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<当ブログは、極上生徒会とARIAを全力で応援しています>
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※一部過激な内容が含まれますのでご自身の判断でお読みください※
例の夢のせいで疲れていることもあり、自炊は止め、今日はコンビニ弁当で済ませることにした。
家に着くと、豪快に靴を脱ぎ捨て、部屋に上がった。電気をつけ、テーブルの上にあるテレビのリモコンを手に取ると、脱力してベッドの上に寝転がった。しばらく天井を仰いだ後、起き上がりテレビの電源を入れた。
『……いては、今朝の5時過ぎごろ、ジョギング中の男性が城山市6丁目にある、マンションの駐車場で女性の遺体を発見しました。女性は頭を強く打っており、まもなく死亡が確認されました。死亡したのは、同マンションの11階に住む鈴木絵美さん。死亡推定時刻は昨夜の12時頃と見られ、部屋に争った後があることなどから、事件性があると見て、同様の他の3件と共に現在警察が捜査中です。次は明るいニュース――』
手が振るえ、冷たい嫌な汗が背中を流れた。
似すぎている。あまりにも、私が見た夢に似すぎている。
気がつくと私は、たいして読みもせずに積み重ねていた新聞の山を漁っていた。
昨日、一昨日、3日前と記事をさかのぼる。
「5月18日……マンションの13階から女性が転落死……。5月19日……マンションの9階から男性が転落死……。5月20日……マンションの15階から女性が転落死……」
血の気が引いていくのを感じた。
寒気がするというのに、尋常ではない汗が皮膚の穴という穴から噴出すのを感じた。
そして激しい吐き気を催し、トイレへと駆け込んだ。空腹で、吐く物が無かった胃は嫌というほど胃液を吐く。しばらく、動くことが出来なかった。
30分後。ようやく吐き気が収まった。当然、食欲を無くした私は、何も口にせず、またベッドへと横になった。
悪夢を見ないよう、心の中でつぶやきながら、ゆっくりと目を閉じた。
女性がいた。チャイムの音に呼ばれ、応対する。
(待て! 駄目だ! 出ちゃ駄目だ!)
チェーンをかけたドアをゆっくり開ける。
誰もいない。
僅かな隙間から、外を確認する。
次の瞬間、黒い腕のような者が、外を伺う女性の顔を殴りつけた。後ろへ弾き飛ぶ。
黒い影は、チェーンを千切るとドアを開け部屋に侵入した。
(逃げろ!)
恐怖に女性の顔が崩れる。
出ない声。
迫る影。
女性は後ろへと身を引くことしかできない。
しかし、黒い影は躊躇うことなく腕のようなものを振り上げる。何か持っている。ナイフだ。それもサバイバル様の確りとしたモノ。
(まずい、このままでは!! やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!)
銀の《狂気》が振り下ろされた。
腕を切り裂き、(骨の砕ける乾いた音がする)
胸を切り裂き、(柔らかい肉が裂ける柔らかい音がする)
腹を切り裂き、(内臓がミミズを潰したような音を上げる)
足を切り裂き、(再び、骨の砕ける音がする)
首を切り裂き、(残りの血という血がホースで水をまくように噴出された)
顔を原形がなくなるまで、黒い影は滅多ざしにした。
それは悪魔、いや魔王とも呼べるものの行動にしか思えない猟奇さだった。
案の定、目覚めると激しく嘔吐した。
もう耐えられない。
おかしくなっていることは明らかだ。このままでは、次は自分が死んでしまう。
身の恐怖を感じた私は会社を休み、午前中はゆっくり体を休め、午後から精神科の病院へと向かった。
「う~ん。そうだねぇ……たぶん、自律神経失調症だね」
簡単な答えだった。
医者が言うには、自律神経失調症らしい。難しい話は分からないが、ストレスにより、あらゆる病気が引き起こされるらしい。
吐き気も、冷や汗も、それが原因だろうという診断結果だった。
夢と事件が似ていたのは、偶然を予知の様に思い込んでいたのだろう。思い込んでしまうのも、きっと精神的なものが要因だ。
「よかった。実は、昨日も見てしまったんですよ。女性が滅多ざしにされた夢。それもストレスが原因ですよね」
優しそうな顔をした医者の顔が急に曇った。
「女性が滅多刺し……ですか?」
「あ、はい……そうですが……」
「お昼のニュース……見られましたか?」
「あ、いえ。ここへ向かっていましたから」
「良いにくいのですが……お昼のニュースで、惨殺された女性の死体が見つかったというニュースをやってました。……どうやら、サバイバルナイフのようなものでらしいのですが」
胃から込上げてくるモノを一気に吐き出した。
「大丈夫ですか?! 須藤さん?!」
これは精神的なものではない。
もしかしたら、これは、
「須藤さん?!」
――これは、予知能力!?
<第3話へ続く>
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
時のアルマ 善き魔女編 第6話 目撃者(… 2009.12.29
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