極上生徒街- declinare-

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矩継 琴葉

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2007.09.29
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カテゴリ: 小説

第1話 堕ちる闇 明ける未来



※一部過激な内容が含まれますのでご自身の判断でお読みください※




 例の夢のせいで疲れていることもあり、自炊は止め、今日はコンビニ弁当で済ませることにした。
 家に着くと、豪快に靴を脱ぎ捨て、部屋に上がった。電気をつけ、テーブルの上にあるテレビのリモコンを手に取ると、脱力してベッドの上に寝転がった。しばらく天井を仰いだ後、起き上がりテレビの電源を入れた。


『……いては、今朝の5時過ぎごろ、ジョギング中の男性が城山市6丁目にある、マンションの駐車場で女性の遺体を発見しました。女性は頭を強く打っており、まもなく死亡が確認されました。死亡したのは、同マンションの11階に住む鈴木絵美さん。死亡推定時刻は昨夜の12時頃と見られ、部屋に争った後があることなどから、事件性があると見て、同様の他の3件と共に現在警察が捜査中です。次は明るいニュース――』



 手が振るえ、冷たい嫌な汗が背中を流れた。
 似すぎている。あまりにも、私が見た夢に似すぎている。
 気がつくと私は、たいして読みもせずに積み重ねていた新聞の山を漁っていた。
 昨日、一昨日、3日前と記事をさかのぼる。


「5月18日……マンションの13階から女性が転落死……。5月19日……マンションの9階から男性が転落死……。5月20日……マンションの15階から女性が転落死……」



 血の気が引いていくのを感じた。
 寒気がするというのに、尋常ではない汗が皮膚の穴という穴から噴出すのを感じた。
 そして激しい吐き気を催し、トイレへと駆け込んだ。空腹で、吐く物が無かった胃は嫌というほど胃液を吐く。しばらく、動くことが出来なかった。
 30分後。ようやく吐き気が収まった。当然、食欲を無くした私は、何も口にせず、またベッドへと横になった。
 悪夢を見ないよう、心の中でつぶやきながら、ゆっくりと目を閉じた。




 女性がいた。チャイムの音に呼ばれ、応対する。


(待て! 駄目だ! 出ちゃ駄目だ!)


 チェーンをかけたドアをゆっくり開ける。
 誰もいない。
 僅かな隙間から、外を確認する。
 次の瞬間、黒い腕のような者が、外を伺う女性の顔を殴りつけた。後ろへ弾き飛ぶ。
 黒い影は、チェーンを千切るとドアを開け部屋に侵入した。


(逃げろ!)


 恐怖に女性の顔が崩れる。
 出ない声。
 迫る影。
 女性は後ろへと身を引くことしかできない。
 しかし、黒い影は躊躇うことなく腕のようなものを振り上げる。何か持っている。ナイフだ。それもサバイバル様の確りとしたモノ。


(まずい、このままでは!! やめてくれぇぇぇぇぇぇ!!)



 銀の《狂気》が振り下ろされた。
 腕を切り裂き、(骨の砕ける乾いた音がする)
 胸を切り裂き、(柔らかい肉が裂ける柔らかい音がする)
 腹を切り裂き、(内臓がミミズを潰したような音を上げる)
 足を切り裂き、(再び、骨の砕ける音がする)
 首を切り裂き、(残りの血という血がホースで水をまくように噴出された)
 顔を原形がなくなるまで、黒い影は滅多ざしにした。
 それは悪魔、いや魔王とも呼べるものの行動にしか思えない猟奇さだった。




 案の定、目覚めると激しく嘔吐した。
 もう耐えられない。
 おかしくなっていることは明らかだ。このままでは、次は自分が死んでしまう。
 身の恐怖を感じた私は会社を休み、午前中はゆっくり体を休め、午後から精神科の病院へと向かった。



「う~ん。そうだねぇ……たぶん、自律神経失調症だね」


 簡単な答えだった。
 医者が言うには、自律神経失調症らしい。難しい話は分からないが、ストレスにより、あらゆる病気が引き起こされるらしい。
 吐き気も、冷や汗も、それが原因だろうという診断結果だった。
 夢と事件が似ていたのは、偶然を予知の様に思い込んでいたのだろう。思い込んでしまうのも、きっと精神的なものが要因だ。



「よかった。実は、昨日も見てしまったんですよ。女性が滅多ざしにされた夢。それもストレスが原因ですよね」



 優しそうな顔をした医者の顔が急に曇った。


「女性が滅多刺し……ですか?」


「あ、はい……そうですが……」


「お昼のニュース……見られましたか?」


「あ、いえ。ここへ向かっていましたから」



「良いにくいのですが……お昼のニュースで、惨殺された女性の死体が見つかったというニュースをやってました。……どうやら、サバイバルナイフのようなものでらしいのですが」



 胃から込上げてくるモノを一気に吐き出した。


「大丈夫ですか?! 須藤さん?!」


 これは精神的なものではない。
 もしかしたら、これは、


「須藤さん?!」


――これは、予知能力!?

<第3話へ続く>






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最終更新日  2007.09.29 16:42:01


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