とし坊の青春

とし坊の青春

2005年01月02日
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カテゴリ: 旅行
 午前9時、チェックアウトを終えて、ホテルを出た。 昨夜の喧騒は一体どこに消えてしまったのか、赤や青のネオン輝く夜の「南京路歩行街」とは打って変わって、ひっそりと静まり返っている。 静寂に包まれた「南京路歩行街」を一人歩くのも、何か独り占めしているようで、気持ちが良い。 「外灘」まで約2km。 ゆっくり歩けば、半時間だ
 「外灘」の遊歩道にやって来た。 遊歩道と言っても展望台のようなもの。 対岸には「東方明珠塔」や「金茂大廈」が見える。 振り返れば、「中山路」に沿って、クラシック調の石造建築物がずらりと建ち並ぶ。 「外灘」も昨夜とはまた違った趣きがある。  
 素晴らしい。 此処が上海なんだ。 湧き上がって来る感動を何度も何度も噛み締めて、そして、「浦東新区」の美しく躍動感溢れる光景に酔い痴れて、暫くの間、立ち尽くしていた。
 すると、どうしたんだろう、一人の小父さんがニコニコと微笑みながら、あたいの所に近づいて来たんだ。 否、その後ろから、少し遅れて気の弱そうな小父さんも付いて来た。 年恰好からすれば、二人とも50代後半であろうか。 そして、何十年来の友人と再会でもするかのように、異様に親しげに、妙に馴れ馴れしく、あたいに話し掛けて来たんだ。 それも、日本語だったものだから、あたいは日本人です、なんて不覚にも自らあっさりと認めてしまったのだ。
 しかし、どうしてあたいが日本人であることが判ったのだろう。 自分で日本人であることを認めておきながら、寝惚けたことを言うなよって、叱られてしまいそうである。
 彼らにしてみれば、あたいが日本人であると見抜くことなんて朝飯前だったのだろう。 確かに、あたいは肩からショルダーバック、首からはデジカメをぶら提げているから、ひと目見りゃ判るって言うものなのかも知れない。 
 とは言え、日本人です、なんて軽薄にも認めてしまったばっかりに、私は日本語を勉強しています、少し日本語を話させて下さい、などと言う、如何にも殊勝そうで、如何にも健気そうってこと装ったお願いであったがために、断れなくなってしまった。
 まぁ、ここが彼らの狙い目なのだろう。 日本語を勉強させて下さい、なんて言われると、なまじっか勉強は神様であるかのように耳にたこができる程聞かされて来た日本人にとっては、嫌だなんて言えないんだよね。 彼らにすれば、日本人なんて、皆、御上りさんばっかりだから、ちょろいちょろいって、内心、笑い転げていたのかも知れない。 まんまと嵌められてしまった。 
 あたいは彼の身の上話なんて聞きたいなんて言った覚えはない。 なのに、一方的に話し始めてしまった。 最初、中国語か何かで話し掛けてもらえれば、それはそれ、いつもの通り、分からないって身振り手振りで伝えて、即刻、お仕舞いにすることが出来たんだが、意表をつく日本語で話し掛けられたものだから、冷静沈着をモットーとするあたいも、すっかり動転してしまって、しくじってしまった。

 多分、この小父さん達、「上海」で、今もなお、頑張っていると思う。 と言うことは、「上海」に行こうと思っている人は、運が良ければ、「外灘」でこの小父さん達に会えるかも知れないってことだ。 だから、心密かに楽しみにして「上海」に行けるって訳だ。 あなたも「上海」の「外灘」に行けば、素晴らしい出逢いが待っているってことなのだ。 ( 続 )   





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最終更新日  2005年01月03日 09時27分04秒
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肝心の内容は?  
もしかして、
おじさんたちの身の上話の内容は、
自分で上海に聞きに行かないと聞けないの?
そういうこと? (2005年01月03日 21時35分00秒)

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