+詩+55




     *ピエロの嘆き*



 とにかく悲しかった



 とにかく辛かった


 悲しすぎたけど


 この仮面をかぶっていれば、

 笑っていれば直ぐに辛いこと

 悲しいことが

 何処かに行ってくれると思った


 忘れられると思った


 笑っていればみんなからも

 嫌われることもないし

 苦しむことがない



 辛かったこと、全部忘れられるから

 そう思ったから


 ずっと笑ってた

 ずっとこの仮面を被っていた


 友達が死んだ日も

 お母さんがいなくなった日も

 死にたくなった時も


 この仮面を被っていれば

 幸せいっぱい


 悲しいこと

 辛いこと

 全部忘れることが出来たよ




 でもいつしか仮面は

 顔に張り付いて

 心を縛る


 だから僕は笑ったまま、涙を流す


 ねぇ僕は泣いているのに

 何でみんな気付いてくれないの?






 笑っているのに

 笑い方を忘れてしまった

 矛盾しているけど



 道化の仮面が教えてくれた

 忘れさせてくれる代わりに

 忘れられてしまった

 傷つく心を守ってくれるかわりに

 心から笑うやり方を消してしまった



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