2006年01月07日
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カテゴリ: 雑考生活

『プロフェッショナル広報戦略』 。タイトルから想像すれば、組織の広報戦略構築の理論が、最近流行りのMBA本的にまとめられたビジネス書かと思えるが、そういうのを期待して読む人には期待外れの本である。が、ワタシにとっては意外に結構面白かった。以前からちょっと気になっていたことがあって、この本を読んで「やっぱりなー」と大いに納得したからである。

著者である世耕弘成(せこう ひろしげ)さんは、元NTTの広報部門出身で、会社から米国留学して広報理論を科学的かつ体系的に学んだ上で、帰国後はその経験を広報の現場での実践に活用し、かつてリクルート事件の際にもNTTとしての広報対応の責任者として手腕をふるったヒトである。それが後にひょんなことから政界へと転身。この前の衆議院選挙では、自民党広報改革プロジェクトのリーダーとして自身の広報戦略ノウハウを持ち込み、結果として小泉自民党に歴史的大勝をもたらした陰の立役者と言われている。

この本は、それらを世耕さんがどんな風にしてやってきたかということを、自分の足跡とともに紹介するような構成になっているのだが、ワタシが「やっぱりそうかー」と思って面白く読んだのは、その中で日本政府を筆頭に各政党や官庁のこれまでの広報体制というものがいかにお粗末なモノであったか、ということが赤裸々に暴露されている点である。例えば元総理の森さんなんかは任期中の失言に次ぐ失言で無茶苦茶だったが、あれなんかはマジで笑ってる場合ではなくて、我が国には、国のトップが失言を繰り返したせいで諸外国から馬鹿にされようが株価が暴落しようが、当時はそのことを国家の危機として制御するシステムも体制も、「実は何ーんにもありませんでした」という恐ろしい事実。反対に、積極的に首相や政府をPRする機能も何もないし。

一方、小泉さんなんかは、どこまで計算だか天然なんだか知らないが、そう簡単に窮地に追い込まれたりしないところを見ても思うが、やはりある意味「コミュニケーションの天才」なのだそうだ。けど、そういう個人技に頼ってこの先進んで行くわけにもいかないし、いずれにしても今後この世耕さんを中心にした政府の広報改革というのが健全に発展することを祈りたいものである。まぁ世耕さんのやってらっしゃること自体を読むと、セオリー通りというか非常にオーソドックスな戦略という感じだが、選挙戦を通じての広報体制作りの過程や民主党対策の動きなど、なかなか現状の周囲の意識を変えることの苦労などもよく分かって、政府の内情暴露本としては結構お薦めです。

それにしても、名作「24」でのデヴィッド・パーマー政権なんかは、才能あるトップと充実した広報システムとがベストマッチの盤石な体制で、ある種、組織の戦略的広報体制としても理想系ですなぁ。






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最終更新日  2006年01月15日 05時17分55秒
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