
仔牛のもも肉の一部、シンフランクという部位です。内ももの付け根あたりで1枚150~200gくらいのが一頭で2枚しか採れない希少部位です。昔は、仔牛のもも肉と言ったら1本買って自分でばらすのが常識でしたが、近頃はそういうことができるコックさんがいなくなってしまい、やたらと細かい部位に分けて売るケースが多くなりましたね。便利と言えば便利なんですが、大きな肉の塊を筋ごとにきれいにばらして、掃除して出た筋で出汁をとってソースにするというようなクラシックな仕事ができなくなりました。今では仔牛のももを1本買おうと思ったら特注品になってしまいます。
仔牛と言うと皆さん柔らかいのだろうというイメージがあるでしょうが、成牛と比べると繊維が緻密な分焼き方を失敗すると結構固くなってしまいます。脂もないですからパサパサで味気ない状態になりますね。だから仔牛を美味しく焼くのは意外に難しいわけなんです。私も若いころは仔牛は苦手でした。
イタリア料理では肉たたきでたたいて薄く延ばして、パン粉の衣をつけて焼いたり生ハム貼り付けて焼くサルティンボッカ・ロマーナなんかが有名ですが、たたくことによって肉を軟らかくしているわけですが、フランス料理では肉をたたくことはあまりせずに上手に焼き上げることで、柔らかさを表現します。
とても淡白な肉なので、普通は濃厚なソースを添えることが多いですね。バターやクリーム利かせて重厚なソースにします。そんなよくある仔牛料理では面白くないので、私独自の味付けを考えてみました。

盛り付けたところです。仔牛肉は弱火でゆっくり芯まで温めてから、強火で表面に一気に焼き色をつけてから温かいところで休ませておきます。皿にトマトヴィネガーを少し流してその上にカットした肉を盛りつけゲランドの海塩フルール・ド・セル散らし、パルミジャーノチーズの粉を振り、黒胡椒を挽き、サルディニア島産の極上オリーヴオイルを回しかける。


これがトマトヴィネガー。イタリア産でトマト果汁を発酵させた黒酢です。色はバルサミコくらいですがそれほど濃度はありません。発酵食品独特の味噌や醤油に通じる旨味風味がありまして、そうですね、、、塩分をとった醤油にトマトの酸味が加わったような味です。
トマトは野菜の中では最もアミノ酸が多い部類です。それが発酵によってさらに強化されてかなり旨味が増してます。パルミジャーノチーズもチーズの中では最もアミノ酸が多いタイプです。仔牛肉をダブルのアミノ酸で引き立て、美味しいオリーヴオイルで脂肪分を補ってやります。これで夏向けのさっぱりしているけど旨味たっぷりの仔牛料理ができました。美味いですよ!スペシャルメインでしばらくやります。
仔牛の煮込みはだいぶ売れてもう少なくなってきました。食べたい方はお早めに!
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