アオイネイロ

June 14, 2009
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カテゴリ: 小説
すっごく長くなりまして、しかも何か色々めちゃくちゃですが
これで終わです^^;
長らくお付き合い下さりありがとう御座いました!!
もしかすると、Novelの方で加筆、修正するかもしれませぬ。



ベッドですやすやと眠るアスカの顔を見つめながら、少年は心配そうに眉を寄せていた。
傷口に塗った鈴草の効果で、傷口は塞がったものの熱は一向に下がらない。
外傷等の治癒草は今までの体験上よく知っていたが、熱の事はさっぱりわからない。
取り合えず、少年が熱を出した時にアスカがしてくれていたように、軽くしぼったタオルを額に置いていた。

「アスカ……」


小さくその名前を呼べば、以外にも返事が返ってくる。
「だ、大丈夫か?」
「うん。ありがと。少年いなかったら絶対ガムテープ貼ってたなぁ」
少年の言葉に、アスカがあはっと笑う。色々と間違っている。

「すまない。俺のせいで、色々と迷惑を」
「ふふっ。だから、子供はそんな事気にしなくていいんだってばー。まだ時間はあるでしょ、ちょっと付き合ってほしいんだけど?」

小さな声で謝る少年の頭を撫でながら、アスカは身を起こすとそう言った。
「な、だめだっ! まだ傷がっ!!」
「えー、固いこと言いっこナシよ。ちょ~っと気晴らしだって」
慌てて止めようとする少年を横目に、アスカが立ち上がって着替え始める。

「さ、行くよ!」


少年の手を取って外に出るアスカに、目を白黒させて問いかける少年。
「うん。だって少年、明日にはここ出て行かないといけないでしょ?」
アスカの言葉に、少年は一瞬言葉に詰まった。
「あ、いや。夜には出ようかと……」
「夜ぅ!!? 早すぎでしょ!」

「しかし、その方が色々と都合が良い」
「そ、そう? 止めはしないけどさ……」
少年の言葉に、アスカは肩を竦めて見せた。

「ところで、アスカは何を?」
「ん? おまじない☆」

少年の問いかけに、アスカはへへーと笑ってそう答える。
「おなじない?」
「そ、少年。そこ立ってて」
聞き返す少年に、アスカはそう言うと少し離れた場所でぱんっと両手を合わせた。
ざわり、と木々が揺れる。
『――我、貴を望む者。力を示そう、彼の者に加護を』
アスカが低い声でそう囁いた。
「あ、すか?」
『……否、闇では無く光だ。私とは違う……そう、風(シルフ)』
小さな声でそう声をかけるが、アスカは誰かと話しているかのように虚空を見つめて言葉を紡いでいる。
『小さき者に、ささやかな祝福を……』
ふうわりと、少年の体を何かが包み込んだ。
温かく、優しい。
「少年、こんな事しかできないけど。行ってらっしゃい」
アスカの声が聞こえて、抱きしめられた。


――小さな子が来たものだ。貴方を誘おう、行きたい場所を言うがいい

「俺の、行きたい場所?」
不思議な声がして、少年は問い返した。

――そうだ。アスカからの餞別だろう? アイツの魔力と、私の召喚
「魔力?」
――ああ、一々煩いなぁ。子供は尋ねる事が好きなのか? いいからさっさと行きたい場所を言え
少し苛々したような声で、誰かがそう言った。
「行きたい、場所……。取り合えず、食料のある、安全な場所に……」
考え考えそう言えば、微かに笑う気配がして
――承知した
小さな声と共に、体がぐらりと傾いた。
意識が遠のく中で確かにはっきりと感じた、アスカの魔力。
それがなぜか、自分の中にある。

――アイツの魔力

声の主が言った事は、こういう事だったのか。
アスカの魔力が自分の中にある。
自分はまだ未熟で、魔力も弱い。
だからアスカが魔力を与えてくれたのだろう。
立ち上がって、空を見上げる。
星が瞬いて、まるで囁くように……。

「ありがとう、アスカ。……行って、きます」

空に向かって呟いた。

いつか、いつか
この声が届きますように
この手が、届きますように





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Last updated  June 14, 2009 09:34:10 PM
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