
尾長鯛は、鯛とはいっても赤ムツなどに近いフエダイ科の仲間、赤くてきれいな色のやや深海性の魚で、味は淡白ながら旨味はしっかりある白身魚。このようにポワレや塩焼き蒸しものや椀だねはもちろん、刺身でも美味しいし、混布で締めれば、さらにうまみが増して美味くなる。これが入ってくると、中落ちや尻尾のほうは、大抵私の夜のつまみになるという訳。
皮目をしっかりカリッと焼き上げ、身のほうは余熱を計算して、ギリギリやっと火が通ったくらいにしっとりと仕上げる。ソースは、アンチョビソースにレモン汁を加えて、バターで乳化させたもの。

小鍋にアンチョビソースとレモン汁とバターの冷たいキューブを入れてプラックの一番強火にかける。

あっという間にぶくぶくと沸いてきます。この沸騰する勢いが、泡立器の代わりになってソースが乳化する。

出来上がりはこんな感じ。しゃぶしゃぶ用のゴマだれに近いくらいの濃度があればうまくいったという事。
実はこのバターの乳化ソースの作り方は、とても非常識なやり方でフランス料理のソースがきちんと作れるプロの料理人に話すと、いつもびっくりされる。作り方があまりに非常識という事と、たった1人前ずつしか作らないという異常さ!しかも、作っておいた乳化ソースを温め直したり、煮詰めたりと、、、おそらくどんな料理の本にも書いてないような、目茶苦茶?なやり方だからだ。
代表的な乳化ソースである、ブール・ブラン(白バターソース)の非常にまっとうな作り方が書いてあります。
以前、うちに研修に来たクリークの黒川シェフの目の前で作って見せたら、彼は眼が点になってました。(笑)「今何したんスか?」って言ってましたね。ソースが沸いてきたところで、軽く鍋を回すのがコツなんですが、とにかく火が強くてソースの量がせいぜい2~3人前くらいの少ない量じゃないとだめなんです。普通のやり方の真逆ですね。(笑)
話を整理しますと、普通のバターの乳化ソースは、弱火もしくは火から下ろした状態で、余熱を利用しながら、ゆっくりと注意深く泡立器を使ってバターが分離しないよう何度にも分けてバターを加えながら作る物です。沸騰は厳禁!しかもある程度の分量がないと作りにくいです。最低5人前以上、10人前くらいを作るのが一番やりやすい。出来たソースは、ぬるめの湯煎にかけて時々掻きたてながら、短時間なら置いておけるが、基本的に作り置きはできないし、冷めたものを温め直すことは、通常は出来ない。
私のやるバターの乳化ソースは、プラックど真ん中の強火でつくり、わざと沸騰させながらしかも材料は一気に全部入れてしまい、泡立器などろくに使わず、作る量は少ないほどやりやすい。3~4人前くらいが限度という、すべて正反対なわけです。しかも、温め直しはするは、作るときにガンガン煮詰めるはで、もう目茶苦茶なんですよ(大笑い)
昔テレビで見た限りでは、三国シェフはやってますね。このやり方。そのほかフランス人シェフでも結構やる人多いと思います。ただしレシピに堂々と書いてる人はいないかな?私の知る限り、、、。
で、一体どうしてこんなことができるのかというと、まずバター自体は冷たい塊の状態であれば、乳脂肪と水分と少しのたんぱく質などが乳化した状態で固まっているわけです。それをサイコロほどのキューブ状に切っておいて、激しく沸騰した水分と合わせると熱で融けるそばから、水蒸気が激しく水分とバターを撹拌してくれるのでバターが分離する間もないまま乳化が解けない状態で液化していくという訳。その時に激しく煮詰めてゆくと、どんどんソースの濃度が濃くなってゆく。もちろん煮詰めすぎれば分離しちゃいますけどね。
それで、温め直しができるわけは、手作りのマヨネーズと市販のマヨネーズの違いとでも言えましょうか、、。乳化が、しっかりできていると少々手荒に扱っても大丈夫なんです。もちろん、かなり熟練が必要ですけどね。
それで、このやり方の最大のメリットは、一人前ずつ作るので、ロスがないこと。20~30秒もあれば出来るので、盛り付け直前に仕上げられるので、熱々が出せるということか。バターは最近値上がりしているので、無駄を出さないというのはとても大切なことです。
このソースはプラックがないと厳しいですね。あと8センチとか10センチくらいの口径の小鍋が必要ですね。慣れないうちは、生クリームを少し垂らしておくとやりやすいです。これは、クラシックなブールブランの時も同じです。初心者は、はじめにバターを入れた瞬間に分離させてしまって、すべてパーにしてしまう事故をよく起こすからです。まあ、私の場合、どんなに失敗した場合でも修復可能な対処法をいくつも知っていますから、大丈夫なんですけどね。完全に分離してしまっても、元に戻せますから、、、。
フランス料理は、ソースが命なんてよく言いますけど、、、このバター乳化系のソースは一番難易度が高いんです。物理的に科学的に何が起こっているかをちゃんと把握しつつ理にかなった作業をしないとすぐに失敗します。私は日常的に長年やってますから、なんという事もないんですが、実はそう簡単にできることではないんです。(高笑)?
まあ、普通は基本の乳化ソースの作り方をみっちり覚えてからの大裏必殺技ですね。良い子はマネしないでね!(爆)
PR
Keyword Search
Calendar
Comments