アルネのやねうら

アルネのやねうら

寝たままで過ごすママ


こういう電話は産婦人科では日常的にかかってきます。
正期産ならさほど問題ないのですが、週数のまだ浅い人なら一大事です。

仮にAさんとします。
Aさんは、まだ28Wでした。NICUなら救命できる週数ですが、うちの病院にNはありません。
「なんで母体搬送しないの!!」ナースは口々にそう言いました。
でも、ドクターはバルーン留置して正期産まで様子を見ると言い出したのです。
「ちょっと待ってよ。正期産まで2ヶ月もあるんですけど!搬送するべき!」
でも、私達ナースの意見など聞き入れられず、それからAさんの長い長い入院生活が始まりました。
ベッド上安静。骨盤高位。立つことも座ることも許されません。
食事も、排泄も、すべてベッド上。
すべて生まれてくる赤ちゃんのため・・

考えてみてください。
こんな日々が2ヶ月も続くなんて、そんなの耐えられるものなのでしょうか?
でも、Aさんは自分自身の辛さはあまり口に出しませんでした。
時に笑顔でおしゃべりし、もちろん涙をみせることもあったけど、それは大抵自分のことじゃなくて、生まれてくる赤ちゃんに対してや、上のお子さんに対して流された涙でした。
Aさんの強さと優しさには本当に頭が下がります。
そして、「母性」の限りない力を知りました。

Aさんは正期産よりやや早く、無事赤ちゃんを出産しました。
赤ちゃんはNに行かずに済みました。2ヶ月の間にすっかり大きく成長していました。
「Aさん、この子が大きくなったら絶対今までのこと話してあげてね。それでいっぱい親孝行してもらってね!」
私はAさんにそう言いました。






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