雫の水音

１０章～五英雄～

復興にはまだ時間の掛かる街に
何千年も昔から変わらぬ風が吹き抜ける・・・
町を後にした青年と少年を
緑の髪の双子と金髪の女性が
いつまでも手を振っていた。

翔とナナムーは風の国を後にして
水の国へ行くために港町まで行く事となった

しかし、２人は森を彷徨い３日が経っていた

「俺、もう疲れた･･･」
翔がげっそりした顔で言った

「ぼきゅも、死んじゃうでしゅ」
ナナムーは目に涙をうっすらと浮かべていた

ギャーギャー

薄暗い森の木々からカラス達が飛び立った

「わぁ！！」
ナナムーが驚き尻餅をついた

「鴉だよ」
と翔は笑いを堪えて言った

「今、笑おうとしたでしゅ…」
言い終えようとした瞬間、ナナムーは何かの気配を感じとっていた。
翔も気配を感じ取り腰に付けていた剣を
両手で構え、辺りに気配を配った

ガサガサ

数秒の間があった後、草陰で何かが動いた
翔がその方向へ視線を向けた瞬間

「動くな。首が飛ぶぞ」
翔の喉下に剣が当てられていた

「兄々！！」
ナナムーが突然の出来事で吃驚した

「って、坊主じゃないか･･･悪かった。」
喉元に当てられていた剣が下ろされた
緊迫した空間はその一言で何も無かったかのようになった

翔は、剣が鞘に収められた音を確認して
後ろを見た。
背中に大剣を携えた体格の良いおじさんが
腰に手を当て豪快に笑っていた

「すまんな。俺はロデルト。２週間も森を彷徨ってたもんで
ついつい苛付いていたもんでな」
ち笑いながら言った

「そうなんですか。俺達も剣を構えていたりしていたものですから･･･
あっ、俺は翔といいます。」
と、２週間も森を彷徨っていることを突っ込まずに自己紹介をした

「ぼきゅはナナムーでしゅ！」
と屈託の無い笑顔で自己紹介をした

「俺達も、３日程森を彷徨っているんです。１本道をずっと進んでいた
筈なのですが、進んでも同じ景色なんですよ」
と事情を説明した

「俺は、ルッセフの滝からレーヤルネイトに行こうと思ってたんだが
全く着かないいんだ。困ったもんだ」
とまた豪快に笑っている

「おじさ～ん。この森は風の国とライネーム港の間にある森だよ～」
とおじさんを見上げながら言った

「なっ」
ロデルトは自分の場所を聞いてショックを受けたようだ

「ロデルトさん大丈夫ですか？」
翔はショックを受けた、ロデルトに声をかけた
声をかけられて、正気に戻ったようだ

「しかし、おかしいと思わないか？さすがに同じ道を何日も
歩いているのは・・・」

「そうでしゅね～。幻術とかでしゅかね？」
ナナムーが探偵気取りで言った

「ただ、一つ考えられるとするなら・・・俺の周りを何時も
見ている動物がいるって事だな」
ロデルトが叢を見つめた

「俺も変だとは思ったんだよな。ロデルトさんが出てくる前に
剣を構えてたときも、挙動不審になって動き回ってたし」
翔が答えた

「その動物とっ捕まえるか！」
ロデルトが笑って提案した。

「怪しいでしゅもんね」

そして、三人は夜、敵が動物であるからして
夜は眠りに就くと考え
眠った振りをして、油断して動物が眠ったところを
捕まえることにした。

グゥーグゥー

３人は明らかに狸寝入りと分かる鼾を掻いていたが
動物達の寝息が聞こえ始めた

「よしっ。行くぞ！！」
小声でロデルトが言い
其れを合図に動物の気配がする草室に飛び掛った。

キュー！キュー！

小柄な青い毛並みをした耳の長く
首にはふさふさの毛がついている動物がいた

「お・前・達・でしゅね～！！」
あまり怖くないが怒りに満ちたナナムーの顔が
鷲掴みにした動物の顔に近づけられる。

「おいおい。なんてこった、こいつら
ププミューじゃないか」
驚いた顔でロデルトがいった

「ププミューてなんだ？」
翔が言った

「ププミューてのは、魔法元素って言う物を微量に持っててな。
まぁ、魔法元素事態が途轍もなく希少価値が高いんだが。
それと、毛並みが良いせいで乱獲が多くて
かなり珍しい動物なんだぜ。
魔法元素の力で幻を見せる力もあるらしいんだが・・・」

「やっぱり、お前達で決定でしゅね…フッフフフ…」
ナナムーが力の入っていない笑いを見せた

「ナナムー、確りしろ」
翔がナナムーを揺さ振ったが憑かれている様な状態になっていた

「キュー！キューキュキュキュー！」
ププミューは何かを必死で伝えようとしている感じだ

「何か言おうとしてるみたいだぜ。」
翔が言った

「確かに・・・けど言葉が分からないしな」
ロデルトが頭を掻いた。

11章～フローリア～

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