アオイネイロ

January 4, 2010
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カテゴリ: 小説
練習
紅亜vs凜


「紅亜、これって何?」
天音が紅亜の服に紛れて置いてあった長い布を手にそう尋ねた。
「ああ。それは布槍(ふそう)っていう武器だケド?」
「武器? 保持武器(ホールドウェポン)じゃなくて?」
紅亜の言葉に、沙ゞがそう反応する。
「ん。アタシの武器が使い物にならなかった時に使ってたヤツだから。随分昔のだよ」
「小さい頃のかぁ」

「ねね、これどうやって使うの?」
籟琉が若干の好奇心を滲ませてそう尋ねる。

「んー……。実際見せた方が早いんだケド……」
「じゃあ、私が相手をしますよ」

紅亜の言葉に、凜が笑顔でそう言った。



「ほ、ほんとにいいの?」
「アタシは構わないケド?」
「私も大丈夫ですよ?」

籟琉のその問いに、二人が相対したまま頷く。
凜の言葉で外へと出る事になり、今まさに手合わせのようなものが始まろうとしていた。

籟琉の言葉に、凜が素早く黒針を手にし、紅亜は布槍を腰へと巻く。
「開始(ファイッ)!!」
籟琉のその言葉とほぼ同時に、紅亜の体が後ろへと吹き飛ばされ転がった。
「な、なな……?」
「凜の黒針が紅亜の額に当たったんだ。なる程、早いな」


「紅亜まさか、一発?」
「いや、当たる直前に防壁を張っていた。それに後ろに飛んで衝撃を緩和させたからダメージは無いはずだ」

葵の問いに、疾風がそう答える。
「……ですよね、紅亜?」
「いや、でも痛くなかったワケじゃないんだケドね」
凜の笑顔の問いかけに、紅亜がそう言いながら起き上がった。
「さて、来な」
「はい」
紅亜の言葉と共に、凜の手から黒針が飛んだ。
その数が半端ではなく、まるでマシンガンのような数と威力。
それを辛くも避け続ける紅亜。

「紅亜は接近戦なんだ」
「何とか間合いを詰めないと……!」

そう話している皆の前で、紅亜がトン……と後ろに下がるとその場で二、三歩ステップを踏むように足を動かして、
そのまま一瞬で凜の前まで移動した。
「接近戦に持ち込んだ! あれは瞬動?」
「いや、あれは八極拳の活歩だな。魔力の無い地の民でもなせる技だ」
籟琉の言葉に、疾風が静かにそう答える。
「残念ながら、私に苦手な距離はないんですよ」
そう言った凜が、片手で黒針を上へと弾くように飛ばした。
それが紅亜の顎に当たり、その体が上へと吹っ飛ばされる。
「紅亜、どうして手加減をしているんですか?」
少し真剣な顔をして、凜がそう言いながら倒れた紅亜に黒針を投げた。

「っ……」
「立て直す隙は与えないつもりか……紅亜」

葵の言葉通り、立ち上がる前に凜の黒針が紅亜の体を攻撃する。
全身に黒針が飛んでくれば、紅亜も防ぎようが無い。
倒れこんだ紅亜に、凜が黒針を振りかざした。
「これで終わりです」
そう言った凜が、黒針を思い切り投げつける。
「っ……終わらないよ」
ぐるりと回転して起き上がった紅亜が、しゃがんだ状態のまま腰にあった布槍を手にとった。
それを思い切り振って、紅亜が飛んできた黒針を打ち払う。
「おおっ」
思わず歓声をあげる皆の前で、紅亜がそのまま布を凜の首へと巻きつけた。
凜がはっとしたように手を上げて、首と布の間に片手を挟む。

「ああ、窒息は免れましたが……身動きがとれなくては」
「いや」

蜻羅の言葉に、疾風が短くそう返した時、
凜がもう片方の手で黒針を投げ、ピンと張った布を破った。
「あっ、外された!」
はっとしたようにそう叫ぶ沙ゞ。
しかし紅亜は気にすることも無いように、布を数回自身の近くで振り回すと、そのまま凜へと向けた。
布はそのまま凄い勢いで凜へと向かい、攻撃する。

「布の槍!! なる程、だから布槍(ふそう)か!」
「これは珍しいモノを」

皆が感心したように声を上げた。
「っ……」
凜がそれを避けながら、紅亜へと黒針を投げた。
それが紅亜の腕に当たり、嫌な音をたてる。
しかし紅亜はそのまま布を凜の手首へと巻いて思い切り引いた。
「くっ」
紅亜の方へと引っ張られた凜が、そのまま片方の手で黒針を握る。
凜が黒針を投げるのと、紅亜が凜の腹へと手の平を当てたのはほぼ同時だった。

「紅亜、拳じゃないの?」
「いや、あれはあれで外部を傷付けずに内部に衝撃を与える浸透勁という技だろうな」

時歌の問いに、疾風がそう答える。
ほんの数秒静止していた二人だったが、やがて凜がずるずるとその場に倒れこんだ。
「内部かぁ……。外の傷ならいいけど、内臓とかの攻撃はアレだもんね」
沙ゞがそれを見てぽつりとそう言う。
「しっかし紅亜、防壁以外の魔法使わないで勝っちゃったよ」
天音がそう感心したように紅亜と凜を見つめながらそう言った。

「それなら凜ちゃんも使ってないよねぇ? 武器だけだったし」
「凜の武器は元々魔力が練りこんであるタイプだろ? 威力のケタが全然違ぇよ」

苺夢の言葉に、葵がそう返す。
「まあ、二人共強かったねー」
「どうも。凜、立てる?」
「あ、はい……」
紅亜の言葉を受けて立ち上がった凜が、軽く微笑む。
「ありがとうございました」
「いや、こちらこそ付き合ってもらって悪かったね」
互いにそう言いあって、手を握る。

「いやーこういうの見てると私もバトりたくなるねー」
「お、やるか?」

籟琉のその言葉に、葵が勢いよくそう言い出す。
「やれやれ、御主人達は元気だコト」
疲れたように紅亜がそう言って蜻羅の元へと行く。
「手当てお願いしてもいい?」
「あ、はい。勿論で御座います」
そんな会話の後ろでは、葵達の試合(バトル)が繰り広げられている。

「今日も平和だねぇ」
天音のそんな言葉に、隣にいた千歳がこくりと頷いた。





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Last updated  January 4, 2010 05:48:52 PM
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