幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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Jul 31, 2014
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カテゴリ: シェフの雑記帳

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 自家製のセミドライトマトです。

 自慢話じゃないですよ。

 20年近く前、私がみつわ台のシマヤのレストランにいたころの話。シマヤに居たWというソムリエがある日私にラベルの付いてないワインを1本持ってきて、「これを持って帰って明日どんなワインだったか聴かせてください。」と言う。まあ、明らかに試されるんだなと思いましたが、、、うちへ帰ってじっくりテイスティングしました。翌日Wのところへ行って「昨日のワイン、西南フランスでピレネーに近いあたり、南東または南向きの標高が高い畑で作ったピノノワールもちろんAOCではなくヴァン・ド・ペイかその下のクラスだと思う。」と言ったら、Wは唖然として「それは完璧!よくそこまでわかりましたね!」と驚かれました。かなり難しいテイスティングでしたけどね、、。

 それから、この店を始めてすぐのころ12~13年前の話。改装前の千葉そごうのワイン売り場には熊崎さんという看板ソムリエがいて私も親しくさせてもらってました。12月の押し迫ったころ所用があってワイン売り場に行くと熊崎さんが「中村さん、1杯飲んでいく?」と言うので、「じゃあ1杯だけ。」ということで、彼はクロスでボトルを包んで見えないようにして赤ワインをついでくれました。まず、香りをかいで「これすごく良いカベルネですね。」口に含んでじっくり味わい飲み込んで、「ものすごく上品でバランスが良いし、樽の焦がし具合が絶妙、、。まだ若いけど熟成したら素晴らしいでしょうねぇ、、。うーーん。まるでシャトー・マルゴーみたいな、、。」というと、熊崎さんが「そう、正解!」と言ってボトルを出すと本当にマルゴーでした。このときは当たってかえってびっくりしたくらいでしたが、、。

 やはり同じころ、サンク・オ・ピエには高山というソムリエがおりました。店の奥の洗い場のカウンターを挟んで彼が、「シェフ、お疲れ様の一杯いきますか?」と言ってワインを開けました。キッチンでは換気扇で吸っているのであけたワインの香りがボトルからスーと漂ってきて、「なんだ、86年のリオハみたいな香りがしたなぁ。」と言ったら、「さすがシェフ」と彼がボトルを見せると本当に86年のリオハのグランリゼルヴァでした。この時も瞬間的な直感にびっくりしました。

 こういうのはわかるときはすぐにわかるもんです。考え込むような時はたいていはずします。もちろんこの世の全てのワインを知ることは絶対にできませんから、何もかもわかるはずはないですが、、、。

 ワインの試飲会に行っても、香りをかぐだけで口には入れないことが結構あります。香りが悪いのに飲んだら良いワインというのはまず無いからです。香りが良いのに飲んでみると意外にいけてないワインはたまにありますが、、。大きな試飲会になると100銘柄200銘柄とか出品されますから、すべて口に入れるとたとえ吐き出すにしても、結構酔っぱらいますから、できるだけだめそうなワインは口に入れないようにします。安いワインだとたまに機械収穫つまり掃除機式に葡萄を吸いこんでしまうやり方なので葉っぱや枝が混じった香りがはっきりわかるときもあります。

 ケーキやアイスなどを食べても植物性脂肪などが入っているとすぐに嫌になるし、化学調味料系が苦手なのでたいていの中華料理屋やラーメン屋や焼き肉屋もいけません。ランチなどのスープが湯煎にかけて保温したやつだと臭いが気になって食べられません。保温ジャーにに入っているご飯も苦手です。自宅のある習志野市は比較的水が美味しい地域ですが、お店がある千葉市は水道直ではまずくて飲めませんし、料理にも使えません。アルカリイオン浄水器を使っています。

 それから、コーヒーも、、、。さかもとこーひーを飲むようになってからほぼ他のコーヒーは生理的に受け付けません。コンビニやファストフードのコーヒーの香りはもはや良いにおいとは思えなくなりました。

 だから、外食率低いですね。私は昔から家で料理するのは苦じゃありませんから、酒のつまみでも食事でも毎日のように作っています。料理人は家では一切料理しない人が多いようですが、私は違いますね。自分で作った中華料理やラーメンは食べます。化学調味料使わないので食べられます。

 先日、稲毛のピケピケバーに行きましたが、マスターの堤氏のつまみとバーテンダーの藤田氏のカクテルは安心して味わえました。実に美味しかった!堤氏は昔一緒に仕事をしていた仲間です。それから、しばらく伺っていませんがさつきが丘団地のうぶすなさんのお蕎麦と天ぷらも実に美味しいです。本当のプロの仕事ですよ。ただ、うぶすなさんの蕎麦を知ると他のは食えなくなります。困ったもんです。(笑)

 人間30年も毎日ワインや料理に真剣に立ち向かい、またその組み合わせやマリアージュのことばかり考えて暮らしてきて、毎日ほぼ自分の食事を自分で作る生活をしているとこうなります。世の中に美味いものが少なくなり、違和感を感じずに飲み食いできる場所が少なくなります。

 おそらく、脳の問題なんでしょうね、、、。

 よく、鼻が良いとか舌が良いなんて言いますが、鼻や舌の機能自体にはそんなに大きな個人差はないと思います。味覚や嗅覚を集中して使う仕事をしているとそれをつかさどる脳の部分が鍛えられ感度が良くなるのだと思います。それから、味や香りを表現して言語化する訓練も大事です。味や香りは言語化しないと要するに左脳的表現にしないととても記憶しづらいものです。ソムリエなどは味わいと香りの言語化と記憶が仕事そのものと言っていいでしょうね。田崎真也さんもそんなことを言ってました。

 そういうわけで、わかりすぎるのもちょっと辛いものがあるんです。できるならぼんやりと何も考えずにファストフードとか食えたらいいんですけど、、。まあ、無理でしょうね、、、。

 さかもとこーひーの坂本さんも同じようなことを仰っていたような、、、。坂本さんも相当な味覚嗅覚の持ち主ですからね、坂本さんならわかってくれるんじゃないかと思いますこの気持、、、。

 それでまあ、何を食っても飽き足らないので常に美味い物を探しているんですね。6月7月と大好評だったシャロレー牛やアルゴア豚やブレス産バターまた、最近入れたサンダニエーレの生ハムなどもそういう経緯があって探し出してメニューにのるんです。

 それで思うのは、安くて美味しいというのはないですね!ブランド力で意味もなく高いのはだめですが、コストをかけたゆえの高級食材の美味しさには安物では絶対にかないません。べつに高級志向というわけではないのですが、さんざん色々やってみて結局そういうことなんだなと実感しています。






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Last updated  Jul 31, 2014 09:40:02 PM


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madame-H@ キッシュに入れてます。 相かわらず、手間のかかるスープを楽しん…
ゆり777 @ こんにちは。 美味しそうですね~。 チキンがジュージ…
おかめ@ Re:食べる姿(10/31) なるほど!私も無粋な行為をしていた一人…
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