晴走雨読

晴走雨読

August 17, 2006
XML
カテゴリ: つれづれ・・・







その店を見つけたの時はすでに7時をだいぶ回っていたと思う。


藤沢駅の南口側を散策し始めてから30分は経っていたのではないかな。



どこの店も僕の心を騒がせるほどの魅力を放っていなかった。

日中の江ノ島での高い波が気がつかないうちに僕の心をハイにしていたのかもしれない。



その店「やきとり 大串」は汚かった。

汚いと言うのはお店には失礼なので言い換えると、みすぼらしかった。

でも僕は一目ぼれしていた。

”何かある”という直感めいたものが僕の心を掴んでいた。

薄暗いカウンターだけの店内には6人ぐらい居ただろうか。

もう5人も入れば満員御礼だろう。

カウンターの中には大将とその親父にも見える二人だけ。

無愛想で白髪。第一印象だ。

僕と連れはその中央に座った。




”一番高いのはビールだから安心して頼んで平気だよ”

赤い顔でニコニコしながら教えてくれた。

言われるまでもなく値段の検討は入る前からおおよそ付いていた。



焼き鳥を数種類とおつまみを適当に頼み丸顔のおじさんといろいろ話しをする。

以前は新橋に住んでいたらしい。



反対の隣の席には出勤前のスナックのママが2人。(あくまで僕の推測)

焼酎が入っていそうなグラスとかわいい柄のマグカップ。

かなりの常連さんだろう。

割りと静かに話しているその2人を気にしていると店内が一段明るくなった。

(どうもまだ正式な開店前に僕らは席についていたようだ)




僕らの焼き鳥が来る頃には店内は当たり前のように満席になった。

僕は僕らが座った2席がいつもは誰かの席なのだろうとふと思った。





お酒は感情の振幅を増幅させてくれる薬。

喜怒哀楽、その時の気持ちに素直に反応してくれる。

でも恐らく基本的には”楽”を増幅させたいと思って飲むのだろう。

そして誰かと話していたいのだろう。

どんな話でもいい。どんなつまみでも、何の酒でもいい。

その相手の顔が赤いマークの笑顔になれば、何も残らなくったって幸せになれる。






さつま白波ホッピー割りを飲みながら6Pチーズを剥いて食べているころ、

席が遠くなっていた丸顔のおじさんが寄ってきた。

”先に帰るけど、明日海に行くなら俺の名前だしてな”

ある海の家のオヤジさんと友達らしい。

僕は丁寧にお礼を言いながらその丸顔のおじさんの名前が明日僕の頭の中に在る確率は

かなり低いだろうと思っていた。



心地よい店内の喧騒はまだまだ収まりそうに無かったが僕らの会計の時が来たようだ。

途中からカウンターの中に現れていた大将の息子さん風の人にお勘定をお願いする。

思っていたより若干安かったお会計を済ますと大将が話しかけてきた。

”お兄さん、写真撮らせてよ~”

ニコニコしながらインスタントカメラをすでに構えていた。

”東京の人が来るのは珍しいからさぁ~”

と、パチリ!

そうくればこっちも負けてられない。

”僕も撮らせてくださいよ~”

とパチリ。酔っててブレたのでもう一枚、パチリ!

”ちょっと待って、これでも撮るから”

と大将今度はポラロイドカメラでパチリ。

”今のはあげるよ。もう一枚店に飾るやつ撮るから~”

いわゆる店にお客さんの写真がべたべたある店ではない。

でもうれしそうにパチリ。


僕はパソコンなんかしないという大将に無理やりブログ用の名刺を渡して店を出た。









ポケットにしまったさっきの写真とデジカメ。

これだけは酔って無くさないようにしよう・・・と

また宵の口の藤沢の街を歩き始めた。








okusi

人気blogランキングへ

















お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  September 4, 2006 05:13:44 PM
コメント(48) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: