アオイネイロ

May 23, 2009
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カテゴリ: 小説
もしも疾風とアスカさんが今出会ったら~♪
『言葉遊び編』


「この草原抜けたら次の街だよねぇ?」
「う……ん、多分」
苺夢の問いかけに、沙ゞが曖昧に答えた。
「迷ったかなぁ?」
「いやいや、でも合ってるハズなんだよ~」
籟琉の言葉に沙ゞが困ったように地図を睨む。
そんな事をしていると、向こうから誰かが歩いてきた。

蜻羅の言葉に、皆が頷いてその人の元まで走って行く。

「あの、すみません! 道に迷っちゃったんですけど……街に行くにはどうしたらいいですか?」
「ん……街?」

るかがそう声をかければ、歩いてきた女の人が顔を上げて被っていたフードをとった。
真っ黒い髪に、透けるような海色の瞳。
「あ、すか……!?」
後ろにいた疾風が、その人物を見て驚いた声を上げた。
「え……?」
一方女の人は疾風を見てきょとんとした表情をする。
「アスカ。我……。あ、昔……世話になった」
珍しく焦ったような、狼狽したような伝わりにくい説明を疾風がした。

「も、しかして……少年っ!!?」
疾風を指差して驚いたようにそう尋ねた。
疾風が即座に頷く。
「うわ……少年、少年かぁ………っぷ……あははははははっ!!!」
アスカがへぇ~と珍しそうに疾風を見上げたかと思うと、大爆笑し出す。


「え、え~と。疾風、知り合いなワケ?」

一人で腹を抱えて大ウケしているアスカを指差して、紅亜が微妙な表情でそう問いかけた。

「ああ。我の命の恩人で、師でもある」
「わ、われだってー! あははははっ!」

疾風の言葉に、一々ツボって爆笑するアスカ。
そして、やっと笑いが収まったらしくアスカは目尻に溜まった涙を拭うと疾風の肩にぽん…と手を置いた。
「大きくなったな、青年!」
晴れやかな笑顔でそう言って、そしてまた笑い始める。
「疾風の、師匠」
天音がそれを見てポツリ呟いた。
一体何を教えてたんだろうとかとか甚だ疑問である。

「あ、青年っ! 強くなった? 腕見てあげるよ!」
「え………」

アスカの言葉に、疾風が明らかに引き気味の声を上げた。
「へぇ~、疾風の師匠って私も気になるなー。疾風、ちょっと戦ってみたら?」
籟琉の言葉に、いつもなら二つ返事で了承するものを疾風がぐっと言葉に詰まる。

「疾風?」
「あ、あぁ……」

凜の不思議そうな呼びかけに、ようやく頷いた疾風。だが若干顔色がよろしくない。
そしてゆっくりとアスカに向き直る。
「どれぐらい強くなったかな~♪」
「アスカ……頼むから手加減はしてくれ」
楽しそうなアスカを前に、疾風がため息と共にそう言った。
声からして、とても切実だった。

「疾風が、手加減してくれって……」
「けれど、空の民でいらっしゃいますよね? どれ程強い方なので御座いましょうか」

皆が思わず目を見張る。
疾風が女の、しかも人相手に、そう言ったことさえとても以外である。
そんな中、アスカがそこら辺に落ちていた棒っきれを手に取ってぶんっと振った。
しかし驚く皆をよそ目に、疾風は大剣を取り出す。
相手が棒一本で、躊躇わずに武器を出したのは多分これが始めてなのでは無いだろうか。

「じゃあ、レディ……ファイッ!」
「戦いの歌!」

葵の言葉とほぼ同時に、疾風がそう叫んだ。
疾風を取り巻く魔力が一気に強くなる。

「始めから飛ばしていらっしゃいますね。疾風、本気の様ですね」
「力とスピードの底上げから行くとは、かなりの警戒様だね」

蜻羅の言葉に、紅亜も真剣にそう返す。
皆とても興味深そうにその成り行きを見守っていた。
「風の刃!」
そう叫ぶと同時に、疾風が一瞬でその場から消えた。
元々早いスピードが、『戦いの歌』によって更に上がり、目に終えないくらいの早さとなっている。
けれどアスカは動じもせず、放たれた風の刃を片手を軽く振っただけで掻き消した。
「ふふ……、魔力も早さも断然上がったみたいだね☆ でも……」
そう言ってアスカが、棒をひゅっと後ろへ向ける。
後ろに移動した疾風の首に、棒の切っ先が向いていた。

「まだまだ、遅いかな?」
「くっ……!」

微かに笑うアスカに、疾風は左手でその木の棒を掴むと大剣を真一文に一閃させる。
「おっと……」
アスカが木の棒を掴んでいる疾風の力を利用して、そのまま上へトン……と飛ぶ。
そして疾風が木の棒を離すよりも早く、遠心力で疾風を思い切り振り上げた。

「え……?」
「あ……」

思わず声を上げる皆をよそに、アスカが背負い投げのような要領で疾風を思い切り地面へと叩きつける。

「まあ、若干受身は取れてるけど、脇も甘いんじゃないかな~? ほらほら、もう終わり?」
「っ………空より来たりて咆哮(さけ)べ、ヴルクッ!!」

アスカの言葉に、疾風がそう叫んで、手を地面に着いて思い切り跳んだ。
空中でくるりと一回転して、そのままアスカに向けて剣を薙ぎ払う。
風圧が一瞬で龍へと姿を変え、咆哮と共にアスカに襲い掛かる。
多分、今まで疾風が使った中では一番強いと思われる魔力の量だった。
「ふふっ♪ ――影法師」
軽く笑ったアスカがそう言った瞬間、アスカの影がぐにゃりと歪んだ。
そこから手が伸びて、風でできた龍の頭を掴む。
そしてそのまま、龍が影の手に吸い込まれた。
「ふっふっふ☆ 甘い、甘いぞ少年よっ!」
腰に手を当てて軽く指を振るアスカ。

「強い、ですね……」
「これは、最強というべきだろ」

凜の言葉に、葵が半眼しながらそう言った。

「てゆーかさ、似てない? 誰かさんに」
「うん。言葉ってかセリフってか、行動?」

沙ゞの言葉に、るかも頷く。
「え? 私? 似てる~?」
皆の視線の中で、時歌がきょとんとした。
「ふ~ん。今の少年のお仲間さん達か~」
アスカが皆を見回してそう言う。

「そいえば、迷ったんだっけ?」
「あ、ああ。そうだ。アスカは何故此処に?」

アスカが疾風を振り返ってそう尋ねてくるのに対して、疾風が軽く頷く。
「ん~。丁度お仕事以来されてねー。最近ここにさぁ~」
アスカが指をぴっと立ててそう言った時、皆の上に影が落ちた。
「あー。あれあれ。あれが出るから退治してほしいってねー☆」
上を指差すアスカ。
それを辿って空へと視線を向けると。
翼の生えた、巨大な大龍(ドラゴン)。真っ赤な全身と、黄色い瞳。
「グギャアアァァァァァッ!」
その大龍が、一際大きく吠えた。

「……教科書外どころか要警戒魔物(危険度最上級モンスター)だな。強い順に並べても指折りに入るぞ」
「い、いや……疾風……のんきに説明してる暇ないでしょっ!!」

その大龍を見上げて静かにそう言う疾風に、天音が引きつり気味の声でつっこむ。
「全員でかかっても魔力負けするでしょうね」
凜が緊張をはらんだ声でそう言った。
「ああ、大丈夫だ。その心配は無いだろう」
また、疾風が呑気にそう返す。

「しし、心配無いって?」
「我等が全員でかかる必要など無いと言う事だ」

苺夢の震える声に、疾風がそう言った時
「さぁ~て、久々に腕が鳴りますね☆ 勝負だトカゲ君よ~っ!!」
アスカの楽しそうな、呑気~な声がその場に響き渡った。





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Last updated  May 23, 2009 07:43:10 PM
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