アサハカな論考もしくは非生産的妄想

アサハカな論考もしくは非生産的妄想

June 7, 2004
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テーマ: 新撰組!(307)
カテゴリ: カテゴリ未分類
「子はいつか親を抜くものどすえ・・・」

お梅のひとことにハッとした。漠とした不安をはっきり自覚させられた。このままでは、近藤に、百姓上がりの世間知らずに、この俺が負ける・・・いや、俺は武士だ。誇り高き尽忠報国の臣なのだ――もはや芹沢のよりどころは、自分が「武士である」という一点しか残されていない。強迫観念が芹沢を支配した。

又三郎が「武士」である自分に尻尾を振る。相変わらず町人臭さが抜けない奴だ。いちいち癪に障る。そんな心持ちで武士が勤まるか。町人あがりが俺に気安く近付くな。お前なんざ、一生武士にはなれぬッ!――芹沢は、勇の影を振り払うかのごとく、にわか武士を斬って捨てた。

「奴は取り入る相手を間違えた」

斎藤の呟きは、芹沢に近付く総司への戒め。総司とて、そんなことは言われなくても解ってる。近藤さんなら身分にこだわらない――そう又三郎に言ったのはほかならぬ自分なのだ。勇の度量の大きさは、自分が一番解っている。解ってはいるのだが。

総司は、力士を傷つけたことが気にかかっていた。

「人を斬るとはそういうことだ」

と、勇は言う。
ご説ごもっとも。泰然とした態度で正論を言わないでくれ。勇のように自らの所行を直視し、後悔することを恥じない姿勢は確かに厳かで美しい。だが、武士とは、こんなにも悩まなくてはならないものなのか?



芹沢の言い分が、今の総司には心地よい。決して潔いわけではない。単に事実を直視しないだけかもしれない。後悔の念に囚われる弱い自分を無理矢理力でねじ伏せてるだけかもしれない。だが、その方がずっと楽だ。虚勢という芹沢の処世術に自分も身を委ねてもいいではないか。勇のように強靱でなくてもいいではないか。

多摩の捨助がやってきた。
この男も、武士になりたい男のひとり。歳三に遊びじゃないと一喝され、町人に扮した高貴な武士にからんだ挙句、連れ去られていった。「武士」への壁は厚く、高い。

――武士とはいったい何なのだ?

その問いに、芹沢は強引に結論を出した。

相撲興行だ?
テメエらのやってることは武士じゃねえ!

尽忠報国の士に金を出すのは商人の務めだ!
黙って金を出しやがれ!
言うことを聞かないンなら、この俺が成敗してくれる!

悲痛な意地が、大和屋の土蔵の中で発火した。


屋根を見上げ、芹沢を直視する勇。
視線に気づき目を逸らす芹沢。
鋭い視線を離そうとしない勇。

――近藤よ、俺は武士だ。俺の意地を貫き通す。よく見ておけ!

自ら梯子を外してしまった屋根の上の鴨。



#力及ばず論旨散漫。無念。





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Last updated  April 7, 2012 05:41:15 PM
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