アオイネイロ

November 26, 2013
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カテゴリ: 小説
たまにはいいだろう、と心の中で呟いて、私は食器棚に目を向けた。

たまには、たまにはなんて言いながら、結局私は私を甘やかす。
でもまあ、いいじゃないか。
誰だって自分は大切だし、自分が大好きだ。
誰かが私を甘やかしてくれる訳でもないのなら、自分が自分を甘やかしたっていいじゃないか。
どうせ、
なんて言葉を使って、私は心の奥にあるもやもやを片付ける。

先刻言われた言葉が頭をよぎる「お前は自分のことしか考えてない」と。
どうしてそんなことが分かるのだろう? 私の頭を覗きでもしたのだろうか? 私が普段どんな風に考えて生活しているのか知りもしないくせに、自分のことしか考えてないヤツ、だなんて勝手なレッテルを張り付けられても困る。

誰かを思っての行動だって、「当たり前」と片されてしまったり、逆にそれが迷惑になる場合もある。
やったって、やらなくたって怒られるなら、やらない方がいいにきまってる。
その方が、自分も納得できる。
だから私が、他人にそんな風に認識されてしまっても、仕方のないことなのだ。

実際私は、どうせ何もしていないのだろうから。

それでも私は私を嫌いにはなれないので、今日もまたこうしてありきたりな日常を歩む。
歩み続けるしかない。

だから、たまにはいいだろう、と考えてお気に入りの真っ白なティーカップに手を伸ばすのもいつものこと。
その陶器の冷たさにそっと唇を寄せて、お湯が沸くまでの時間を楽しんで
先日買ったチョコレートの箱を開けて、

私はそっと微睡んだ。

この小さな幸せが壊されないように願いながら

崩れたガラスの音に耳を塞いで
つつけば崩れてしまいそうなせかいから目を逸らして。





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Last updated  November 26, 2013 05:40:37 PM
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