アオイネイロ

May 17, 2009
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カテゴリ: 小説
「る……はる」
声がした。知らないはずなのに、知っているような……。
「ん……う?」
ゆっくりと目を開けば、そこには自分を覗き込む男の人。

「………?」
「あ、陽。起きた?」

きょとんとして目を瞬かせる陽に、男性がそう言う。
その首には、陽がクロに付けていた赤いリボン。

「え、もしかして……」


ぽかんとしている陽に向かって、クロ(?)がそう言った。
「クロって……猫は飼ってるけど、人は知らない」
「いや、だからその陽に飼われてるクロだよ」
まだぼけっとしている陽に向かって、クロが呆れたようにそう言う。

「ここは……?」
段々と目が覚めてきて、陽はキョロキョロと辺りを見回した。

「あれ、陽覚えてない? 本を開けた事」
「本? 変な本屋さんで……おじいさんが、赤い本を……」

クロの言葉に、陽ははっと目を見開く。
「そう、この本。そこに落ちてたよ」
クロがそういって陽に手渡した赤い本は、確かにあの時おじいさんから渡されたもの。

最後に聞こえたおじいさんの言葉を思い出しながら陽はペラ……と本を捲った。
中身は真っ白で、インクのシミひとつさえ無い。
そんな本の一ページ目に、じわりと蒼い色が滲んだ。
「!?」
陽がじっとそれを見守る中で、真っ白だったページに次々とインクが滲んで文字が描かれてゆく。


色鉛筆調の挿絵と共に、そうタイトルが書かれ、そこで何事も無かったかのように
その不思議な光景はピタリと止まった。





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Last updated  May 17, 2009 12:54:56 PM
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