アオイネイロ

May 27, 2009
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カテゴリ: 黒日記
苺夢さんに捧げるお祝い。
苺夢さん以外お持ち帰り禁止です。。
てゆーか、こんなのでいいのだろうか・・・?



天気が良いから、久しぶりに凜に会いに行こうと灰色世界を抜け出して……
「凜、どこだろうなー」
呟きながら、辺りを見渡した時。
丁度、あのクセのあるふわふわの金髪が目に入った。
「お、り……」
呼びかけて、疾斗は言葉を止めた。

話が終わるまで待とうかと思った時、目の前で、凜が疾風にキスをした。
「な……?」
唖然としている中、凜が疾風に笑いかけて颯爽と去って行ってしまう。
――今のは何だ? 何で凜が疾風に……?
先ほどの信じられない光景が頭の中をぐるぐると廻る。
会って確かめれば良いと思いなおす。そうだ。そうしよう
そう決めて、疾斗は駆け出した。



「ふう……」
一方凜は、天気が良いので一人散歩をしていた。
ゆっくりと足を進めて、時々止めての繰り返し

「凜っ!!」
叫び声、振り返れば疾斗がそこに立っている。
「疾斗、どうしたんですか? 久しぶりですね」
ふわりと笑ってそう言えば、いつもならすぐに笑顔が返ってくるのに、目の前の人は複雑そうな瞳で凜を見つめてくる。

「なあ、凜……その……」


言いにくそうにそう言葉を紡ぐ疾斗に、凜は首を傾げた。
「あ、のさ。疾風と……キス、してたよな?」
疾斗の口から出たのは、そんな信じられない言葉。
「私が、ですか? いつ……」
眉を寄せて問い返す。勿論凜にそんな記憶は無かった。
「さっきだよ。ほんの数分前。何か事情でもあってそうなったのかと思って」
焦ったようにそう言う疾斗に、凜はただただきょとんとする。
そんな時だった
「あら、二人で何をしてるんですか?」
自分とそっくりな声がして、見れば憐がそこに立っている。

「憐!? どうしてこっちに」
「別にいいでしょう。私の自由です」

疾斗が驚きの声を上げるのに対し、憐はにっこりと笑ってそう言った。
「あ、もしかして憐さん。疾風にキスしましたか……?」
凜が思い立ったようにそう尋ねる。
「……ええ、ちょっとからかってみました♪」
憐はふふっと楽しそうに笑ってそう言った。

「じゃあ、あれは憐……」
「では、二人共失礼しますね。私はそろそろ戻ろうかと思うので」

ほっとしたような疾斗の言葉と、憐の楽しげな声。
でも、そんなのは凜にとってはどうでも良かった。

「わ、悪ぃな凜。疑ったりして」
「……別に、気にしてないですよ」

疾斗の言葉に、凜が静かにそう返す。
「私も、もう行きますね」
一度も疾斗と目を合わせる事無く、そう言って凜が立ち去ろうとする。
「ま、待てよ。悪かったって言ってるだろ!」
凜の手を掴んで、疾斗がそう言った。思わず語調が強くなる。
「だから、私は疑われた事を怒っていませんよ」
ひたすらに静かに、凜がそう言った。

「でも怒ってるじゃねぇか」
「私は、疾斗が私と憐さんの区別がつかなかった事に対して怒ってるんです」

疾斗の言葉に、凜がそっぽを向いたままそう返す。
「そ、んなの。仕方ねぇだろ、同じ顔なんだから!」
「私はっ! 私は一度も、疾風と疾斗を間違えた事なんてありません」
疾斗の言葉に凜も口調を荒げる。
こうなれば、売り言葉に買い言葉。

「それは俺と疾風の髪型違うからだろっ!」
「疾斗の髪が短くなくても、私は見分けがつきます!」

疾斗の言葉に、凜が悲しげな顔でそう言うと疾斗の手を振り払った。
「じゃあ、私は帰りますね……」
それだけ言い残して、凜は走ってその場から消える。
「凜! ……くそっ、なんだよ……」
そうは言ってみたものの、明らかに自分が悪いのは自覚していた。
あんなに大好きなのに、他の人と区別もつけられないなんて……。
疾斗が髪を切る前も、凜は疾斗に対して「疾風」と呼んだ事は無かった。
「あー、どうすっかな」
一人後悔の念にかられる。けれど今さら謝りに行くのも気が引けた。
一人その場をうろうろとする。

「あ、疾斗? 何やってんの?」
「沙ゞ? いやー、別に何でもねぇよ」

沙ゞが疾斗を見てきょとんとするのに対し、疾斗は気まずそうにそう言った。
「ふーん?」
「あ、そうだっ! 何かさ、すぐ髪が伸びるようなもん無いか?」
疾斗が突然、思い立ったようにそう声を上げる。
「髪が伸びる? うーん。そういう薬なら作れるかなー」
「マジかっ!? すぐ伸ばしたいんだ! 作ってくれねぇか?」
沙ゞの言葉に、疾斗が飛びつく。
「う、ん? 構わないよ。ちょっと待っててね」
そう言うが早いが、沙ゞがその場に座り込んで何やら色々と準備し出す。
そして、沙ゞの隣でその薬が出来るのをやきもきしながら待つ疾斗。

「ほい、できたっ! 飲んで数分で効くはずだよ」
「サンキュッ!」

沙ゞが疾斗にそれを渡した瞬間、疾斗がそれを一気に飲み干すと駆け出した。
早く、早く凜に会いたい。
一方凜は、部屋に戻って一人ため息をついていた。
「なぜ、あんなに怒ってたんでしょう……」
怒る事も、泣く事も、本当になかったはずなのに
疾斗といると抑えられなくなる。
後悔が、ぐるぐると頭の中を廻っていた。
「凜、居るか?」
部屋のドアがノックされて、声がする。
一瞬疾斗かと思ったが、それとは違う、低く落ち着いた声。

「疾風、ですか?」
「ああ。凜、入るぞ」

小さく問いかければ、そう声がしてドアがガチャリと開く。
鳶色の長い髪を一本に結った、表情の少ない人。
「どうしたんですか?」
「いや、少し凜に伝えたい事があってな」
凜がそう尋ねるのに、疾風が小さな声でそう言う。

「伝えたい事?」
「ああ、疾斗からだ」

聞き返す凜に、疾風がそう言った。
「疾斗……」
「その、先程はすまない。と言っておいてくれと」
疾風がそう言って、凜が俯く。
「では、我は……」
「あ、あのっ!」
踵を返しかけた疾風に、凜が顔をあげる声をかけた。

「何だ?」
「え、っと……。私の方こそ、すみませんでした……疾斗」

振り返った、疾風のフリをした疾斗に、そう謝罪する。
少しの沈黙がその場に流れた。
「え?」
「だから、疾斗でしょう? どうやって髪長くしたんですか?」
ぽかんとする疾斗に、凜がそう言う。
「な、なぁ!? なんで分かったんだよー。俺超ー頑張ってたのに……てゆーか俺すげー恥ずかしいじゃねーかぁ……」
その場に座り込んでため息をつく疾斗に、凜がクスクスと笑った。

「やっぱり髪、短い方が似合ってますよ」
「そうだな。俺もそっちの方が楽な気がする」

お互いにそう言って、顔を見合わせてクスクスと笑い合う。
「切りましょうか?」
「おう!」
凜がハサミを取ってくる。
はらはらと床に落ちてゆく長い髪。

「やっぱ髪ないと軽いなー」
「ふふっ。さっぱりしていいですよ」

元通りになった髪を弄びながら言う疾斗に、凜が笑う。
「なあ、凜」
「はい?」
疾斗の呼びかけに、笑顔で返す。

「大好き」
「……私もです」

ただ、そこにいるだけの幸せ。





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Last updated  May 27, 2009 09:48:21 PM
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