2006年03月31日
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カテゴリ: 映画生活


ドキュメンタリーフィルム 『シリアル・キラー アイリーン』 の主人公であるアイリーン・ウォーノスは、美人女優シャーリーズ・セロンが演じて話題になった映画 『モンスター』 のモデルであり、実在したアメリカ初の女性連続殺人犯である。
最近続けざまにこの2本を観たのだが、『モンスター』の方は、不遇な主人公を取り巻く「愛と裏切りのラブストーリー」という描き方であり、どちらかいうとシャーリーズ・セロンの変貌ぶり(13キロ増量+不細工メイク)での話題が先行した感がある。

一方、『シリアル・キラー アイリーン』は、なんたってホンモノである。英BBCなどで活躍し、マイケル・ムーアとも親交があるというドキュメンタリー作家ニック・ブルームフィールドが、アイリーン・ウォーノスの逮捕から死刑執行までを追い、刑務所内での本人への単独インタビューを何度も重ねた渾身のドキュメンタリーなのだ。連続殺人犯本人と直接接触した記録として、彼女の内面に迫るやりとりが非常に興味深い。
そもそもアイリーンのシリアル・キラーとしての発端は、恋人であったティリア・ムーアとの生活を維持するために続けていた売春稼業の末、お客の変態野郎に暴力プレイで殺されかけ、逆に銃で射殺してしまうところから始まるのだが、以下、参考までにアイリーン・ウォーノスの年表である。

1956年2月29日 ミシガン州ロチェスターに生まれる。
1960年3月 アルコール依存症の母親ダイアンが、アイリーンと兄キースの育児を放棄。2人はダイアンの祖父母に預けられる。祖父からはベルトのバックルで殴られるなど激しい虐待を受ける。
1971年3月 14歳で父親不明の男児を出産。子供はすぐに養子に出された。※兄キースと近親相姦の関係あり。
1971年7月 家を飛び出し、売春をしながら放浪生活を始める。
1974年5月 コロラド州で酒に酔って車から銃を乱射し、逮捕。
1976年6月 富豪の老人ルイス・フェルと結婚し、1ヶ月後に離婚。
1981年5月 フロリダ州でコンビニ強盗を働き、実刑判決。1年間服役。
1984年5月 キーウェストの銀行で偽造小切手を使い、逮捕。
1986年1月 デイトナのバーでティリア・ムーア(ゲイの恋人)と出会う。
1989年11月30日 リチャード・マロリー殺害を皮切りに、連続殺人を開始。
1990年6月1日 フロリダ州シトラス郡で、デヴィッド・スピアーズの死体が発見される。
1990年6月6日 フロリダ州パスコ郡で、9発の弾丸を撃ちこまれたチャールズ・カースカダンの死体が発見される。
1990年7月4日 フロリダ州オレンジ・スプリングスで、6月7日以来行方不明だったピーター・シムズの車が発見される。目撃者の証言によって、車は2人の女性が乗り捨てていったものと判明。
1990年8月4日 トロイ・バーレスの死体が、フロリダ州オカラ国立公園の敷地内で発見される。
1990年9月12日 元アラバマ警察署長、ディック・ハインフリースの死体がフロリダ州マリオン郡発見される。
1990年11月19日 クロス・シティの森の中で、ウォルター・アントニオの死体が発見される。
1991年1月9日 ハーバー・オークスのバー「ラスト・リゾート」で、囮警官により逮捕される。
1991年1月16日 自供を開始(正当防衛を主張)。
1992年1月 マロリー殺害の罪で、死刑判決が下る。
1992年5月 バーレス、ハインフリース、スピアーズ殺害の罪で、死刑判決。
1992年11月 カースカダン殺害の罪で、死刑判決。1993年2月アントニオ殺害の罪で、6回目の死刑判決。
2002年10月9日 フロリダ州刑務所で薬物注射により死刑を執行される。享年46歳。

アイリーンの場合、殺人の動機を「自分の不幸な生い立ちに対する、歪んだ社会への復讐」としており、いわゆる快楽殺人ではない。殺害対象も、自分を買おうとした売春客の男性に限定されている点からみても、思考回路は割と真っ当である。別に彼女の殺人行為を肯定する気はないが、確かに彼女の言うように、世の中の多くのシリアル・キラーたちは、概ね生い立ちが不遇である。あの有名な殺人鬼、 チャールズマンソン にしても、売春婦だった母親が事件を起こして刑務所に入ると、引き取り先の叔父からは虐待を受け、少年時代に刑務所に入れられると、同性愛の看守によって性的暴行を受けたりしている。

正確なデータは知らないが、幸せな(或いは普通の)家庭環境で育った子供に比べ、幼少期に家庭環境に恵まれなかった少年少女が大人になって犯罪に手を染める確立というのは、きっと格段に高いはずである。まさに不幸の連鎖である。シリアル・キラーを増やさないために我々にできるのは、せいぜい自分の子供を不幸な環境に置かない努力をすることであろう。虐待されて育った子供は、必ずや荒んだオトナになるのだよ。頼むよ、世の親たちよ。

で、この『アイリーン』だが、まぁいずれにしても、芸術作品を見るというよりも、殺人犯の取材記録なのであまり観て後味の良いものではない。観るなら『モンスター』までにしといた方が良いと思います。だったら観なきゃいいのに、ということなのだが、なぜかこういうテーマは気になってつい観てしまうんだなぁ。
終わりに、彼女の最期の言葉が凄い。


「私はキリストと船に乗って旅立ち、再び地上に現れる。……私は必ず戻ってくる」。
(本人画像)






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最終更新日  2006年03月31日 18時30分48秒
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