アオイネイロ

September 27, 2009
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カテゴリ: 小説
「なっ……!?」
驚きで言葉も出ない嘩音を、千歳がその小さな体全体で突き飛ばした。
次の瞬間、今の今まで嘩音が立っていた場所にトロルが振り下ろした棍棒が突き刺さっている。

「……どうして、この森にトロルが?」
「きさ、ら……くる、よ」

呆然としている綺砂に千歳がそう言った時、トロルが再び棍棒を振り上げてそれを咆哮と共に振り下ろした。
それを何とか紙一重でかわして、綺砂は武器である羽衣を手にする。

「っ……千歳は嘩音を連れて逃げて」
「な、何言ってるの!? 私も戦うっ!!」


そして、綺砂がそうしたのと同じように、空中から鞭(ウィップ)を取り出した。
「嘩音。危険だから」
「そんなの、綺砂だって同じじゃないっ!」
諌める綺砂の言葉にそう返しながら、嘩音が鞭を大きく振るった。
鞭がしなり、トロルへと向かう。
けれどトロルが棍棒を横薙ぎに払い、嘩音が放った鞭を弾き返す。
それによって、嘩音が後ろへと倒れこんだ。

「な……」
「嘩音、危ないっ!」

呆然とする嘩音の前に、綺砂が立ちはだかる。
「へ……?」

羽衣を両手で持って、ピンと張った状態でトロルの棍棒を受け止める綺砂。
そのまま数秒間静止したかと思うと、綺砂がその羽衣をついと払うように後ろへと引いた。
力の均衡が崩れて、トロルが前へと倒れこむ。

「嘩音、逃げよう」
「だ、だめ……足、挫いて……」


既にトロルは立ち上がりかけている。
力の強いトロルに、非力な子供では、勝ち目は到底無い。
「きさ、ら。はや、て……よんだ、から」
千歳が綺砂の元にとてとてと歩いてきて、そう言う。
「父様を? でも、いくら父様とはいえ、此処に着くのは……」
かぶりを振った綺砂が、そう呟いた。
いくら疾風でも、すぐさまここに飛んで来る事はできない。
トロルが立ち上がって、既に棍棒を振り上げていた。
「千歳、嘩音を連れて逃げて」
綺砂のその言葉に、千歳は何も言わずその手にそっと自らの手を重ねた。

「だい、じょーぶ。ちとせが、まも……る」
「守るって……」

千歳の言葉に眉を寄せる綺砂。
その時、千歳の後ろに立ったトロルが、その棍棒を思い切り振り下ろしてきた。
「いけない、千歳っ!」
綺砂がそう叫んだ瞬間、千歳が瞳だけをトロルの方へ向けて、指をひょいとトロルへ向けると小さく呟いた。
「檻糸、牢獄」





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Last updated  September 27, 2009 07:57:01 PM
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父上見参予告とみた☆  
墨涙 さん
ちーちゃんは強いですよね。
・・・身長、伸びませんかね~まだ。
って、ちーちゃんいつ呼んだの?
(September 27, 2009 11:44:43 PM)

→墨涙様  
ちーちゃんは案外強いですねー☆

身長は、まあきっと
数センチは伸びたであろう(あんま変わってない;)

ちーちゃんは、嘩音と綺砂が頑張ってる時に
魔法で呼びました*
(September 28, 2009 05:42:04 AM)

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