晴走雨読

晴走雨読

June 24, 2006
XML
カテゴリ: 食べ物




人は薄れゆく意識のなかで

一体何を思うのだろう。


楽しい思い出なのか・・・

誰にも打ち明けられなかった秘密だろうか・・・

それとも

すぐそこにある死の恐怖か・・・


今にも起き出しそうな表情のその口元からは

結局その答えは発せられなかった。



76年間、一秒たりとも止まる事のなかった小さな心の臓は、







静かな、滞ることのない葬儀だった。






帰りに少し無理をして長崎の”とら寿司”へ行った。


ネタケースの中には大村湾や茂木で獲れる地のものが並べられていた。

こぶ〆や炙り、煮たあわびなどどれも静かなおいしさだった。


そして一通り握っていただいたあとで目の前にそっと置かれたのが

一見、何の変哲もないきゅうりのぬか漬けだった・・・


しかし、それは奇跡の一品だった。


やさしい甘み、ほんの微かな塩味、青々しいきゅうりと円熟した糠の香り。

絶妙だった。

聞くと61年物の糠床だという。

その糠床もなめさせていただいた。















61年の糠床と、採れたばかりのきゅうり。

わずか数時間の交わりで

若々しいきゅうりは老獪な糠床の記憶を吸い込み、悟りを開く。



45億年の歴史を持つ地球と、数十年の命を与えられた僕。



僕はその寿命を迎える時










お愛想を済ませ

少しはにかんだ様な奥さんの笑顔と

混み始めた店内を名残惜しげに外へ出ると、

大粒の雨が通りを濡らし始めているところだった。








nuka











たくさんのお悔みと励ましのお言葉、本当にありがとうございました。         羊





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  July 9, 2006 01:20:04 AM
コメント(88) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: