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2008年03月30日
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テーマ: 本日の1冊(3697)
カテゴリ: Hiekka aikaa


 また何がそれとともに起こるかを、まず精密に調べて、
 その上で初めて着手するがよい。
 そうではなくて、必然の結果をよく考えておかないなら、
 きみは最初はよろこんで着手しようが、
 やがて困難が生ずれば、恥じながら引き下がるよりほかないであろう。

 たとえば、きみはオリンピアの競技で賞を得たいと思う。
 わたしもまた、どうかしてそれを得たいものだ、
 なんといってもそれは名誉のことだから。
 しかし、そうした仕事には何が先立ち、
 何が続いて起こるかを最初に熟考して、それから着手するがよい。
 きみはきびしい訓練を続け、強制的な規則に従って食事をとり、
 一切の美味を遠ざけ、厳重な命令に従って一定の時間、
 寒暑をおかして練習しなければならない。
 けっし冷たい飲み物を飲まず、むやみにぶどう酒を飲まず、
 一口に言えば、きみのからだを、医師に任せるように、
 指導者に任せなければならぬ。
 それからきみは闘技場に出なければならぬ。
 出たとなると、きみは手や足首をくじいたり、
 たくさん埃を吸ったり、多分なぐられたりしたあとで、
 なお最後に打ち負かされることがあるかもしれない。
 こういうことを十分考えてみた上で、なお気が向くなら、
 そのとき初めて闘技者になるがよい。

 さもなければきみは、
 あるときは力士を、
 あるときは剣士を真似し、
 あるときはラッパ手を、
 あるときは俳優を演じてみる子供と同じようにふるまうことになろう。
 きみも子供の通りにするのである。
 今きみは力闘者であるかと思うと、
 次ぎには剣士であり、
 次ぎには演説者であり、
 また次ぎには哲学者であるが、
 しかし本気には何物でもなく、
 ただ猿のようにその時どきに見るものを真似るだけで、
 次ぎ次ぎといろんなものがきみの気に入るのである。

 つまりきみは、確信と正しい見透しとをもって事を始めたのではなく、
 軽率とじきにさめやすい欲望とをもって事を始めたのである。
 もしも二三の人が、ある哲学者にあったとか、または
 「エウフラテス(当時のシリアのストア学者)はなんと雄弁だろう!
  弁舌では彼に及ぶ者がない」
 と言うのを聞くとかすると、
 彼等はさっそく自分もまた哲学を研究しようと思い立つのである。

 いいかね、きみ、ある仕事が何を要求するかまず精密に考え、
 次にきみが果たしてそれに耐えうるかどうかを自分で観察することだ。
 きみが五種競技(剣術、競争、跳躍、投擲、相撲)の選手とか、
 力闘者になろうとするなら、きみの腕や足や腰をよく調べてみよ。
 だれもが皆、あらゆることに適するようにはできていない。
 あるいはまた、きみは哲学者であろうとしながら、
 これまで通りに飲み食いしたり、怒ったりできると思うか。

 それよりもきみは徹夜をして勉強し、
 友人から離れ、奴隷からまで軽蔑され、
 すべてのものから、すなわち名誉、官職、法廷、
 その他あらゆる業務から身を退かなけねばならぬ。
 きみはそれらのものに代えて、
 冷静、自由、不屈(ストア派の善)を得たいと思うかどうかをよく考えてみよ。

 さもなければきみは、
 子供と同じように
 あるいは哲学者に、
 あるいは財務官に、
 あるいは演説家になろうとし、
 最後にはなおローマ帝国の地方大守にさえなりたがるだろう。

 しかし、これらのものは一人で兼ねるわけにはいかない。
 きみは善人であれ、悪人であれ、
 とにかく一人の統一された人間になるよりほかはない。
 きみは、きみの最もすぐれた部分(悟性、理性、精神)を完成するか、
 きみの外的方面を完成するか、
 内部を考慮するか、外部を考慮するか、
 つまり哲学者になるか、俗人になるかのほかはないのである」
  (P.73~75 草間平作訳)


ヒルティの言葉には手厳しい部分がたくさんあるけれど、
昨今の情報社会は、消費者の目標をあちらこちらへと振り回す傾向がある。
進路や職業でさえ、当世の流行や周囲の思惑で決めてしまう人も少なくない。
なぜ昨今の大人たちは、簡単に人を傷つけるのか。
事件を起こした大人たちは、
社会の雰囲気やしがらみで、本意ではない職業を選んだのかもしれない、
しかし、ブチ切れて家族や通りすがりの人たちを巻き込む前に、
その行動がどんな結果をもたらすのか、よく考える時間はあった筈ではないか。







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Last updated  2008年03月30日 20時29分59秒


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