アオイネイロ

May 21, 2010
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カテゴリ: 小説
もそもそとフリーページに書き途中。。。
楽しいね。



バラの花を一本持った見目麗しい二人の少女が、車に揺られておりました……。


「随分と長い道程で御座いましたね」
ほぅ、と息をついた銀髪の少女、蜻羅がそう呟く。
「ああ、でももうすぐ着くみたいですよ?」
その隣にいた金髪の少女、凜が笑顔でそう言った時、
「あれ、この道って行けやすかぃ?」
運転をしていた少女達の父、るかが突然そう声をあげた。

助手席に座っていた少女達の母、苺夢も困ったような声をあげる。
「取り合えず進んでみましょーや」
そう言った父が、突然アクセルを踏み切った。
ガクン、と車が大きく揺れたかと思うと窓の外の景色が進み出す。

「わっちょ、ちょっとぉ~! と、と止まってよぅ~!!」
「御母様、近くの物に御掴まり下さい!」

悲鳴を上げる母に、蜻羅が近くの物に掴まりながらそう言った。
ぐんぐんとスピードを上げる車と、容赦なく揺れる車。
そんな中、凜の視界の端に奇妙なものが映った。
「蜻羅、あれ……」
凜がそのカエルのような形をした岩を指差してそう言いかけた瞬間、



るかの声と共に、車が突然物凄い勢いで止まった。
反動で吹っ飛ばされそうになりながらも何とか踏みとどまった二人が、目をぱちぱちと瞬かせる。
「な、何? ここ……」
母が怖々と車から降りながら、その巨大で真っ赤なトンネルを見上げた。
「行ってみやしょーか」

父の言葉に半泣きになっている母と、その隣で黙ってトンネルを見上げる凜と蜻羅。
「では、お母さまはここで待っていて下さいね」
既に歩き始めている父を追うように、凜が母にそう言い残して蜻羅と共に歩き出す。
「ちょっとぉ~。みんなが行くならボクもいくぅ~!!」
どんどんと先に進んで行ってしまう三人を追って、母(苺夢)もトンネルの中へと消えていった……。



「わぁ、キレー」
トンネルを抜けると、そこには一面青い草原が広がっていた。
歓声を上げる苺夢と、ただっ広い草原を見渡す二人。
「この先は、何があるんですかね?」
笑顔でそう言った凜に、るかが更に足を進めていく。
「はっ! こ、これは!!」
歩いている途中で、るかがピタリと足を止めて叫んだ。
「何か御座いましたか?」
「た、食べ物の匂いじゃあぁぁぁぁ!!」
蜻羅の問いかけにそう叫んだるかが、たたっと駆け出す。
「えぇっ! 食べ物!?」
慌てたように一緒に駆け出す苺夢。
残された二人は、きょとんとして顔を見合わせた後、るかと苺夢を追った。
そして二人が追いついた頃には、既に食べ始めている苺夢とるか。
「あ、あの……御店の方は……?」
どこにも見えない店員の姿に、蜻羅がおずおずとそう尋ねる。
「いなかったのぉ~」
暢気にそう返してくる苺夢に、凜と蜻羅が固まる。

「そ、それマズくないですか? お金とか」
「大丈夫! カードもサイフもありやすぜぃ」

慌てる凜に、るかが自信満々にそう言う。
「ですが、何処か偉い御方に出す御食事とか、1つで十万単位の食べ物とか……」
困ったようにそう説明する蜻羅だが、るか達は聞いちゃいない。
「蜻羅、少し辺りの様子を見てみましょう」
そう囁いてきた凜に頷いて、二人は手を取るとその場を離れた。
少し進むと、『湯』と書かれた巨大な建物が見えた。
「橋の下に線路がありますよ」
赤い欄干に手を置いてそう言う凜。
「電車の音が致しますね。生きているのでしょうか……」
そう呟く蜻羅の目の前で、電車がガタガタと走ってきたかと思うと橋の下を通り過ぎた。
それをじっと見送ってふと顔を上げると……、
長い髪を一本に結い上げた表情の乏しい男性と、その肩にちょこんと乗っている黒髪の少女がいた。
「貴方は……?」
唖然としている蜻羅と凜を見つめて、男性がはっとしたように目を見開いた。
「此処で何をしている!」
「え、あの」
少し語調を強めて近づいてくる男性(+千歳)に、うろたえる二人。
「直に夜になる! その前に早く戻れ!」
そう言い募る男性の後ろで、どんどんと日が沈んでゆく。
そうして、湯屋の入り口の明りがポウ…と灯った。
「っ、もう灯りが……千歳!」
男性に千歳と呼ばれた少女は、その言葉を受けて男性の肩からぴょんっと飛び降りる。
「千歳が時間を稼ぐ、その間に早く戻れ!」
そう言われて駆け出す二人の耳に、リィィン……という鈴の音が響いた。



男性(+千歳)に言われるがまま走ってきた二人が、一つの店の前で立ち止まった。
既に日は落ち、店には明りが灯り、そして影のような人形のような奇怪なものがうようよとあちこちに蠢いている。
そして二人が立っている店。父と母がいたはずの席には、2匹のミニブタが黙々と食事を平らげていた。
「御父様と、御母様……?」
茫然とそれを見て呟く蜻羅。
店の者であろう影にフライ返しで叩かれながらもめげずに食べている。
「この食欲っぷりはまさしくお父さまとお母さま! 蜻羅、この場は逃げましょう!」
凜が無駄にキリッとした表情でそう言った。
「え、しかし……」
「蜻羅!」
まだ戸惑っている蜻羅の肩をがしっと掴み、凜が諭すように名を呼ぶ。
「飛べない豚はただの豚です! つまり……」
凜の言葉で蜻羅がはっとしたように二匹のミニブタを見ると、言った。
「……唯の豚!」
それにこっくりと頷いた凜が、蜻羅の手を取って走り出す。
迷いがなくなったのか、蜻羅も共に走り出した。
そうして来た道を戻ってゆくと、階段を下りようとした瞬間、ジャバっという音と共に足に冷たい感触が走る。
「水……っ!?」
驚いたように慌てて水から上がる。
トンネルまで続いていた草原は、一面湖のように水が広がっていた。
「……如何致しましょうか、凜」
「そうですねぇ。むしろ全部夢でキレイさっぱり消えてくれるといいんですけどね」
蜻羅の言葉に、凜が困ったように微笑んでそう言った。
その時だった
「凜、何か……透けておりませんか?」
蜻羅が口元に手を当てて驚いたようにそう言う。
「そう言う蜻羅も……」
互いが互いを見つめて目を丸くする。と、その時、ゴォォ…ンという音と共に、すぐ近くに船が止まった。
「………」
唖然としている二人が見つめる中、船からは体が無かったり頭が無かったりする人(?)達が降りてくる。
「移動しましょう」
凜の言葉に頷いて、蜻羅と凜は家の影の方へと隠れた。
「あ、あの……」
きょろきょろと辺りを見渡す凜に、不意に蜻羅の声がかかった。
「何ですか?」
そう言って振り返った凜が見たのは、蜻羅と手を繋ごうと差し出していた自分の手が、蜻羅の腹の辺りを突き抜けているという光景。
「透けて、る?」
凜がそっとその手を動かし、蜻羅の手を掴もうとする。
しかしそれは叶わず、すうっと突き抜けてゆくばかり
「すごいですねぇ」
「本当に」
感心したようにそう言った二人が、互いに互いの手を合わせて遊ぶ。
「(*^ー^)メ(^o^*)タァッチ♪」
と、そんな二人の前に先程の男性(+千歳)が現れた。
「あ、先程の」
「その説はありがとうございます」
二人が半分以上透けたまま笑顔でそう礼を述べる。
「こ、れ……」
「これは?」
千歳が二人に渡したものは、丸薬のようなそれ。
「この世界の食糧だ。これを口にしないと貴様等は直に消えてなくなる。よく噛んで飲み込め」
疾風が淡々とそう説明すると、
ガリッ
という、音がした。
『よく噛んで』の言葉をどうとったのか、凜の口からガリガリガリ……と、よく噛んでいる音が聞こえてくる。
「千歳、何を持ってきた?」
「……に、く」
疾風の問いに、肩の上の千歳がそう答えた。
「そうか、随分と固い肉だな」
「ちと、せ……かみ、きれない……」
疾風の言葉に、千歳がこっくりと頷いてそう呟く。
やがて段々と二人の姿がはっきりしてきた時
「っ、まずいな」
少し焦ったように、疾風が凜と蜻羅を覆い隠すように壁に押し付けた。
「な……?」
「あの、何か?」
慌てる蜻羅と、きょとんとする凜。
「オマエ等を探している。紅亜の、手先だ」
低い声でそう言った疾風が、空に飛ぶ一羽の紅い鳥を睨んだ。
「………派手ですね」
ぽつり、凜がそう呟いた。





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Last updated  May 21, 2010 10:33:37 PM
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