2006年01月16日
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カテゴリ: 回想生活



夢か現(うつつ)か、「ゴゴゴゴゴ」というこの世のものとは到底思えない地鳴りのような激しい地響きが寝入りばなの混濁したワタシの意識の中を掻き混ぜる。直後、天を突き上げるような激しい衝撃。アルコールによる軽い酩酊感と極度の疲労からくる深い眠りを突然断ち切る強烈なショックを体に感じながらも、身体は翻弄されるままなすすべもなかった。なんだかわからないが「世界の終わりが来たんだな」との思いが瞬時に脳裏をよぎる。自室で寝ていたワタシの頭部をかすめて大型のラジカセが落下、続いて枕元にそびえる本棚やCD棚ラックから大量の書籍やCDがザルをぶちまけたように一気に体の上に落ちてくるのを感じながら、辛うじて反射的に布団で頭部を守ることだけには体が反応する。

随分長い時間に思えたが、しばらくして強烈な縦揺れはようやく収まった。ワタシを含め、自宅にいた両親と妹の計4人の家族は全員2階にある自室で寝ていたのだが、1階にあるダイニングルームでは、家具や食器類がけたたましい音をあげてへし折れ、砕け散り破壊されている様子がまだしばらく鳴り響く。その音もやがて静かになった頃、ようやくワタシは自分の体に覆い被さる本棚やCDなどをかき分けて、起き上がる。外はまだ暗い。明らかに自宅の床が斜めに傾いているのが判る。廊下に出ようとしたが、ドアの立て付けが狂っていて開かず、足で思い切り蹴破って出る。隣室の両親の部屋を覗き声をかけると無事のようだ。反対隣の部屋にいる妹もとりあえず無事のようだった。

階段で1階に降りダイニングルームの扉を開けると、ダイニングボードやキュリオケースおよび母親の趣味で異常なまでに収集されていた食器類などなどが無残極まりない状態で部屋中を折り重なり埋め尽くし、木材や陶器やガラスの破片が木っ端微塵となり、とても部屋に入れる状況ではなかった。
玄関から外に出ようとすると、家が傾いているようで今度は玄関のドアが開かない。再び蹴りまくってようやく開け、外に出る。吐く息が白い。自宅前の道路は異様な形に大きく波打ち、さらに約100メートルに渡って幅10センチほどの亀裂が走り、その亀裂を境に上下に5センチほどの段差が出来ている。ただ、近所の家々を見ると倒壊した様子はなく見た目の被害としてはさほど感じられなかった。
庭に廻り、飼い犬の駄犬タローを見ると、普段はちょっとのことで唸り声をあげて吼えまくるくせに、この時に限っては不思議なほど何も声を出さず、ただ立ってじっとこちらを見ているだけだった。

家の中に戻ると、今後何かと必要になるのではと思い、ひとまずビデオカメラを持って家中の被災状況を撮影した。テレビをつけると、この時点ではまだ電気は通じており、NHKで「棚の上からモノが落ちてきてケガをしたヒトが1名」などと(ンなワケないやろと)いう冗談のような軽い被害の速報を繰り返し伝えていた。

そうこうしているうちに外が明るくなってきたので、どうみてもこれは長期戦になるに違いないと思ったワタシは、当面の食料とクルマのガソリンを確保しようと、早朝の街にクルマを走らせ出て行った。ワタシの自宅は阪神間でも「山の手」というよりもかなり「山の上」に近い高さのところにあるのだが、クルマで下界に下りて行くにつれ、街の状況がやはりただごとではないことに徐々に気付き始めるのであった。(つづく)





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最終更新日  2006年01月17日 02時53分28秒
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