あい・らぶ・いんそん

告白5



「スジョン・・大丈夫か」

何も応答しないスジョンに、イヌクは大声で呼びかけた。

スジョンは床に座わりこんだまま呆然と(夢であって欲しい・・・夢であっ

て欲しい・・)と、祈りながら全身の震えを押さえることができなかった。

やがてサムがスジョンを迎えに行き、病院まで送り届けると手術室の前でイ

ヌクが椅子に座って静かに目を閉じていた。

「あの人は?何処にいるの?どうして?」

スジョンは半狂乱のようになって、手術室のドアにしがみつき中に入ろうと
していた。

イヌクが急いで後ろから抱きかかえ、

「今手術中だ・・」

と言った。

泣き叫ぶスジョンを振り向かせて、イヌクは抱きしめた。

「すまない・・・こんな事になるとは・・。」

「いや・・放して。」

スジョンはイヌクの腕をすり抜けて、震えながら椅子に座った。

次々に流れ落ちるスジョンの涙が、イヌクの心の傷に深く染み込んでいった。

愛を求めたが故に、狂いだしてしまった運命だったのか・・イヌクは、自分

が裁かれているかのように思った。

長い、長い時間が静かに過ぎてゆく。

放心状態のスジョンと、手術室に入ったままのジェミンを、ただじっと見守

るしかないイヌクであった。

悔やんでも悔やみきれない後悔が、イヌクの心に押し寄せていた。


暫くするとサムがやってきた。

そっとイヌクに耳打ちをすると、二人はスジョンから少し離れたところで話

を始めた。

「どうやらソフィアが、あの男に指示したらしいです・・・」

「そうか・・」

あの事件以来、ソフィアにマンションの権利書と、まとまった金を渡して別

れを告げたイヌクだった。

『絶対にあなたを許さない・・・』

別れ際に言ったソフィアの言葉がよみがえった。

愛という名の狂気がすべてを狂わしていくのだろうか・・・イヌクの乾いた

心がいっそう空しく感じられた。

「それでソフィアはどうした?」

またいつ誰かに危害を加えかねないかと、イヌクは心配になって聞いた。

「ええ、あの男の供述でソフィアも捕まりました。」

イヌクは静かに目をつぶって、大きなため息をひとつついた。

「それで、あの方の傷の方は、どうですか?」

イヌクは静かに首を横に振って

「まだわからない・・」

と言った。

「そうだ、病室の手配を頼む。」

「はいわかりました。」

サムはそう言って席を立った。



やがて明け方になって、手術中のサインが消え、痛々しいジェミンが運び出された。

「あなた・・」

スジョンがジェミンのそばに近づこうとすると、

「もう暫くお待ちください」

と看護婦に言われ、ジェミンを見送ることしかできなかった。

「これから集中治療室に入ります。」

医師がイヌクにそう伝えた。

スジョンはイヌクと集中治療室の向かいにあるVIP用の特別室に移っていた。

ベッドやリビングもあり、集中治療室からも直接医師と話が出きるようになっていた。

「少し休めよ・・」

言っても聞かないと思いつつ、痛々しいスジョンを気遣わずにいられなかった。

暫くすると電話が鳴り、主治医から呼ばれた。

「俺が行って来るから、おまえはここで休んでいろ。」

「いいえ・・私も行くわ」

そう言ってスジョンが立ち上がろうとしたとき、めまいを起こし

思わず倒れそうになったのを、イヌクが支えソファに座らせた。

「今は俺が行く。その後でまた話を聞こう」

そう言ってイヌクが部屋を出て行った。

ここ数日の出来事で、スジョンは心身共に疲れ切っていた。

しかし、ジェミンを思えば眠ることすらできないスジョンだった。

「あなたに会いたい・・」

スジョンは途方もない暗闇に、つつまれていく不安を感じていた。

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