2004年10月28日
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カテゴリ: 映画生活
死んであの世に行く前に、それまで生きてきた人生の中からひとつだけ想い出を選んで持っていけるとしたら、自分なら何を選ぶだろうか。そういうテーマを突きつけられると、やはり考えてしまう。幼い頃のことか、大人になってからのことか。ひとりで何かをした時か、誰かと一緒にいた時のことか。
日記 にも書いたが、今年カンヌ映画祭他世界各地で多くの賞を授賞した『誰も知らない』は本当に良い映画だったので、是枝監督の別の作品も観たくなり、先日ビデオで観たのが、99年公開のこの作品『ワンダフルライフ』である。

作品の舞台は、この世とあの世をつなぐ境目に存在することになっている、古いお役所のような施設。人は死ぬと、この施設に必ず立ち寄るしくみになっていて、その日から7日間のうちに、それまでの人生を振り返って一番大切な思い出をひとつだけ選ばなければならない。選ばれた想い出のシーンは、施設の職員によって再現、映像化され、各自、最後にその映像を見ながら想い出を胸に天国へと旅立って行くのだ。
悩んだ挙句にごく平凡な日常の一コマを選ぶ人、最後まで決め切れない人、想い出を選ぶこと自体を拒絶する人など、人々の態度は三者三様で面白い。確かに、いい想い出がある人ばかりではないだろうし。

しかし、とにかく面白かったのは、やはりこの監督の映画作りの手法だ。作品のストーリー設定はこうしたある種の「おとぎ話」でありながら、見せ方は真に迫る「ドキュメンタリー番組」そのものなのである。あの世に行く人たちの大部分が、おそらく無名の役者かまったくの素人で、過去の思い出を回想しながら語る様子などは、ほぼその人の実話ではないかと感じたほどだ。
この、「おとぎ話」と「ドキュメンタリー」が融合する手法のせいで、一見他愛もないストーリーが妙にリアリティを持ち、観終わった後には不思議な余韻が残るのだ。しかもそれは、決してネガティブなものではなく、むしろなんとも言えない爽やかで心地良い余韻である。


もしあの世がこんなシステムだったらと思えば、亡くなったアノ人のことを考えても、少しは心が軽くなる。
それにしても悩ましいのは、自分がひとつだけ選ぶ想い出を何にするか、である。とかいいいながら、実はワタシは即座に「これだ」と思ったものがあるのだが、内容についてはとてもヒトには話せません。


ワンダフルライフへの入口





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最終更新日  2004年10月29日 03時37分20秒
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