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2010年06月19日
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テーマ: 銀魂(1194)
※「銀魂」二次創作です。




 【夜半の月】<二>


次の店はかなりの暗がり。店の通路に貼られた竹垣を奥へと当たり前のようにずんずん進み、いつものボックス席へ座ろうとすると奴がいた。
黒い髪、黒い着流し。腹ん中まで真っ黒そうな、土方だ。
真選組副長と随分ご立派な肩書きだが、奴らのやってることなんてヤクザと大して変わりがねえ。対テロなんだか知らねえが、あんな違法行為の山を税金で堂々としてるような奴らが警察組織を名乗るんだっていうんだから、万事屋が『オールマイティなスペシャリストの宇宙規模のグループ企業です』とか言ったって許されるってもんだ。

「おい、どけ。そこは俺の指定席だ」
この店のオーナーは、銀時の大家であり階下のスナックの主人でもあるお登勢と旧知の仲で、銀時にも仕事を依頼してきたことがある。その際に、この店の隅の角のボックス席は空いていれば銀時専用に使ってくれていいと言ってくれたのだ。普段は誰かが座っていればゴリ押しすることがない銀時だが、相手が天敵のような土方とあっては別だった。

「何だ?」眉間に皺を寄せて振り向いた土方は、「ちっ、万事屋か。指定席ってなんだ、チケットを買ったとでも言うのかよ」と銀時を見上げて舌打ちをし、手を上げて店の男を呼ぶとビールを注文した。
「なんだしけてんな、ビールかよ。おい、にーちゃん。俺には上物の日本酒だ。それからここは俺の指定席だから、このマヨネーズ男をどかしてくれ」奴の持ってる赤いキャップを指差して笑ってやる。
「おい、俺はビールを止めて…兄嫁の冷酒。それから、そこのもっさりした天パ、どっか目につかねえとこにやってくれ」銀時の言葉に、すぐに土方は反応した。

野郎、あっさりとこの店で一番高い日本酒頼みやがった。
「てめー、俺に喧嘩売ってるのか」
くるりと銀時に背を向けて土方は座りなおすと、酒が残っていたグラスを一息で空けた。
「おい、どけって言ってるのがわかんねーのかよ。そこは俺の」ぐぐっと肩を掴んで、無理にでも土方をそこからどかそうと試みる。
「うるせぇな。俺が先に座ったんだから、この席の占有権は俺にある」かなりの力を入れても、土方はびくともしねえ。
「あん?何、小難しいこと言ってんだ。俺を煙にまこうったってそうはいかねえ」
「占有権も知らんのか。それでよく仕事が出来るな」
銀時の方をちらりとも見ないで、土方は心底呆れたようにため息をついた。
「てめっ、そんなこと知らなくてもな、いいんだよ。仕事なんてな、なんとかなるんだよ」
「まあ、お前のやってる万事屋ならいいんだろうがな」
「おいいっ、万事屋なめんなよ。万事屋はな、万事屋はっ」
「うるせぇな。馬鹿の一つ覚えみてえに『万事屋、万事屋』叫んでんじゃねえよ」土方は眉間に皺を寄せ、耳を押さえる。銀時はその仕草の一つ一つに腹がたって、ボルテージがどんどん上がるのが自分でも分かった。
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもので、次々と出てくる言葉の応酬、段々でかくなる声。注文の酒を持ってきた男は、どうしていいか分からずに二人の顔を交互に見て、突っ立ったまま困り果てた。
「あのう、お客様…大声は店内では」

「悪りぃな、この馬鹿は物の道理っつーもんを知らなくてな」
「すまねーな、兄ちゃん。こいつは常識ってもんが頭から抜け落ちてんだ」

合わせたみてえに同時に揃った声が、死にたくなるほど気持ち悪い。

「おい、勝負だ。俺が勝ったら、そこをどけ」
「何言ってるんだ、俺は元からここにいるんだ。おめぇが、別の席で飲めばいいってだけの話だ。店内にいる権利くれえは認めてやる」
一向に譲る気配の無い土方へ、「な~んだ」くすりと聞こえるようにわざと笑ってやる。
「あん?」すぐに反応した土方へ、銀時は追い討ちをかけた。
「天下の真選組の鬼の副長ともあろうお方が、負けること怖さに勝負できないんですか、へー」くすくすと笑ってやると奴の眉間にぐぐっとさらに深い皺がよる。

「おい、なんて言った?負けることが怖いだと?」ホントに単純馬鹿。「上等だ。おいこら、俺と勝負しろ。俺が勝ったら、手前ぇは即刻この場から立ち去れ」
「副長さんよ、勝負の内容はどうする?前に花見のときに、俺が勝った酒の勝負でどうだ」
「手前ぇ、誰が勝っただと?あれは誰がどう見ても俺の勝ちだ」
ぴきーんと音でも立ちそうなほど引きつった顔をしている土方へ、顎を撫でながら半笑いをくれてやり、俺は奴の前に座った。

「俺のほうが先に意識を取り戻したからなあ」
「お前ぇが先に酔っ払ったからだろ。俺の意識は最後まであった」
「てめー、銀さんなめんなよ」むっとした表情で、銀時はお猪口に半分注がれた酒をあけた。
「誰が舐めるか。お前、変態か」馬鹿にした表情で土方は銀時を見ると、対抗心を燃やして自分の杯を勢いよくあける。
「おい、ふざけてんのかてめー」
「ふざけてんのはお前の頭だ、馬鹿。なんだ、そのどこにつむじがあるんだか分からねえ頭は」あごで、くいっと銀時の頭を差すと土方は薄ら笑いで銀時を見た。
「んだとぉーっ、天パなめんなっ」
「だから誰が舐めるかって言うんだ、この白髪頭」
「うるせーっ、このピッチリ頭。ちくしょー、お前なんてマヨつけてセットしてんだろ。毎朝毎朝、鏡の前でマヨつけてその頭なでつけてんだろ」
「誰がつけるか、ボケ」
「天パはな、天パはな、雨の日大変なんだぞ」
「そうかよ」
横目でちらっと冷たい視線を走らせると、土方は銀時から目をそらした。

ぐぐっと酒を空ける土方の前に、若い女の店員が注文をききにやってきた。銀時は、ミニに仕立てられた着物から覗く太ももやニーソックスをついつい男の性で見てしまう。
「あのぉ、追加の注文はございますか?」
「ねえな。おい、手前ぇはあんのか」笑顔とかわいい声を背一杯作りこんだ女の子に、土方は一瞥もしなかった。
「ねー、お姉さん漬物でも持ってきてよ」
土方とはうって変わって、彼女の足に見とれてる俺にじろりと冷たい視線を投げつけて、「かしこまりました」と視線よりも冷たい声をだした。
兄嫁では勝負が付かなかった。ばか高い酒の勝負は普段ならもったいなくてできねーもんだが、土方には痛くもなんともない勝負のようだ。なぜか次の店でもう一勝負ということで、ワリカンで払うことになったときも奴は余裕の表情で、それが余計にむかついた。

その次の店ではウィスキーの水割りで対決。
あまり大きくない店はにぎやかな女の子が多い。たまに銀時が行く店だ。さっきの店で冷たくあしらわれたことに懲りて、ここに決めた。
いつもは楽しく飲んで笑ってる店、なのによー。
俺たちが顔を出すとすぐに店の女の子が寄ってきて、俺ではなく土方の側にばかり座りたがった。ヤツの右には色っぽい谷間もスリットもばっちりの色っぽいドレスの美女、左には笑顔がかわいい和服美女。店のナンバーワンとナンバーツーがいそいそと寄ってきた。
俺の隣には…土方を応援してるナンバースリーが、俺から一人分は軽く離れて座ってる。なんだ、この違い。なんだ、このアウェー感。俺の行く店を選んだのに、俺が楽しく飲める店を選んだのに、どうして初対面の土方がモテるんだーっ。
「土方さん、頑張って」という女の甘えた声を土方は素知らぬ顔で聞き流し、自分の脚に置かれた女の手も気にしちゃいねーみたいだ。俺ならそれだけでドキドキしちまう。それにしても、女どもが土方にばかり寄ってくるっていうのはどういうわけだ。まっすぐな髪が物珍しいっていうのか、このヤロー。

「おい、こっちに一人よこせー」
土方の両隣に座った女の子が銀時を見てべーっと舌を出し、それまで以上に土方の近くへ座りなおした。ちくしょー。
「女取り合ってるわけじゃねえんだ。いいから、早くそれ空けろ」
野郎の言い方にむかっ腹が立って、ぐぐっと一息で酒をあけてやる。いい肴だよ、ホント。腹が立っておかげで酒がぐいぐいすすむ。
「よし、次ら」土方は女にもう一杯ずつの水割りを作らせて、目の前に置かせる。ろれつが回らなくなってきたようだ、そろそろだと俺はほくそ笑んだ。
互いにもう一杯ずつ空けたところで、腹が立ったからとっととこの店は終了。今度は女のいない店!






<三> に続きます。






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最終更新日  2010年06月19日 15時59分19秒
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