狩猟・釣り・千太郎の部屋

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2005.05.30
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昨日は成田射撃場で射撃大会に出場・・・なんて書くと何か代表選手のように聞こえるが、クラブ主催なので誰でも参加できる。

最近、暇なときにやっているのは、昔のビデオをDVDに録画し直していること。
納戸の古いビデオテープを整理していたら「千日回峰・・酒井雄哉」というタイトルのテープが出てきた。
これは昭和63年に「NHK教育テレビ・・こころの時代」という番組を録画したものであった。
酒井雄哉さんは比叡山延暦寺の高僧で、「千日回峰行」という荒行を2度も満行した「あじゃり」さんである。
何故かすごく懐かしく思え、すぐにビデオデッキにいれて再生すると、20年前のビデオテープとは思えないほど劣化も無く鮮明な画像で、若々しい笑顔の酒井さんが映り出された。
聞き手が元NHKチーフアナウンサーの飯田忠義さん(現NHKスクール・話し方教室講師)で、酒井さんに飯田さんが質問する「質問形式」の番組である。
酒井雄哉さんは、軍隊から復員後、様々な職業を経ながら結婚するものの、奥さんが自殺したり、始めた商売が上手くいかなくなったりして、一時は自暴自棄の人生を送りながら、最後に辿り着いたのが「比叡山延暦寺」であった。

酒井さんの経験した荒行を簡単に紹介すると・・・

「常行三昧」
90日の間、お堂の中をグルグル回り、休むことなく真言を唱え続ける行で、行が始まると90日の間、用便以外に座ることも寝ることも許されない、まさに人間の限界を遥かに超えた荒行である。
その昔、やはり比叡山の修行僧がこの「常行三昧」に挑んだが、途中で倒れ命を落とした。そして、その死に際に「このような行は二度と行わないでほしい・・」と言い遺して亡くなったことで、比叡山でも長年、この「常行三昧」を行う行者はいなかったのであるが、酒井さんが復活され満行(行を成就させること)した。

(飯田アナウンサー・・聞き手)
90日もの間、体を横にすることもなく歩き続けていくと、どのような感覚になるんですか?

(酒井雄哉さん・・答)
最初は足がパンパンに腫れて、やはり限界が来ちゃうんだよね。
そうすると、堂内の柱と柱の間に渡してある竹竿にもたれかかり、一瞬、ウトウトとするんだけど、すぐに目を覚まし、また歩き続けるんだよ。
体力の消耗とともに、足はまったく次の一歩が出なくなるし、意識が薄らいでくる。それでも続けていくと今度は陶酔状態になり、体がフワフワしてものすごいいい気持ちになって、真っ直ぐな道をどこまでもどこまでも歩いているような感覚になってくる。そこを進んでいくと途中で魔物に刀で斬りつけられるような感覚になってどうしようもない恐怖心が湧いてきたり、さらに先へ進むと海岸の波打ち際を歩いているような気がして、遠くから誰かが「おいで、おいで」と手招きをしている姿が見えてくるんだよ(臨死体験というやつか・・・)

(飯田アナウンサー・・聞き手)


(酒井雄哉さん・・答)
延べ1000日を7年間かけて歩き続ける行で、最初の数年は毎年100日づつ比叡山の山峯約40キロを歩きながら途中にある伽藍や石仏、一草一木に念仏を捧げながら前へ進んでいくんだよ。
この行は一度始めたら、病気になろうが悪天候だろうが何があっても途中で休んだり止めることは許されない「不退転」の行なんだ。もし、どうしても行を続けることが出来なくなったときは、腰に巻いている「死出紐」で首を吊って死ぬか、腰に下げている「短刀」で腹を切って死ぬしかないんだ。
そして4年目に「堂入」という行があるんだけど、この堂入というのは9日間、お堂に篭って「断食、断水、不眠、不臥」、つまり食べない、飲まない、寝ない、横にならないを満じなければならないんだよ。

(飯田アナウンサー・・聞き手)


(酒井雄哉さん・・答)
とにかく、食べない飲まない寝ないを続けていくと、体力が消耗してきて自分の体から異様な匂いがするんだよねえ・・ようするに「死臭」がしてくるんだよ。
そして、いろいろな幻覚を見るようになる。たとえば自分が外国の上空を飛んでいたり・・・ね。
いよいよ限界に達してくると、ものすごく気持ちよくなる。このまま目を閉じたらまさに「極楽浄土」だなと思うんだけど、堂入の行を行っている行者が一度、目を閉じたら二度と再び目を開くことはないという・・
あっちフラフラ、こっちフラフラと比叡山へ辿り着くまではいい加減な人生を送ってきた僕(酒井氏)だけど、そんな落伍者だった僕を檀家さんや多くの人たちが応援してくれて、ここまで来ることができたんだから、目を瞑って死んでしまおうなんて考えるのは僕の勝手なエゴで、何としてでも生き延びてご恩返しをしなければならないということに気が付いたんだよね。
結局のところ、人間なんて「死ぬ」か「生きるか」の二者択一しかないということにも気が付いたんだ。

(飯田アナウンサー・・聞き手)
行をするときの心構えは・・・

(酒井雄哉さん・・答)
べつに覚悟する必要もないし、気負うこともない。
ただ、毎日同じことを繰り返し繰り返し、コツコツと続けることだね。
そうすれば必ず「何かを掴む」ことが出来るし、「何かを得る」ことができる。
そして真面目にやることだな・・人はいくらでも騙せるけど仏や宇宙を騙すことは出来ないんだよ。
僕にとって行は「人生の砦」だし、昔から「無始無終」といわれるように、行には始めも終わりも無いわけだから、これからも行を続けていこうと考えているんだよ。人間誰でも生きることそのものが行なのだから、「行」特別なことではないんだよね。とにかく、何事もやるならやるで一生懸命やればいいし、やらないんならべつに寝ていても構わないわけだ・・・
何かを始めたらリズムに乗ることが大切だと思うよ。人生において良いことがあれば悪いことがあるなんて当たり前のことだし、いちいちそんなことに気を取られず真っ直ぐに進めばいいんだよ・・・


と言うような内容の講和だった。
そのビデオを観て、何か久しぶりにほのぼのとした気持ちになり、また忘れていた大切な「何か」を思い出せたような気もした。
ちなみに一昨年は、酒井さんのお弟子さんで「藤波源信さん」という修行僧が千日回峰を満行して晴れて比叡山「大あじゃり」となった。
コツコツと繰り返し行うことの大切さを聞くと、今更ながら意志薄弱の自分が恥ずかしく思えてしまう。





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最終更新日  2005.05.30 19:49:23
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