アサハカな論考もしくは非生産的妄想

アサハカな論考もしくは非生産的妄想

June 2, 2004
XML
テーマ: 新撰組!(307)
カテゴリ: カテゴリ未分類
八木邸の門には、左右に二つの看板がかかっている。「壬生浪士組」と「誠忠浪士組」。両者は互いに相譲ることなく、その対立は静かに、しかし激しく進行しつつあった。

芹沢は勇を本格的に敵視し始めた。将軍残留の嘆願の件で会津侯のもとへ出向いた勇のことを、「成り上がり者ほど上の奴に尻尾を振りたがる」と切り捨てる。俺は誰にも屈しない、近藤などとは違うのだ――あくまで泰然と構え無関心を装う芹沢だが、所詮はライバルを貶めることによって、かろうじて自尊心を保っているに過ぎない。そんな芹沢の虚勢をお梅はすっかり見抜いている。「格好よろしいなあ」――彼女の皮肉を芹沢は気づいているのか。

勇は会津侯と面会。「余は損得では動かぬ。大切なのは志だ」。「志」――勇にとっての最大の行動規範が、会津侯のそれと同じであったことに勇は感動を禁じえない。まさしく我が意を得たり。このお方を信じてついていこう。もはや勇から迷いは消え失せた。と同時に、将軍警護のために結成された浪士組は、京都守護職管轄下の機関として、あらためて京都に残る正当な理由を手に入れた。

さっそく任務の一環として大坂に出張り、商家押し借りの不逞浪士を取り締まる浪士組。だが、そこに居たのは依然として二つの組織だった。表から踏み込んだのが勇たちの「壬生浪士組」。裏口で待ち伏せていたのが芹沢率いる「誠忠浪士組」。勇は敵に斬りかかろうとする総司を制し、芹沢は逃げ出してきた敵を容赦なく斬り捨てる。任務終了後、揃って飲みに出かけるといっても、腹痛の斎藤を気遣い部屋に残る「壬生浪士組」と、それを玄関でイライラしながら待つ「誠忠浪士組」とではやはり温度差がある。行動単位は実質的に別々だ。

「壬生浪士組」は、その結束をますます強めつつあった。
大坂では、山南と永倉が斎藤の仮病を見破り、やくざ連中との関わりを知る。山南は手を切るよう説得し、永倉が小六と直談判に及ぶ。結果、ついに斎藤は悪縁から解放された。以降、義理堅い斎藤の恩義はもっぱら勇だけに向けられることになる。

京都では、一挙に増えた隊士たちに藤堂が堂々と稽古をつけている。いつまでも使いっ走りではない。今や立派な幹部のひとりだ。かと思えば、ひでさんに総司との仲を取り持とうと持ちかけたりして、八木家との関係も良好だ。

原田は松原と河合を連れていつもの汁粉屋へ。いつの間にやら、まさに好意を寄せ始めている様子。手土産の賀茂なすはそこらの畑からくすねてきたものだし、松原と河合の名前は覚えてないし、何でも好きなものをと言ったそばから汁粉三つと勝手に決めてしまうが、この無邪気な抜け具合がかえって松原たちを安心させる。当の本人はそんなことはまったく意識していないだろうが。

歳三は、水を得た魚のように「壬生浪士組」の勢力拡大に没頭している。



副長として仕事に燃えている歳三は、もはやお梅の誘惑などには乗らない。「事と次第によっちゃあ、あんたを斬るぜ」。今の歳三に付け入る隙はない。捨て台詞を残して去っていくお梅を見る視線も険しい。

これに対し、誠忠浪士組。着々と組織固めを進める歳三に危機感を覚えた新見は、「誠忠」の旗を作るように命じる一方、急遽新入隊士を集めて芹沢賛美の演説をぶつ。これを苦々しげに見つめる歳三たち。「芹沢、芹沢ってうるせえんだよ」。人の好い原田でさえも「誠忠浪士組」に対する敵意が芽生えている。

大坂では、ひとつの事件が起こっていた。芹沢が道を譲ろうとしない力士を斬りつけたのだ。大坂町奉行所の内山彦次郎の含みを得て、大挙仇討ちに押し掛ける力士連中。芹沢が不敵に受けて立ち、力士の頭目を一刀両断に倒すと、たちまち乱戦と化した。「誠忠浪士組」がすかさず参戦し、「壬生浪士組」もやむなく遅れて後を追う。いったん覚悟を決めれば「壬生浪士組」は強い。刀鞘で敵を払いのける山南。峰打ちで対処する永倉。怪力で敵をなぎ倒す島田。斎藤は修羅場は手馴れたもの。そんな中、総司がついに初めて人を斬った。

「武士は人を斬って喜ぶもんじゃないッ!」永倉の叱責も、総司の興奮を止められない。とそこへ、勇が遅れて到着した。事情を聞き激怒する勇。「斬っちゃった・・・人を・・・」――声を震わせうわの空でどこか満足げに語る総司の姿に、勇の怒りは頂点に達した。「嬉しそうに云うことかッ!!」――当惑する総司。だが、総司には理由があった。敵に追い込まれた野口を助けるためだったという。かつて自分が初めて人を斬ったのも、歳三を賊から助けるためだった――勇の脳裏に過去の重い記憶が蘇り、総司の胸ぐらを掴む手が思わず緩んだ。

勇は事件を届け出るため山南とともに奉行所へ。残された総司はすっかり意気消沈していた。勇の叱責が納得できない様子。不逞浪士の逮捕という今や正当な職務ですら、剣を振るうことを勇に止められた昼間の出来事が思い出される。こうした総司の不満顔を見て、すかさず芹沢が声をかける。野口を救ってくれた礼を述べ、その腕前を誉めそやす。自勢力への取り込みを企んでいるのは明らかだ。持ち上げられ、まんざらでもない総司。

後に致命傷になりかねないこのやりとりを、注意深く見守る者がいた。勇に不在を頼まれた源さんである。勇にとっては、多摩時代からよく気心の知れた心強い味方だ。源さんは、勇が内山彦次郎に田舎侍と罵倒されたことを、自分の事のように心から口惜しがり、勇もまた、自らが心惹かれている深雪太夫の正体を、以前窮地を救ったお幸だと源さんに真っ先に打ち明ける。無条件で信頼できる「壬生浪士組」の縁の下の力持ちだ。源さんがいる限り、総司が道を踏み外す心配は、(ドラマ的にはひと波乱あるだろうが)結局杞憂に終わるに違いない。

奉行所では、内山とは異なり事を穏便に済ませたい当番の役人が、当事者同士で解決するよう勇に言い含める。小野川部屋に向かう道すがら、下手に出ないようにという山南の進言を退け、あくまで勇は当方の非を詫びるつもりだ。果たして、勇が親方に誠実に謝罪すると、先方はこれを受け容れてくれた(ちょっとあっさりしすぎかとも思うが・・・親方を納得させる説得的な会話が欲しかったところ)。戻った山南が誇らしげに芹沢に事の顛末を報告する。「我々の方で収めておきました」――「我々」という一言に力がこもる。

ぶっきらぼうに「おう」と軽く相槌を打つ芹沢であったが、勇たちの姿が見えなくなった途端、膳をひっくり返し、苛立ちをぶちまける。またしても近藤にしてやられた!――自分の失策を事もなげに解決する勇の姿に、芹沢の焦燥感はいよいよ深まっていく。

「壬生浪士組」と「誠忠浪士組」。二つの看板は、ますますその距離が遠ざかっていく。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  April 18, 2012 02:05:28 AM
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Comments

乗らない騎手@ ちょっとは木馬隠せw あのー、三 角 木 馬が家にあるってどん…
リナ@ 今日は苺ぱんちゅ http://kuri.backblack.net/i9q5fg2/ 今…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/l83orqf/ フ○…
しおん@ ヤホヤホぉ★ こっちゎ今2人なんだけどぉ アッチの話…
バーサーカー@ ヌォォオオ!!!!!! http://bite.bnpnstore.com/nexnc09/ お…

Favorite Blog

かくの如き語りき トーベのミーさん
第1の扉@佐藤研 報告者@佐藤研さん
蘇芳色(SUOUIRO)~… 蘇芳色さん

Profile

quackey

quackey


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: