世界で一番愛する人と国際結婚

バリのガムランが聞こえる 2




日本には空手留学をしていたことがあり、ほんの少し日本語の
単語を知っているだけだった。


バリ島というのは、もちろん名前は知っていたが、
私は行ったことがなかったし、なにやらエキゾチックな南の
島のイメージしかなかった。



インドネシアの大学を卒業した後、NYの大学にも留学していた彼は、
私より少し年上で、来月卒業して国に帰るのだと言った。



近くで見ると、更に彼の身体のしなやかさ、贅肉のひとつもない
引き締まった体に魅了された。



長い間立ち話をした後、グリは今度お互いの友人を交えて食事を
しないかと提案してきて、

私達はようやくインターナショナルセンターを後にした。



数日後、タイ料理のお店で、グリとグリの友人、
私と、私の友人エリアーナと4人で食事をした。


エリアーナは、当時私の大親友だったブラジル出身の女の子。
彼女と私は挨拶と別れ際には、いつも両頬にキスをし合っていた。



食後、彼女達と別れて2人だけになった時、グリが突然言った。



「エリアーナが羨ましいなあ。僕も君にキスをしたい。」



私は背伸びして、彼の頬にキスした。


One kiss for you.


と。



彼は照れて、とても嬉しそうに、


Another kiss for you.


と私の頬にキスしてきた。




そのとき一体、私達に何が起こったのだろう。



あれだけ何人もの人とデートをしても、誰とも恋には落ちなかったのに。



マンハッタンの片隅にいた、異国同士の2つのハートが
呼び合ったかのように、惹かれあったのだと思う。



私達はその日を境に、ほとんどの日を一緒に
過ごすようになってしまった。



夕食は、ほぼ毎日一緒に食べていた。
彼はよくインドネシア料理を作ってくれた。
私も交代で和食や洋食を作るようになった。


ただ彼は、どんな食事にもチリのような辛いソースをかける。


私が作った、繊細な味付けなどおかまいなし。


イタリアンを作っても、彼は白いご飯がないと食べられないという。


全ての料理に白いご飯が必須。


元々、パンやパスタのほうが好きな私とは、
食生活が合わないのではと懸念するほど。



だが、グリといると毎日が楽しかった。
素直で楽天家で、いつも冗談を言って笑ってばかりいるグリ。


食事の問題以外は、私達は何も揉めることもなく、
彼と付き合い始めて、あっという間に1ヶ月が過ぎた。



彼のアパートは、ウォールストリートに程近い、
マンハッタンの南部にあった。


とても広いワンルームに、立派なバスルームが付いていた。


アメリカやヨーロッパに留学している、東南アジア出身の
学生の例にもれず、彼の家も裕福なのだろう。


彼が故郷に戻った後は、彼の父親がやっているビジネスの一部を
任される予定なのだと言った。


やがて、彼の帰国が近づいていた。



つづく


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