのであまりよく聞き取れなかった。契約と言ったか?
「何? 契約って言った? 何を契約するんだ?」
「ごちゃごちゃうるさいやつですぅ。
これだから人間は頭の悪い生き物なんですぅ。」
人形はまた顔を上げてそう言い返す。今度は少し顔が赤い。
人形なのになんて精巧にできているんだと思った。どういう原理だ?
( い、意味がわからん。それに言葉とは裏腹になぜ照れてるんだ!? )
「これに何か深い意味があるのか?
まぁどっちでもいいけどさ…。
契約するならその内容を確認するのが筋ってもんだろう?
あのなー、今時、契約って言われて素直に契約するバカはいないぜ。
こんな世の中だからな…。
それに…。」
そう言いかけてまた遮られる。最後まで言わせろって!
「わかったですぅ。説明してやるから、耳の穴をかっぽじって、よく聞きやがれですぅ。
契約とはドールが人間と絆を結ぶことですぅ。
私たちローゼンメイデンシリーズのドールはゼンマイを巻かれると
動くことができるですぅ。
ちょうど今、おまえがやったように。
でも、それだけではいずれゼンマイが止まり、ただの人形に戻っちまうですぅ。
私たちの存在意義はただ一つ、姉妹達と戦ってアリスゲームに勝つことですぅ。
そのためには力が要るですぅ。
人間と契約することで、人間を媒介にして力を得ることが出来るですぅ。
ちなみにその契約した人間のことをミーディアムと呼ぶです。
よくわかったか、このやろうですぅ!」
( 最後の言葉はともかく、これが理由らしきものか? )
「ということはだな、力が必要だから、お前もこの俺と契約して、
そのアリスゲームとかに勝たなくちゃいけないってことか?
ふーん…。
存在意義とか言ったが、そんなに大事なことなのか?
じゃあアリスゲームって何だ?
そのローゼンなんとかのドールってそんなにたくさんいるのか?」
「うぅー、細かいことをごちゃごちゃ聞く奴ですね~。
まず、ドールは全部で7体いるですぅ。
それぞれが一つのローザミスティカを7つの欠片に割って作られたドールですぅ。
一人は1/7(七分の一)。 7人は1。
私たちはそれぞれのローザミスティカを奪い合い、
7つ集めてアリスにならなくてはならないですぅ。
そのために戦うですぅ。それがアリスゲームですぅ。
アリスになることが『お父さま』に会える最後にして唯一の方法です。」
( 熱弁をふるうのはかまわんが、俺みたいなSFとかファンタジーに
あまり興味のないやつには、正直理解に苦しむんだけどな…。
あれ!?RPGだったか? それもあんまり苦手なんだが…。 )
「アリスね…。そっか、それでお前はアリスになりたいんだな。」
ついわかったような返事をしてしまった。
( ますますよくわからん。
…が、とにかく姉妹げんかのためにこの俺を利用するってことだ。
『お父さま』ってのも何者なのか気になるが…。
人形の戯言だし、害はないだろう。
これ以上聞いてると頭がおかしくなりそうだから、ここいらで止めとくのが無難だな。
とっとと終わらせちまって、タバコ買いにいかなきゃな。
それに腹も減ってきたし…。)
「そうですぅ!だから、ほら契約してやるですぅ。!」
「いや、ちょっと待て。契約するのは良しとしても、俺になんのメリットがある?
これだとあまりに一方的過ぎないか?」
「何言ってるですか?
この可愛い翠星石をお前のそばに置いておく事が出来るですぅ。
これ以上、お前は何を望むですか? こんな名誉なことは無いですよ!」
( 名誉か? これが? こんな口の悪い、言葉が汚い人形を置くことが!? )
あまりのばかばかしさに笑ってしまった。
「わっはははは!
面白いなお前。わかったよ、契約することにしてやるよ。
あっ、ちなみに契約したからって、
俺がなんか不具合にあうってことはないんだろうな?」
「もちろんですぅ。ほら、この指をはめて、とっととキスしやがれですぅ!
そして誓うですぅ。
翠星石のローザミスティカを護ると!」
「ふ~ん。まぁいいか。
もうこれ以上聞くのも面倒だし。
よしっ、この指輪をはめるんだな…。」
そう言って、突き出された指輪を受け取った。
( 映画で見た魔法使いの指輪みたいだ。人差し指にはめると魔法が使えるってやつ。 )
( でも仕事のときに目立つかもな。俺の趣味じゃないし…。 )
そう思いながら、右手の人差し指にはめようとすると…。
「違うですぅ! 人差し指にはめてどうするですか!? 左手の薬指ですぅ!」
「俺まだ独身なんだが…。」
しぶしぶ左手の薬指にはめる。誰かが見たら勘違いされること必死だ。
これで俺に彼女でもいようなら、どんなに責められることか。
悲しいことにいないけどさ…。
「これでいいんだな? …、熱っ!!」
はめた途端、指輪がかすかに赤く光ったように見えた。いや、見えただけじゃない。
一瞬だったがなんだか熱い。慌てて外そうとしたが吸い付いたように取れない。
「もうそれは一度はめると取れないですぅ。
無理やり取ろうとすれば肉が削げるから止めといた方がいいですぅ。
ほら!早くキスして誓うですぅ。」
(なぜだか騙されたような気がする。後悔しても遅いが…、仕方ねぇな。 )
(それにキス!? 人形にキス!? そんな趣味はないんだが乗りかかった船か…。 )
人形の両肩をつかんで、やさしく引き寄せ、そっと顔を近づける。
( 一応、目を閉じてやることにするよ。なんか恥ずかしいし…。)
バシッ!
「 痛ッ!! 」
ひっぱたかれた!
( なんで? キスしろといったのはお前だろう! )
「何するですか! 私じゃないですぅ! 指輪にですぅ!
くぅ…やっぱり人間の選択を誤ったかもですぅ。こんなお馬鹿に…。」
「お前がキスしろと言ったからだろうが! ほら、これでいいだろう。」
もはや、投げやり状態。指輪に軽くキスする。
「早く誓うですぅ。誓いの言葉を!」
「わかったよ、えーっとなんだっけ?
翠星石のろーざみすてぃか?を護ります!
これで、どうだ!」
「よしっ! これで契約は成立ですぅ。
おまえはこれから、この翠星石のマスターとして下僕に使ってやるですぅ。
下僕らしくありがたそうに喜びやがれですぅ。 」
翠星石はガッツポーズをした。
( マスター…? 下僕…? )
( マスターって、ご主人様とか言う意味だろ? それなのに下僕に使う?)
「おいっ! それって日本語おかしくないか?」
「おかしかないですぅ。
それよりお腹が空いたですぅ。
お前がノロノログズクズしてやがるから昼になっちまったですぅ。
なにか食べ物を用意しやがれですぅ!」
「食べ物~ぉ? 人形が食べる? なぜ? 」
「おなかがすいたら食事をするのが当たり前ですぅ。
そんなこともわからないですか? 本当にお前は愚かな人間ですぅ。
チビ人間と同じ名前だけあって脳みそまでチビサイズですぅ。
わかったらさっさと用意しやがれですぅ!
まったく使えねぇ下僕のマスターですぅ。」
なんだか無性に悪い予感がした。虫の知らせとかそんなものじゃない。
とにかく悪寒だ。
心の奥から必死に止めろと叫ぶ声が聞こえた気がした。
ありがちな警告音が頭の中で響いているような気もした。
「おい!! やっぱり契約解除だ! クーリングオフだ!! なっとくいかん!
もう一回キチンと説明しろ!」
「ごちゃごちゃ抜かすなですぅ! 翠星石は花まるハンバーグが食べたいですぅ!
それからデザートにはアイスクリームとケーキ、それとポッキーも用意するですぅ!」
「いや、だからちょっと待てって! お前なぁ…!!」
こうして俺の新しい生活は始まった。もちろん自分の意思とは関係なくだ。
かなり後になって気づいたことだが、すべての元凶はあの夜、パソコンのモニターに
マウスでくるくるとカーソルをまいてたことにあったのだと。
悔やんでも仕方ないが、さらなる苦難が俺を待ち受けているような気がする。
それにしても…。いや、いい…。
こうやって注文どおりハンバーグを休日の昼間から作っている俺がけなげだ。
うん、そういうことにしておこう。それに…、
こんなにポッキーを幸せそうにほおばる奴を初めて見た。人形だけど…。
「まぁだでぇすかぁ~♪ それから目玉焼きはキチンと花型にするですよ~♪」
あ~、やっぱり苦難の始まりだー!!
This story continues perhaps still. So please read the epilogue before that.
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