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突然の喀血により結核に冒されていることを知った明石。四十代の働き盛りで療養生活を余儀なくされ消沈する明石が入院先で出会ったのは、自分よりもさらに死に近い病人たちと、その儚い命の終焉だった。結核がまだ致命的な病であった時代、死の淵を彷徨い絶望と虚無に陥った男の心はどこへ向かったのか。生と死、信仰と救済。遠藤文学を貫くすべてのテーマが凝縮された感動の長編。
病室で飼っていた九官鳥が死んでしまうあたり
なんだか読んだことがあるような
気がしますが、
こちらへは感想文を書いていなかったのできっと読んだとしても
相当前のことなのかな。
それとも”沈黙”と同時期に書かれた作品のようなのですが
”沈黙”や他の作品に出てきた表現があるためもしかして
他の作品にも九官鳥のエピソードが出てきたのかも知れません。
実際に経験した闘病生活を元に書かれているものらしく
病気に直面した患者の心の揺れ
が良く表現されていると思いました。
でも、多分”私、もしかして癌(とか、他のの死病)?”と
不安になり検査を受けた経験がある人なら
もっと良くわかる気持ちなのではと思います。
今まで当たり前に生活してきて、当たり前に明日は必ず来るものだと
思っていたのにそれが突然断ち切られるかもしれないという
不安感や、いままで当たり前だと思っていたものへ感じる
突然の愛着
。
余命1ヶ月の花嫁でも触れましたが、
”明日が来ることは奇跡
。
それを知っているだけで毎日は幸せなことで満ち溢れている。”
というキモチですね。
いやしかし、何度聞いても名文です。
明日が来ることは奇跡。
一度はそんな気持ちになっても、人間病気が治ってしまうと
そんな謙虚な気持ちなど忘れてしまいがちですが
出来るだけこの気持ちを持ち続けていたいものだと思います。
また、そういえば昔の病院ってそんなだったなぁ~と
時代を感じたのがお医者さんのインフォームドコンセントが
なってないところとか。
大丈夫、大丈夫というだけで いったい何が大丈夫なのか説明しない
し、
手術によるリスクの説明もほとんど無し。
それに、お医者さんが患者さんに病状説明しながら
タバコをすっちゃうところなんか。
肺病患者の前で、ですよ??
今なら 殺す気か?!!
と大問題ですよね。
あと、療養所じゃなくてれっきとした病院なのに
病室で九官鳥なんか飼えちゃうところ。
今なら動物はすべてダメでしょうが、鳥なんか特にダメですよね。
鳥インフルエンザ
で殺す気か?!!!!
とこれもトップニュースになることでしょう・・。
著者本人が”いずれ手を加えたい”と言っていたらしい(あとがきより)
ですがいいたい事はたくさんあるけれど、それが何なのか
書いているほうも良くわかっていないような
ちょっとぼやけた感じ
が全体にありましたが、
これが、30年たって熟成され、”深い川”などの名作につながるのだなと
考えるととても意味深い小説に思えます。
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